仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第414話 疲労型組織から脱却し、チャレンジ型へ変革!営業の仕組み化と戦略・戦術・考え方で成果を生む企業づくりへ
はじめに:多くの企業が陥る「つもり」の罠
「社内研修を導入し、社員は一通り学んだはずなのに、なかなか業績が上がらない…。」
こうした悩みをお持ちの経営者の方は少なくないでしょう。
高額な研修プログラムを実施しても、蓋を開けてみると社員が“分かったつもり”で終わってしまい、実際の営業活動に大きな変化が見られない。
これは多くの中小企業が抱える共通の課題といえます。
研修を通じて知識を得るだけでは、本当の意味で「分かった」ことにはつながりづらいのです。
さらに、「分かったつもり」が行動に結び付かないまま放置されてしまうと、新しい取り組みも成果に結びつかず、組織全体が疲弊してしまう原因になります。
こうした状況を打破するために必要となるのが、凡事徹底の重要性を認識し、組織全体で地道に取り組む姿勢です。
本稿では、“営業の成約達人”を組織としていかに育成するか、その仕組みづくりの手法を、紹介します。
ぜひ、自社の営業活動を振り返るうえでのヒントとしてご活用ください。
「知っている」「分かっている」「出来ている」の壁を乗り越える
営業研修や勉強会を通じて社員が知識を習得しても、実際の営業プロセスで成果を出せないのは、「知っている」「分かっている」「出来ている」の間に大きなギャップがあるからです。
頭では理解していても、身体で実践できていない状態が、いわゆる「分かったつもり」の状態といえるでしょう。
このギャップを埋めるためには、以下の3つの要素を見える化して、組織で共有することが不可欠です。
1)戦略
どのような顧客をターゲットにするのか、どんな価値を提供するのかなど、営業活動の“方向性”を示すもの。
2)戦術
具体的な営業手法や提案内容、顧客とのコミュニケーション方法など、戦略を実行に移すための“具体的行動”を指す。
3)考え方
営業に対する信念・価値観や、顧客と向き合う姿勢など、行動の根底にある“マインド”を表す。
この3つが曖昧なままだと、社員は「やるべきこと」や「考えるべき視点」があやふやになり、一度は学んだ知識を日常業務に落とし込むことが難しくなります。
逆に言えば、戦略・戦術・考え方をはっきりさせ、組織全体で共有・実践すれば、社員それぞれが「分かっているつもり」から一歩踏み出し、結果として「出来ている」に近づけるのです。
営業の仕組みをフロー図で可視化する
営業活動を実践する際、個々の担当者の勘や経験に依存していると、どうしても属人的なやり方に陥ってしまいます。
そこでおすすめしたいのが、営業活動の全体像をフロー図でまとめる手法です。
フロー図を作成することで、以下のようなメリットがあります。
1)営業プロセス全体が可視化されるため、「どこにボトルネックがあるのか」を発見しやすい。
2)各ステップで想定される顧客心理や必要な対応が整理され、戦術の落とし込みがしやすい。
フロー図作成にあたって、以下の2つのポイントを意識してください。
1)顧客情報管理と行動管理
戦略と戦術を同時推進するには、顧客情報管理(だれにアプローチするか)と行動管理(どうアプローチするか)が欠かせません。
管理の仕組みがないと、せっかく立案した戦略と戦術が生きないまま終わってしまいます。
2)考え方との連動
また、フロー図が完成しても、そこに現れる考え方が社員個々のマインドと合致していなければ、定着は難しいでしょう。
無意識に染み付いた考え方が営業指針とズレていれば、実行に移しても一時的な成果しか得られません。
マニュアルを作成し、凡事徹底の振り返りに活用する
フロー図によって営業プロセスを整理したら、それを具体的なマニュアルとして“文章化”するステップが効果的です。
文章化することで、頭の中だけで考えていたことが文字として整理され、自分たちが何を「知っていて、どこが曖昧なのか」を客観的に捉えやすくなります。
ただし、マニュアルをつくること自体が目的ではありません。
重要なのは、マニュアルに基づいて定期的に振り返り、いま実践できていない部分を洗い出すことです。
定期的な振り返りを行うことで、「実際には分かっていなかったこと」や「できていると思い込んでいたこと」が可視化され、適切な改善策を打つきっかけが生まれます。
マニュアルの目次としては、以下のような項目を含めるとよいでしょう。
●顧客ターゲットの明確化
●提案内容の標準化
●顧客とのコミュニケーション方法
●顧客情報管理の方法
●行動管理の方法
●KPI設定と進捗管理
●成功事例・失敗事例の共有
●営業ツールの活用方法
こうした内容を明確にしておくと、各自がどこでつまずいているかが可視化され、組織全体での学び合いが促進されます。
顧客管理の落とし穴:顧客データと顧客情報の違い
「顧客管理システム(CRM)を導入しているから、大丈夫」と思っていませんか?
しかし、実際には顧客情報が属人的に扱われ、引き継ぎがうまくいかないケースが少なくありません。
なぜなら、顧客管理には大きく分けて「顧客データ」と「顧客情報」という2種類があるからです。
1)顧客データ:企業名、住所、連絡先といったシステムで管理できる情報
2)顧客情報:担当者の趣味や家族構成、課題、願望など、人を通じて得る“定量化しにくい”情報
顧客データはシステムで共有しやすい反面、担当者が日々のコミュニケーションで得る顧客情報は、本人の頭の中に蓄積されがちです。
結果として、担当者が異動や退職した際には引き継がれず、折角築いた信頼関係が一気に途切れてしまうのです。
顧客情報を確実に組織の財産とするためには、こまめに会話内容や顧客の課題、ニーズを記録・共有できる仕組みを整備することが不可欠です。
情報を「誰が見ても分かる」形に残し、後任者がすぐに活用できる状態にしておくことで、企業としての強みを着実に蓄積していけます。
現状を把握し、優先順位をつける
マニュアルや仕組みを整備しても、それがどの程度実践されているのかを常にチェックしなければ、なかなか成果につながりません。
そこで、定期的に「今はどこまでできているのか?」を点検し、「分かったつもり」「やっているつもり」になっている箇所を洗い出しましょう。
ただし、営業マニュアルを100%完璧にこなす必要はありません。
重要なのは、現状を正しく把握して「優先順位」をつけることです。
そして、これだけは必ずやり切る、という項目を設定すると、組織全体が迷いなく行動しやすくなります。
たとえば、営業の仕組みの実践度合いが30%だとしても、今期は「新しい商品提案の仕組みの確立」を最優先し、その次に「顧客情報管理と行動管理の徹底」を行う、といった具体的なステップを踏むことができます。
ゴールを段階的に設定することで、忙しい現場でも取り組みやすくなります。
組織を疲労型からチャレンジ型へ
新しい手法やシステム導入ばかりを急いでしまい、既存の仕組みが定着する前に次々と“新しい挑戦”を重ねていると、組織はどうしても疲弊しやすくなります。
これが、いわゆる“疲労型”の組織です。
やがて、挑戦すべきタイミングで挑戦ができなくなり、日常業務をこなすだけの受動的な集団へと変化してしまう恐れがあります。
組織を“チャレンジ型”に変えるためには、現状を客観的に認識し、やるべきことを一つひとつ着実にクリアしていくことが大切です。
宇宙ロケットのように一気に高みに飛ぶよりも、階段を上るようにステップを踏んで成長していく方が、組織としての安定感が増すのです。
経営幹部が率先垂範する
どれだけ優れた戦略や戦術を提示しても、実際にそれを“本気でやり抜く”姿を見せる存在がいなければ、社員は動きづらいものです。
ここで重要となるのが、経営幹部の「率先垂範」です。営業の仕組みがどれだけ実践されているかを常にモニタリングし、自ら先頭に立って凡事徹底を進める姿は、社員にとって非常に大きなモチベーションとなります。
「忙しいから」という理由で経営幹部が後回しにしていると、組織全体の意識改革は進みません。
まずは、経営幹部自身が現場の視点を持ち、継続することの大切さを、自らの行動を通じて示すことが不可欠です
振り返りのタイミング
「分かったつもり」を防ぐには、定期的な振り返りが欠かせません。
おすすめは半年に1回(最低でも年1回)程度、営業マニュアルの各項目をじっくりとチェックすることです。この際に大事なのは、以下の4点です。
1) 客観的な視点を持つ
2) 事実に基づいて評価する
3) 改善点を具体的に洗い出す
4) 洗い出した改善策を実行する
たとえば、顧客情報管理が思ったよりも進んでいない場合、具体的にどのプロセスがネックになっているのかを探り、システムの使い方や入力ルールを再確認します。
こうした地道な“振り返り+実行”のサイクルが、最終的には強い組織づくりにつながります。
成果が出ている企業の共通点
実際、営業マニュアルの実践度合いが30%でも、成果を出している企業は存在します。
彼らの共通点は、「自社でまだ何ができていないのか」を正しく理解したうえで優先順位を設定し、その項目を確実に“やり切る”ことにあります。
一気にすべてを完璧にしようとせず、最重要課題を着実にクリアしていく姿勢こそ、成果につながる秘訣といえるでしょう。
おわりに:変化に対応できる組織へ
「分かっていることが出来ている」組織を構築すれば、予測不可能な変化が起こる時代においても柔軟に対応し、新たなビジネスチャンスを掴むことができます。
たとえばコロナ禍による市場の激変でも、主体的に行動できるチームであれば、環境の変化をチャンスと捉え、新しいビジネスモデルや販路を模索しやすいのです。
本稿でご紹介した内容を、ぜひ自社の営業体制を見直すきっかけにしていただきたいと思います。
まずは営業の仕組みを整理し、フロー図やマニュアルで明確に可視化してみましょう。
それをもとに、いま「これだけはやり切る」という項目を設定し、組織全体で取り組むことが大切です。
こうした凡事徹底の積み重ねが、「営業の成約達人」を生み出し、結果として企業の持続的成長をもたらします。
あなたの会社では、いまどんな状況でしょうか?
●貴社の営業マニュアルの実践度合いは何パーセントでしょうか?
●今期、新たに取り組む施策として、これだけは“やり切る”という項目は何でしょうか?
●そして、「分かったつもり」を防ぐための振り返りは、いつどのように行う計画でしょうか?
個々の企業やチームによって現状はさまざまですが、まずは小さくても一つ行動を起こすことが大切です。
そして、振り返りを通じて自社の課題を洗い出し、優先順位を明確にして実行につなげていきましょう。
今日の一歩が、明日の大きな成果につながるはずです。
