「営業の成約達人」を生み出す仕組みの作り方

代表 乾切抜き 仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第517話 あの営業日報が受注を動かした。書いた本人だけが知らない

「日報は毎日、全員分がきちんと上がってきています」

「読んでいます。読んだうえで、こちらから手も打っています」

「それなのに、書かれている中身が年々薄くなっていくんです」

こうしたご相談をいただくたびに、当社では必ず、その日報を読んで打った手のことを書いた本人にお伝えになったことがありますか、という確認から入るようにしています。

読んでいないわけでも、使っていないわけでもなく、むしろ多くの会社で日報はきちんと読まれ、経営判断の材料としてしっかり使われています。

使ってはいるのに、使ったという事実だけが、書いた本人のところへ一度も戻っていないのです。

そう、営業日報が形だけの書類になっていく本当の原因は、書き手の怠慢ではなく、読み手の側に欠けたままになっている一手にあります。

なぜ、毎日提出されている営業日報の中身は薄くなっていくのか

営業日報とは、営業担当者がその日つかんだ情報を会社に渡すための書類であり、渡した先で何かが動いたときに初めて役割を果たすものです。

渡すところまでは、たいていの会社ができていて、できていないのは、動いたという事実を渡した本人のところへ戻すところです。

工業用刃物・切削工具を手がけるあるメーカーで、社長とこんなやり取りをしたことがあります。

「日報の提出率でしたら、うちは百パーセントですよ」

「立派ですね。ではその百パーセントを、社長は何にお使いになっていますか」

「読んでいます。営業がどう動いているかを把握するためのものですから」

「必要があれば手も打ちます。先方の担当者が代わりそうだと書いてあれば、こちらから訪問先を変えさせることもありますよ」

「その判断があったことを、書いた本人はご存じですか」

「……いや、伝えたことはありませんね。日報は出させるものであって、返すものだとは考えたこともありませんでした」

この社長は日報を活用していないのではなく、書かれた一行の先にある動きまで読み取って実際に手を打っている経営者ですが、それでも日報は年を追うごとに痩せていきました。

理由は単純で、提出率という数字を管理し始めた瞬間から、日報が「出ていればよい書類」に静かに変わってしまったからです。

出させることが目的になった書類は必ず出しやすい形に寄っていきますが、書き手にとっていちばん出しやすいのは、事実を削って角の立たない言葉だけを残した日報であり、それは書く側の手抜きではなく、評価もされず使われた形跡も見えない状況に置かれた人間なら誰もが選ぶ、きわめて合理的な書き方です。

日報の中身が薄いのは、書き手が手を抜いたからではなく、濃く書く理由が本人の側に一つも残っていないからです。

書き手が「書いても同じだ」と感じ始めると、社内で何が連鎖するのか

書き手が「書いても同じだ」と感じ始めた会社では、日報の質だけが落ちるのではなく、四つのことが順番に起こって、最後には営業会議そのものが変質していきます。

① 書いた本人が、効き目を測れなくなる

自分の書いた一行が何かを動かしたのか、それとも読み飛ばされて終わったのか、書き手の側にはそれを知る手立てが一つもありません。

最初に落ちるのは文字数ではなく、書くかどうかを迷った一行のほうです。

② 迷う情報から順に消えていく

先方の課長が来期の設備更新をぼやいていた、現場に他社の刃物が混ざっていた、担当者がやけに急いでいた……。

確度が低くて裏の取れていないこうした話は、返ってこない書類には二度と書かれなくなります。

③ 上司の手元に、判断材料が届かなくなる

日報から迷う情報が消えると上司に届くのは訪問先と結果だけになりますが、結果は請求書を見れば分かるものであり、上司が本当に知りたい「なぜそうなったのか」という部分は、どこにも書かれていない状態になります。

このとき上司は「最近の営業は現場を見ていない」と嘆きますが、見ていないのではなく、見たものを書く先が無くなっているだけです。

④ 営業会議が、日報の読み上げに変わる

材料の無い会議で話せることは日報の復唱しかなく、一人五分の報告が順番に続き、全員が発表を終えた頃には持ち時間が尽きていて、次の一手はまた社長が一人で決めることになります。

日報の形骸化は書類の問題として始まり、会議の中身の問題として完成します。

【実録事例】日報を読んでいた社長は、何を返していなかったのか

工業用刃物・切削工具のメーカーで、当社が実際に立ち会った話をご紹介します。

消耗品の継続取引が中心のため、営業は同じ工場へ月に何度も足を運びます。

見積書と図面は残りますが、そこに残るのは取引の結果だけであり、どのラインで摩耗が早いのか、なぜ今この工程を見直しているのかという商談の背景は、担当者の頭の中以外のどこにも残りません。

使い道の見えない日報

日報の提出率は百パーセントでした(提出率という数字だけを見れば、模範的な会社です)。

社長も営業課長も毎日目を通し、読んだうえで実際に手を打っていました。

ある担当者が「先方の生産技術課長が、来春の異動をほのめかしていた」という一行を書いたことがあります。

社長はこれを読み、翌週には別ルートで後任候補と接触し、担当者が交代した後も継続取引を丸ごと守り切りました。

守れたのは、あの一行があったからです。

そして、そのことは書いた本人に一言も伝えられませんでした。

半年後には、「訪問。特記事項なし」「担当者不在のため名刺のみ」といった行が、画面いっぱいに並ぶようになりました。

社長は「最近の日報には中身がない」と嘆き、担当者は「あれを書いて何かが変わったことなど一度もない」と思っています。

使い道が返る日報

きっかけは、ある社員の退職面談で出た一言でした。

「日報って、あれはどこへ行くんですか」。

社長はこのとき初めて、自分が日報を使ったという事実を書いた本人に返したことが、この十数年で一度も無かったことに気づきます。

翌週から、社長は三つのことを始めました。

ステップ1として、先週上がってきた日報の中から、自分が読んで何か手を打った記述を一件だけ探しました。

ステップ2として、それを書いた本人を執務室に呼び、「あの一行を読んで、自分はこう動いた」と口頭で伝えました。

ステップ3として、褒めもせず、次はこう書けとも言わず、事実だけを返してその場を終わりにしました。

最初に変わったのは文字数ではなく、書かれる情報の種類でした。

「特記事項なし」が消え、代わりに「三号ラインの担当が最近替わったらしい」「他社品のサンプルが棚に置いてあった」といった、確度の低い雑談までが日報に載り始めます。

三ヶ月後には、社長が次に打つ手の材料は、そのほとんどが日報から出てくるようになっていました。

営業会議も報告の場ではなくなり、上がってきた材料をもとに誰がどこへ行くのかを決める場に変わっています。

社長はこう振り返っています。

「日報は書かせるところまでが自分の仕事だと思っていました。読んだ人間が何をしたかを返すところまでが日報だったんですね」

読んでいるのに中身が薄くなっていく——この状態を作っていたのは、書き手ではなく、返さなかった読み手のほうでした。

返す形を社内で回していくための手順は、無料レポート「成約達人を生み出す組織をつくる」でお伝えしています。

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日報を活用している会社ほど、なぜ書いた本人がそれを知らないのか

日報を活用できている会社ほど、書いた本人だけがその事実を知らないという逆説が起こります。

活用の上手な経営者ほど、読んだ情報を自分の頭の中で瞬時に判断へ変換し、そのまま次の行動へ移してしまうからです。

献血をされたことがある方なら、後日届くはがきをご存じかも知れません。

あなたの血液は何月何日にどの医療機関へ渡り、どのように使われましたという知らせが、わざわざ本人のもとまで届きます。

それでも毎回送られてくるのは、使われた形跡が本人に返らなければ、次の一回が続かないからです。

「えっ、日報にそこまで手をかけるんですか」という声が聞こえてきそうですね。

はがきが一度も届かない献血が、針を刺された記憶だけを残す行為に変わっていくのとまったく同じで、使い道の返らない日報は、書かされた記憶だけを残す作業へと変わっていきます。

日報を活用することと、活用した形跡を返すことは、別の仕事です。

明日、上司が最初に返すべき一件をどう選べばいいのか

上司が最初に返すべき一件は、いちばん良く書けた日報の中にはありません。

探すのは「良い日報」ではなく、自分が実際に使った日報のほうです。

今日中に、先週上がってきた日報を最初から読み返し、その中から自分が読んで何か手を打った記述を一件だけ探してください。

見つかったら書いた本人を呼び、「あの一行を読んで、自分はこう動いた」「あの一行があったから、こう決めた」と口頭で伝えてください。

伝えるときの決まりごとは三つあります。

一つ目は、評価ではなく読み手側の行動を伝えることです。

二つ目は、褒め言葉を足さないことです(「よく書けていた」と一言添えたくなりますが、そこは我慢します)。

三つ目は、次はこう書けという要望を付け加えないことです。

返すのは事実だけです。

やってみると、その日のうちに二つのことに気づくはずです。

一つは、返せたのは一人分だけで、他の担当者の日報には何も返っていないという事実です。

もう一つは、来週になれば「先週、自分は何を判断したのだったか」を思い出せない週が必ずやって来る、という現実のほうです。

返す行為そのものは今日できます。

それを毎週回し続ける形は、今日は作れません。

営業日報が「返ってくるもの」に変わると、会社の何が変わるのか

営業日報が返ってくるものに変わったとき、会社で最初に変わるのは書類の体裁ではなく、書き手が現場で拾ってくる情報の量です。

返ってくると分かっていれば、人は迷った話まで書きます。

迷った話が集まれば、経営者の手元には結果ではなく理由が届くようになり、次の一手を決めるための材料が社内に少しずつ蓄積されていきます。

当社がお伝えしている営業の仕組みは、戦略と戦術、行動管理、顧客情報の三点で組み立てていきますが、そのどれもが「書かれたものが使われ、使われた形跡が本人に返る」という往復の上にしか成り立ちません。

あなたの会社の日報は、いま、どこで止まっているでしょうか。

読んでいるのに中身が薄くなっていくという悩みは、書き手を鍛えることでは解けず、読み手が返す形をつくったときに初めて解けていきます。

その形を組み立てる手順を、無料レポート「成約達人を生み出す組織をつくる」にまとめました。

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追伸)明日、日報を読むときだけは赤ペンを置き、直したい箇所ではなく自分が使った箇所を探す読み方に切り替えてみてください。