仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第394話 営業研修の成果を加速させる秘訣とは:「戦略と戦術の連携」、「教育と訓練」の組み合わせで売上向上を目指すポイント
はじめに
多くの中小企業の経営者は、営業スタッフのスキルアップを目指し、研修や勉強会を積極的に企画しています。
特にコロナ禍で営業活動に制約が出ていた時期には、オンライン形式での営業トーク研修を検討するケースが急増しました。
しかし、「研修を実施しても、なかなか期待した成果が得られない……」という悩みをお持ちの経営者の方も少なくありません。
本稿では、営業研修が成果につながらない「二つの落とし穴」を取り上げ、それぞれの原因と対策を解説していきます。
営業スタッフへの研修投資をより有効に活かしたいとお考えの経営者や管理者の方々に、ヒントをつかんでいただければ幸いです。
営業研修が成果に繋がらない二つの落とし穴
1、落とし穴1:戦略と戦術の連携不足
営業研修で成果が出ない大きな要因の一つに、「戦略と戦術を切り離して考えてしまう」ケースが挙げられます。
多くの企業では「営業トーク(=戦術)」に重点を置いて研修を行いがちですが、実は年間目標やターゲット顧客、顧客接点のタイミング、そして提供価値といった“戦略”面との連携が欠かせません。
たとえば、乾経営コンサルティングが提唱する「成約獲得プロセス」では、以下の5つのステップを重視しています。
1)年間の「増販と増客の施策」の明確化
2)攻める顧客の明確化
3)顧客接点のタイミング
4)提案する商品と価値の明確化
5)商品の価値を質問形式で顧客に伝えて成約
このプロセスにおける営業トークはステップ5にあたります。
しかし、ステップ1から4が十分に整っていない状態でいきなり「営業トークだけを磨きましょう」と取り組んでも、効果はどうしても限定的になってしまうのです。
戦略(どんな顧客に、どんな価値を、どんなタイミングで届けるか)と戦術(具体的な営業方法)を連携させることで、成果は“掛け算”のように飛躍的に高まるといえるでしょう。
そこで、研修を実施する前に、以下の5つの質問を自問自答し、戦略を整理しておくことが重要です。
1)今期の取り組みにおいて、「既存顧客向け(増販)」と「新規顧客向け(増客)」という視点で見ると、どのような課題が見えてくるか。
2)今期、自社が「攻める」と定義している顧客とは、具体的にどんな顧客像か。
3)上記の攻める顧客の訪問タイミングなどはどのように把握し、行動計画に落とし込んでいるか。
4)主要製品やサービスの提供価値を具体的に示す営業ツールは何があるか。
その中で特に反応が良い価値は、どんな顧客の悩み・願望に直結しているか。
5)営業トークを「説明形式」と「質問形式」に分けた場合、若手スタッフはどちらのスタイルをとりがちか。また、その理由は何か。
これらの質問に明確に答えられない場合、属人的な営業に頼りすぎている、もしくは戦略が整理されていない可能性が高まります。
営業の仕組みを見える化し、戦略と戦術を連携させることで、研修の効果は格段に向上します。
2,落とし穴2:教育と訓練の分離
次に見落とされがちなのが「教育と訓練の分離」です。
研修を通じた“教育”で新しい知識や考え方を学んでも、それを日常の業務で使いこなす“訓練”が伴わなければ、効果は一時的に終わってしまいます。
時折見かけるのが、研修だけが独立してしまい、普段の業務と連動していないケースです。
その結果、受講した直後はモチベーションが高まっても、しばらくすると日常の忙しさに流されて定着せず、「研修やった意味あったのかな……」と感じられてしまうのです。
対策としては、自社の営業活動に密着した形で教育を行い、並行して“訓練”を実施することが大切です。
具体的には、営業の仕組みを明文化したマニュアルを用意し、それをもとにロールプレイや実地指導を行いながら、定期的に振り返りを行います。
こうすることで、教育と訓練をセットで行い、組織として確実に定着させることが可能になります。
若手営業マンへの研修に関する注意点
さらに、若手営業マンに対する営業研修を考える際には、短期的な成果だけに目を向けるのではなく、長期的な視点を持つことが大切です。
乾経営コンサルティングでは、売上増加を長期で実現するコンサルティングアプローチを重視しています。
実践のうえでポイントになるのが、営業トークにこだわる以前に「顧客情報」と「顧客価値」を明確にすることです。
営業パフォーマンスを高めるうえで、この二つのウェイトは合わせて8割にも及ぶと考えられます。具体的には次のように考えるとイメージがつきやすいでしょう。
1. 顧客を知る(顧客情報)……4割
2. 製品(サービス)の理解(顧客価値)……4割
3. 伝え方(質問形式の営業トーク)……2割
顧客情報と顧客価値がきちんと整理されていれば、極端な話、営業トークが多少不十分でも一定の成果を得ることができます。
逆に、顧客ニーズや悩みが曖昧なまま単に「話術」を磨こうとしても、説得力が薄くなりがちです。
解決策:顧客情報と顧客価値を“見える化”せよ
では、若手営業マンの成長をサポートするためには、具体的に何をすれば良いのでしょうか。
鍵となるのは、以下の3つの要素を可視化して、組織全体で共有することです。
1. 顧客情報:訪問タイミング、顧客ニーズなど
2. 顧客価値:その製品・サービスが解決できる悩み、叶えられる願望
3. 事例:成功事例、具体的な数値データ
この3つを営業ミーティングや共有フォルダなどで明確化し、若手も含めて皆が日常的に参照しやすい仕組みを整えます。
そうすることで、「このタイミングで、この顧客に、この価値を伝える」という行動が自然と生まれます。
結果的に、若手営業マンの営業成績も飛躍的に向上する可能性が高まるのです。
まとめ:戦略と戦術、教育と訓練をセットで考える
成果を出す営業研修を設計するためには、以下の二つの視点を外してはなりません。
1. 戦略(年間目標、ターゲット顧客、顧客接点、提供価値)と戦術(営業トーク)の連携
2. 教育(知識の習得)と訓練(現場での実践)の組み合わせ
まずは自社の営業の仕組みを見直し、顧客情報と顧客価値を整理してみましょう。
そのうえで、営業トーク研修を行い、学んだことを具体的な行動に落とし込む“訓練”を繰り返す。
こうした流れを組織全体でしっかり回すことができれば、研修効果も最大化されますし、持続的な売上向上につながります。
現場で成果を出せる営業研修の秘訣は、決して特別な手法ばかりではありません。
むしろ、自社の方向性(戦略)を明確にし、そのうえでスタッフ全員が実践しやすい仕組みを構築するという、シンプルで地道な取り組みにこそ鍵があります。
経営者・管理者の皆さまには、この二つの落とし穴に気付いていただき、組織全体で成果へとつなげる研修プログラムをデザインしていただければと思います。
