仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第413話 製品開発に頼らずとも顧客の心は動かせる!独自価値の創造と営業力の連携で、勝ち残る戦略とは
はじめに
多くの中小企業の経営者の方々は、「競合がまだ訴求していない新しい強みを見つけるには、どうしても製品の改良や開発が必要だろう」という考えに陥りやすいものです。
確かに、高性能な新製品があれば営業もしやすいと感じるかもしれません。
しかし、実はここに見落としがちの落とし穴があるのです。
いざ製品が市場で思うように売れないとき、「営業ではどうにもならない」「技術開発が遅れているから売れないんだ」と、販売不振の原因を開発サイドに押し付けてしまう可能性が高まってしまいます。
では、本当に「製品改良や製品開発をしなければ、営業で独自の価値を訴求できない」のでしょうか?
本記事では、製品開発に頼らずとも、顧客の心を動かす「独自の価値」を生み出し、営業力を強化するための具体的かつ実践的なアプローチをご紹介します。
製品視点から顧客視点への転換
いわゆる「売れないのは技術開発が不十分だから」という考え方は、「良い製品ができれば営業が活躍できる」「製品の改良が競合に劣っているなら、営業の努力は無駄だ」というメッセージを暗に示しています。
しかし、これは企業にとって危険な思い込みです。なぜなら、“製品視点”だけにこだわると、いくら性能を高めても顧客のニーズとずれている可能性があるからです。
実は、製品視点を“顧客視点”に切り替えるだけで、今ある製品のままでも独自の価値を生み出すことが十分に可能になります。
ここで言う“顧客視点”とは、潜在顧客が抱える悩みや願望に焦点を当てて、それらに対応する具体的な価値や事例を提案ツールに落とし込み、質問形式の営業トークを使って相手の「そうかもしれない」という気づきを引き出す方法です。
しかし、多くの中小企業では、カタログ上で製品の特徴を「高品質・高機能」など、抽象的な言葉でしか説明できていません。
こうした状況だと、いざ営業が顧客にアプローチしても、結局は製品説明に終始し、最後に「検討しておきます」というお決まりの返答をもらうだけで終わってしまいがちです。これでは営業の効果が最大化されません。
顧客の悩み・願望と提供価値の見える化
では、顧客視点を強化するための第一歩として、どのような取り組みをすればいいのでしょうか。
キーワードは「見える化」です。
具体的には、日頃の営業や問い合わせ対応などで得た顧客の声から、悩みや願望を拾い上げ、それに対する自社の提供価値を一覧化する方法が有効です。
たとえば、ある企業のホームページには、多数の「お客様の声」が掲載されていました。
その声を丁寧に分析した結果、なんと23個もの具体的な提供価値が潜んでいることに気づいたのです。
しかし、ホームページ本体を改めて見直してみると、製品の性能ばかりが強調されていて、実際に顧客が評価しているポイント(=提供価値)の情報は一切載っていませんでした。つまり、顧客が真に求める価値がうまく発信できていなかったわけです。
この顧客の悩み・願望と提供価値の見える化を行うと、「自社の資料やウェブサイトは、果たして本当に顧客のニーズに応えているのか?」という問いを客観的に検証できます。
見えなかった部分が見えるようになると、製品を無理に改良しなくても、既存のソリューションの打ち出し方次第で大きく受注率を変えられることに気づくはずです。
独自価値とは“提供価値”ではなく“顧客の悩み・願望”である
顧客の悩み・願望とそれに応える提供価値を整理していくと、「提供価値が競合も訴求していないものでなければダメなのでは?」と感じる方がいるかもしれません。
しかし、ここで肝に銘じておきたいのが「独自価値=提供価値そのもの」ではないという点です。
本当に独自性を生むのは、むしろ「顧客が抱えている悩みや願望」です。
提供する製品やサービス自体が同じでも、顧客の悩み・願望が変われば、そこに新たな価値が生まれます。
例えば、営業担当者がある顧客に「最近、〇〇業界の経営幹部の方々から“営業マンの成約率をもっと上げるにはどうすればいいか”という相談をよく受けるのですが、御社でも同じような課題はありませんか?」と尋ねたとします。
すると相手は「そういえば、うちでも同じ悩みがある」という反応をするかもしれません。
そこで「実は当社には、実演動画のシナリオを活用して成約率を上げた事例があるんです。しかも、そのシナリオは3ステップで誰でも簡単に作れます」と伝えたらどうでしょう。
顧客が思わず「えっ、そんな方法があるの?」と驚いたなら、それが自社の“独自価値”になり得るのです。
独自価値を生み出すための2ステップ
独自の価値を生むには、主に2つのステップが必要です。
ステップ1:顧客の悩み・願望と提供価値の見える化(基本価値の明確化)
まずは「提供価値シート」を作成し、顧客がよく口にする具体的な悩みや願望と、それに応えられる自社の強みを整理しましょう。
これは営業担当者にとって、非常に価値のあるツールになります。提供価値をリストアップしておけば、商談や提案時にスムーズに「最適な切り口」を探せるようになるからです。
ステップ2:顧客の悩み・願望を伝え、「えっ」という言葉を引き出す(独自価値の発見)
次に、その悩みや願望を顧客自身に“気づいてもらう”ことがポイントです。顧客の課題を営業担当者から投げかけることで、相手が「そこに困っているかも」と初めて認識し、引き込まれていきます。
そのタイミングで、「実はこんな解決法があります」という提案につなげると、驚きや共感が得られやすくなります。これが“独自の価値”を見つけ出す上で決定的なプロセスです。
ただし、ステップ1とステップ2をどれだけ徹底しても成果が見込めないこともあります。
その場合は、本当に製品自体が顧客の求めるスペックを満たしていない、あるいは製品ライフサイクルが衰退期に入っているなど、他の要因が考えられます。
このようなケースでは、製品改良や開発の検討が必要でしょう。
しかし、そもそもこれらのステップを踏まずに「売れない=製品開発が悪い」と決めつけるのは、本末転倒と言えます。
営業部門が作成する独自価値づくりが製品開発に欠かせない理由
ライバル企業が新製品やリニューアルを発表すると、多くの経営者は「スペック差が離れてしまった!」と慌てがちです。
たとえば、「あちらは○○の性能を上げたらしい。うちは追いつけるのか?」と気をもむこともあるでしょう。
しかし、本当に重要なのは「その性能(スペック)が、顧客のどんな悩みや願望を解消してくれるのか」を見極めることです。
もし競合の改良ポイントが、顧客にとってそこまで優先順位の高い項目でなければ、実際は販売上の大きな強みにはならない可能性があります。
逆にいえば、顧客がより重要視している“根本の悩み”を解決できるのであれば、必ずしも最新スペックである必要はないということです。
過去にある企業で、新しい競合製品のスペックアップに経営陣が振り回されていましたが、実際に顧客が本当に求めている性能とは少しずれていたため、大きく市場シェアを奪われることはありませんでした。
こうした判断ができるのも、普段から「顧客の悩みや願望と提供価値」を明確にしていたおかげです。
独自価値につながる製品開発のあり方
もちろん、営業現場でお客様の潜在ニーズを明らかにしていくと、「これまでの自社製品では十分にカバーできない部分がある」という発見に至る場合はあります。
たとえば、「営業マンの成約率を上げるための新しいツールを開発してほしい」といった要望が現場から出るかもしれません。
そのときに初めて、「では技術開発チームと連携して新しいソリューションを作りましょう」という流れになるのです。
このように、営業主導で顧客が真に望む価値を把握し、それを実装するための技術開発を要請する方が、より的確な製品改良やサービス拡充につながります。
しかも、ニーズの優先度が高ければ高いほど、投資対効果の見込みも大きくなるのです。
営業部門と技術開発部門の緊密な連携
ここで肝心なのは、営業部門と技術開発部門の連携を盤石にすることです。
現場の声をきちんと技術チームに届けられなければ、どれほど優れたコンセプトを思いついたとしても実現が難しくなります。
あるいは技術サイドが競合のスペックばかりを気にしすぎて、実際の顧客が望んでいない方向に突っ走ってしまう危険もあります。
「新製品を開発したのに、全然売れなかった…」というケースの多くは、この連携不足が原因です。
だからこそ、「顧客の悩みや願望の優先度はどこにあるか」「売れるために必要な機能は何か」をしっかりと共有し、営業と技術がタッグを組んで進める必要があります。
まとめ:顧客視点が生む新たな可能性
中小企業が競合と差別化を図り、生き残りをかけて独自の価値を生み出すには、“製品開発偏重”の考え方からいち早く抜け出すことが大切です。
具体的には、以下のポイントに注目してください。
●顧客の悩み・願望と提供価値の見える化
●独自価値は“提供価値”そのものではなく、“顧客の悩み・願望”にこそ宿る
●営業部門と技術開発部門の連携が欠かせない
これらをしっかりと実践すれば、たとえ製品改良や製品開発に大きな予算をかけられなくても、十分に営業力を高めることが可能です。
むしろ、先に顧客の声を拾い上げてから技術開発に着手するほうが、本当に求められる製品やサービスを生み出せるでしょう。
いま一度、自社の営業と開発の体制を見直してみませんか?
当たり前のように思えて、実は見過ごしている点に気づくことが、企業の成長を加速させる大きなきっかけになるかもしれません。
