仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第493話 「部下が動かない」は所長の設計ミスだ!中小企業の営業マネジメント
「うちの所長、毎月数字を追いかけるだけで、先のことを何も考えていないんです」
「会議で指摘はするけど、何も変わらない。部下が動かないのは所長のせいじゃないです
「自走する組織をつくりたいと言っているのに、結局いつも自分が動いてしまっています」
こんな声が、中小企業の経営者から後を絶ちません。
あなたの会社の営業所長は、今月の数字だけを「管理」しているのでしょうか。
それとも、今期(年間)の目標達成を「設計」しているでしょうか。
部下が動かない原因は、部下側にあるのではありません。
この記事では、多くの中小企業が繰り返してしまう「営業所長の設計ミス」と、その出口となる「仕組みで自走する組織をつくる方法」についてお伝えします。
セクション1:経営者が降りる「数字の番人」という罠
「うちの所長はよく頑張っているんですよ。毎月の数字もしっかり追いかけているし」
こんな相談をいただいた社長に、私は一つの質問を返しました。
「その所長さん、年間の増客・増販シナリオを自分の言葉で語れますか?」
社長は少し考えてから、静かに首を横に振りました。
「言われてみれば、そこまで考えたことがありませんでした」
これは、ある中堅メーカーの営業所長が、営業推進部から送られるDM施策に対して、「現場は忙しいから対応はできない」「やるならDM文章をもう少し工夫してくれ」とクレームをつけたという実話と重なります。
問題の本質は、DMのタイミングや文章内容ではありませんでした。
その所長には、年間売上目標を達成するための戦略の増客・増販のシナリオが頭の中になかったのです。
目の前仕事しか見られていないので、その時の抱えている仕事の状況で物事を判断していました。
目の前仕事しか見えていない状況です。
そう、感覚ベースの計画しか立てられないこと、それ自体が所長の「設計ミス」の表れです。
年間売上目標の戦略立案は、営業所長の仕事です。
その背骨となる「見える化」されたマネジメントツールがなければ、所長は感覚と経験だけに頼った真摯な約束をするしかなくなります。
数字を追いかける「数字の番人」になり、組織の未来を設計する「設計者」になれない。
これが罠の正体です。
セクション2:部下を止める「指示待ち製造の4段階」
所長に戦略の軸がないと、組織の中では次のような連鎖が静かに始まります。
1. 所長が感覚ベースの計画しか持てない
年間の増販・増客のシナリオがないので、他部門から施策を提案されても建設的な判断ができない。
よって、前月の結果を見て一喜一憂するだけの「数字の番人」になり切る。
2. 「しっかりやれ」「フォローしろ」という曖昧な指示になる
戦略の軸がなければ、部下への言葉は自ずと曖昧になる。
「しっかりフォローしろ」「調子を上げていこう」
凡人の営業マンには、具体的な行動イメージが全く浮かび上がらない。
3. 部下は「わかりました」と言うが、行動は何も変わらない
部下は「分かったつもり」の空気感を演出する。
日頃の営業活動から、行動の習慣が一切変わらない。
内心では「何をすればいいのか」が本当は分かっていないからだ。
4. 気合い系の研修に参加させるが、戻れば元の木阿弥
最後の手段として特訓系の研修に参加させる。
研修の場では活気を取り戻すが、社内に戻れば曖昧な言葉のやり取りが続く。
結局、研修前の状態に次第に戻り、超短期の瞬間風速の効果で終わる。
このループを止める鍵は、所長の「人材が悪い」でも「研修が足りない」でもありません。
所長の指示の出し方、そのものに、問題があります。
セクション3:【実録事例】化学品卸売業が経験した「漂流期」と「設計期」
▼ 漂流期
化学品卸売業を営むA社の営業所長・山川さん(仮名)は、毎月数字を見ながら部下に指示を出すことをくり返していました。
「月末になると、必ず「今月の不足分を埋めろ」と号令をかける。
そうすると、部下全員が今すぐ客への価格営業に走る。
「それを毎月追いかけること自体に、どこか疑問を感じていました。でも、何を変えればいいのかが分からなかったんです」と山川さんは小声でつぶやいていました。
月初めの計画は、「今月の目標から現在の見込みを引いた差額を埋める」という発想しかなく、増客・増販の仕掛ける営業の月初計画がない状態でした。
組織は「漂流」していたのです。
▼ 設計期
転機は、コンサルタントからの一言でした。
「山川さん、月初めの計画は、どのようなものがありますか?」
「月初に既存のお客様への訪問計画がありますよ」
「それはこなす仕事の計画です。増販・増客の仕掛ける仕事の計画はどのようなものがありますか?」
山川さんは、言葉の意味を理解するまで時間がかかりました。
営業の月初め計画には、「こなす仕事」と「仕掛ける仕事」の二種類があります。
既存顧客からのリピート売上を見込む「こなす仕事」、そして増販・増客の売上を見込む「仕掛ける仕事」。
それぞれが別のマネジメントを必要とすることを、初めて知りました。
そこからA社が取り組んだのは、次の3ステップです。
1,年間の増販・増客シナリオを数値で「見える化」する
「感覚」ではなく、顧客情報と訪問履歴の行動管理を元に算出できる年間シナリオを作る。
「予感」ではなく「根拠」のある数値で管理することが、組織の未来を左右する分かれ目になる。
2,月初め計画を「こなす仕事」と「仕掛ける仕事」の2つに分ける
別々のシートに書き出すことで、部下が「今月何を仕掛けるか」を自分で考える場面が生まれます。
指示を待つ前に、自分の頭で考える一歩を踏み出す。
3,仕掛ける仕事の進捗を話し合う「場づくり」を所長が主導する
顧客の状況を定期的に共有する「考える場」が、自然な形で組織内に根付いていく。
所長が変わると、部下が変わります。
半年後には、会議で部下が自分から仮説を持ってくるようになりました。

セクション4:逆説的な真実:「人材育成」より前に、「基礎工事」が先だ
「自走する組織をつくりたければ、まず人材育成から」、実はこの発想は順番が逆です。
指示待ちの部下を変えたいなら、まず所長自身が「設計者」としての解像度を上げることが先決です。
人材育成という「仕上げ工事」は、その後に初めて意味を持ちます。
ここで、一つのたとえ話をさせてください。
どれほど美しい外壁やインテリアを施しても、基礎が打たれていない建物は必ず傾きます。
外壁の仕上げに何層分を積み上げても、地面の中にコンクリートが打たれていなければ、雨風に暴れるたび崩れる恐れしかない。
営業組織もまったく同じです。
自走する人材という「建物」を建てたいなら、まず「基礎工事」が先です。
基礎工事とは、営業戦略と営業戦術を同時推進するための「見える化」です。
人材を育てる前に、足下の層から固める必要があります。
この順番が逆になると、どれほど熱心に育成に取り組んでも、組織は砂上に一階づつ積み上げることになります。
具体的な順番は3つです。
まず「営業戦略と戦術の見える化」を完成する。
次に所長が営業の軸となる「考え方」を持つ。
そして初めて、自走する人材が育つ土台が生まれます。
その後に始まる「人材育成」こそが、本当の意味で機能するものです。
セクション5:処方箋:今日からできるたった一つの行動
「月初め計画を2つに分けてみる」という一歩を踏み出してください。
今月の「こなす仕事」の売上見込みと、「仕掛ける仕事」の売上見込みを、別々のシートに書き出してみてください。
この作業を所長自身が実行し、部下と共有することが起点です。
それだけで、「今月は何を重点的に活動するのか」という会話が生まれ始めます。
部下が指示を待つ前に、自分で考える場面が増えていきます。
所長が「設計者」として動き始めると、部下は必ず変わります。
まずはその一歩を、今日踏み出してみてください。
まとめ
部下が動かない本当の理由は、部下側の問題ではありません。
所長に営業戦略の軸がなく、見える化されたマネジメントツールがないから、組織は感覚ベースの指示から脱け出せないのです。
基礎なき建物は傾く。
自走する人材という「建物」を建てたいなら、営業戦略の「基礎工事」が先。
その順番を間違えないことが、中小企業の営業マネジメントにおける唯一の正解です。
所長の口グセが、組織の天井を決めている。
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