仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第393話 中小企業の成長を加速させるヒント:3×3の法則を活用して訪問量と質を両立し、顧客情報で営業改革を実践
はじめに
売上アップのために、まず「行動量を増やそう」と考えていませんか?
「営業スタッフの訪問回数を増やせば、見込み客に多く会えて、結果的に受注に結びつくはずだ」。
そう思われる方は多いでしょう。
もちろん、まったく間違いではありません。
しかし、その取り組みの“目的”が曖昧なままでは、実際の成果に直接つながらず、疲弊感だけが募ってしまう可能性が高いのです。
この記事では、行動量と行動の質を両立させるヒントとして「3×3の法則」をご紹介します。
単純に営業先を増やすだけではなく、「考える場」を設けることで営業活動を抜本的に見直し、さらなる成長へつなげていただくことを目指しています。
ぜひ、最後までお読みいただき、今日からの営業戦略にお役立てください。
「3×3の法則」とは?
皆さんは「3×3の法則」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
コンサルティングの現場などで説明すると、多くの方が「確かにその通りだ」と同意してくださいます。
この法則の基本的な考え方は、「潜在顧客である『そのうち客』を1社成約するためには、9社の“種まき”が必要になる」というものです。
つまり、「そのうち客」を3社開拓しようとすれば、27社の種まき営業が必要になるというわけです。
一見すると、この「3×3の法則」は「訪問量を増やすだけ」で解決できそうに思えます。
しかし、ここに落とし穴があります。訪問先だけをやみくもに増やしたところで、実際に成果に結びつかないケースが多いのです。量に頼り切ると、ただの疲弊と営業スタッフのモチベーション低下を招きかねません。
よくある失敗パターンとは?
「3×3の法則」を間違った形で理解してしまうと、以下のような失敗パターンにはまりがちです。
1. 訪問の質で何とかしようとする
「そのうち客へのアプローチは効率が悪いから、今すぐ客だけに集中しよう」というパターンです。
確かに「今すぐ客」に集中すれば、短期的には成約率が高くなるように見えます。
しかし、それはあくまで今すぐ客にだけ絞っているからであって、営業力全体が高い証拠とは言えません。
2. 訪問の量でカバーしようとする
「まずは数をこなせばいいんだ」と、膨大なアプローチリストを作成して無目的に訪問を繰り返すパターンです。
これだと、最終的に受注につながる顧客をきちんと育てられず、疲弊だけが残りがちです。
実際、「今すぐ客」と「そのうち客」の成約率を分けて管理していない企業も多いです。
見積の提出から成約までの率は高いけれど、そもそもの母数が「今すぐ客」しか入っていない、
というのはよくある話。
「そのうち客」の開拓が疎かになると、将来的なチャンスをつかみにくくなってしまいます。
「考える」場づくりが重要な理由
では、「3×3の法則」は一体何のために存在するのでしょうか。
答えは、訪問量と質の両立を図りつつ、「立ち止まって考える場」をつくるためです。
忙しさに追われ、「行動量を増やそう」だけが先走ると、ほとんどの企業では「今すぐ客」に頼った営業か、無計画な大雑把営業になってしまいます。
「3×3の法則」を知っていながら、「うちは時間がないから…」と活用を諦めてしまうケースもあるでしょう。
しかし、そこにこそ営業成長のタネが潜んでいるのです。
この法則を活用しようと試みれば試みるほど、今まで見過ごしていた課題や、実は欠けていた仮説づくりのプロセスが浮かび上がってきます。
必要になるのは「顧客情報」と「シナリオの仮説」
「3×3の法則」をベースに、量と質を両立させるために押さえておきたいポイントは、以下の2つです。
1. 顧客情報の整理・共有
「そのうち客」を正しく開拓するには、誰がキーマンなのか、どの段階でどんなアプローチが効果的なのか、といった情報が必要不可欠です。
ところが、意外にも多くの企業では、営業担当者各自の主観や経験に任せっきり。情報が部分的にしか蓄積されず、具体的な分析ができない状態に陥っています。
さらに、担当者が辞めてしまえば、頭のなかにしかなかった情報まで一緒に流出してしまう—これが属人的営業の大きなリスクです。
属人的営業から組織営業へシフトするためにも、顧客情報は“会社の資産”として一元管理し、誰もがすぐにアクセス・活用できる形にしておきましょう。
2. 種まきから育成に導くためのシナリオ仮説
顧客情報が正しく整理されると、「種まき営業」から「育成」を見据えたシナリオを構築しやすくなります。
相手の企業規模、意思決定者の特性、さらには個人としての欲求まで加味したアプローチを考えることで、相手が真に求めている価値を見極めることができるようになるのです。
たとえば、「会社としてのメリット」を最優先するキーマンもいれば、「自分の評価・立場」を最優先するキーマンもいます。
これらのケースに合わせて複数のシナリオを準備しておけば、状況に応じて柔軟に戦略を切り替え、受注につなげる確率を高められます。
行動の量と質は同時に追求すべき
「3×3の法則」はあくまで“考えるきっかけ”。
このきっかけを大切にすると、闇雲に量だけを追い求めるのではなく、質とのバランスを取ろうという意識が自然と芽生えます。
とはいえ、質ばかりに注目して「今すぐ客」しか追わないのもリスクが大きいです。
量だけでなく質も—その両立が大切だというのは、皆さんも頭では理解されているのではないでしょうか。
しかし、本当の意味で「質」と「量」のバランスを取るには、経営者や管理者が「考える場」をチームに提供することが欠かせません。
忙しさやノルマに追われる中で、営業スタッフが自ら冷静に戦略を考える時間を確保するのは至難の業。
場づくりのためにミーティングの形を再設計したり、情報共有のしくみをアップデートしたりと、組織として仕組みを整える必要があります。
行動管理の強化が組織を疲弊させる理由
忙しさやノルマが増えると、どうしても「とにかく訪問回数を増やせ!」と指示しがちになります。
これは経営者や管理者にとっても分かりやすい管理方法ですが、もし「どの顧客層にどんなアプローチをするのか」という戦略部分が曖昧なままでは、組織全体が疲弊してしまいます。
無理やり訪問数を増やした結果、予想ほどの売上成果が得られない。
上司はさらに売上を伸ばすようプレッシャーを強める。
そんな悪循環に陥れば、営業スタッフのモチベーションはどんどん下がり、離職リスクも高まります。
顧客情報管理という視点
では、行動の量だけでなく質を高めるには、具体的にどんな取り組みが必要でしょうか。
ポイントの一つは「顧客情報管理」です。顧客情報管理は、収集→蓄積→活用の3ステップから成り立ち、最終的には「活用」できる仕組みが整っているかが肝心です。
とくに「そのうち客」を「見込み客化」するためには、潜在ニーズにいかに先回りできるかがカギになります。
そのためには詳細かつ正確な顧客情報を活用し、状況に合わせて最適なアプローチを考えることが欠かせません。
「なんとなく感覚でアプローチする」営業スタイルから卒業し、組織全体でデータを資産として育てる意識に変えていくことが重要です。
【成約獲得のプロセスを見直す】
成約を獲得するためには、次の5ステップを再確認してみてください。
1. 年間の「増販と増客の施策」の明確化
2. 攻める顧客の明確化
3. 顧客接点のタイミング
4. 提案する商品と価値の明確化
5. 商品の価値を顧客に伝えて成約
この中でも特に見落とされがちなのが「2. 攻める顧客の明確化」。
ここが曖昧なままだと、営業スタッフは「会いやすい」小規模顧客ばかり訪問しがちです。
短期的には成約までのハードルが低く、一定の成果が出るかもしれません。
しかし、会社が本当に狙うべき企業規模の顧客や、より大きなビジネスチャンスを逃してしまう恐れもあります。
その結果、訪問回数は増えても、総売上の伸びが思ったほどではない—というジレンマが生まれ、さらに行動量を増やせとプレッシャーをかける悪循環に陥ります。
忙しさに拍車がかかる一方で、売上の伸長が見えにくい状態は、組織に疲労感をもたらす原因となるでしょう。
戦略リーダーシップが組織を変える
こうした状況を打破するには、管理者層にも「戦略リーダーシップ」が求められます。
単に行動数を増やす「戦術リーダー」ではなく、年度を通じて「増販と増客の計画」を立て、どの顧客層を攻めるべきかを組織の方向性として示す役割が必要なのです。
戦略リーダーシップを発揮するためには、年間を見据えた目標設定とそれに伴うマイルストーンの策定が欠かせません。
月単位で目先の訪問数ばかり追いかけると、「どうすれば売上が増えるのか?」という根本的な問いに答えないまま、場当たり的な対策に終始してしまいます。
行動管理とビジネスモデルの整合性
また、行動管理を行う際には、自社のビジネスモデル(営業の仕組み)との整合性を常にチェックしてください。
ビジネスモデルに合わない形で訪問数だけを増やしても、得られる成果は限定的です。
たとえば、長期的に大きな商談を育む必要があるビジネスモデルなのに、目先の小規模案件を深追いしている場合、企業が本来進むべき方向と反する動きが組織全体に蔓延してしまいます。
ビジネスモデル(営業の仕組み)を考えるのは経営陣や管理者の役割です。
貴社の行動管理は、しっかり自社の営業スタイルや将来設計に合致しているでしょうか。
もし「とにかく訪問数を増やそう」という掛け声ばかりが先行しているなら、ぜひ一度立ち止まり、今の管理体制とビジネスモデルとの整合性を見直してみてください。
おわりに
「3×3の法則」は現場レベルの行動を分析する際のひとつのフレームワークであり、実際に取り組んでみると意外に大変なものです。
しかし、その“大変さ”を直視することで、「どうすれば効率的に成果を出せるか」を組織全体で考える機会が生まれます。
それこそが、経営者や管理者の方にとって大きな学びや気づきにつながるはずです。
重要なのは、ただ訪問数を増やす、顧客に会いに行という量的アプローチだけではありません。
時間の使い方や顧客情報の活用方法といった質的要素を併せて検討し、バランスを取ることが求められます。
そのうえで、年間の目標や攻める顧客層を明確にし、チーム全員が共有できる仕組みを整えていけば、驚くほど営業活動の効率が改善されるかもしれません。
これを機に、「考える場」づくりを意識しながら、行動管理とビジネスモデルの整合性をぜひ見直してみてください。
行動管理からビジネスモデルを再構築するチャンスは、きっとすぐ近くにあります。
読者の皆様が、より戦略的かつ生産性の高い営業活動を実現できることを心から願っています。
