「営業の成約達人」を生み出す仕組みの作り方

代表 乾切抜き 仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第534話 「数字が足りない」の一言で月を締める限り、月末の追い込みは続く

「今月も、最後の一週間でどうにか合わせた」

「来月こそ、早めに動こう」

「何が足りなかったのかと聞かれても、『数字が足りない』としか言えない」

「また今月も、同じことを繰り返した」

毎月の締めの日が近づくたびに、こんな言葉が頭をよぎる経営者は少なくありません。

月末に帳尻が合うこと自体は、担当者や得意先が力を尽くした結果であり、悪いことではありません。

ただ、合ったところで話を終えている限り、翌月もまた同じ追い込みが待っています。

今回は、毎月の月末の追い込みがなぜ続くのかを、追い込みのやり方ではなく、月の締め方から考えてみます。

月末の追い込みで帳尻が合った月、社長は何と言って月を締めていますか?

月末の追い込みとは、月の終わりが近づいて数字が足りないと分かったときに、会社が残りの日数で不足を埋めにいく動きのことです。

社長と私のあいだで交わされそうなやり取りを、一つ描いてみます(実在の会話ではなく、想定の場面です)。

私「先月は、何が足りなかったのでしょうか」

社長「数字です。最後の一週間で、どうにか合わせましたが」

私「合わせたあとで、何が足りなかったのかを社内で話しましたか」

社長「合ったので、それで終わりです。足りなかったのは数字ですから」

経営者が「数字が足りない」の一言で月を締める場面は、こうして毎月くり返されていきます。

月末の追い込みは、本来、足りない数字を埋めるための手段だったはずです。

それがいつの間にか、帳尻合わせができたかどうかを締めの日に確かめること自体が、月の目的になっています。

帳尻が合えば終わり、という締め方こそが、手段の目的化の落とし穴です。

追い込みそのものが悪いのではなく、追い込みで何を埋めたのかを言わないまま月を締めることのほうに、見直す余地があるということです。

「数字が足りない」の一言で締めた翌月、社内では何が起きるのか?

「数字が足りない」の一言で締めた翌月も、社内では同じ流れが、月の半ばから静かに始まります。

月の半ばは、不足がまだ見えていない

月の半ば、経営者が営業の責任者に様子を聞くと、返ってくるのはたいてい「いい感じで進んでいます」という答えです。

相談が進んでいる手応えはあっても、どの得意先のどの話がいつ決まりそうなのかは、数として見えていません。

「いい感じ」という言葉の裏で、不足はまだ誰の目にも映っていない状態です。

下旬になって、不足が見えてくる

二十日を過ぎたころ、見込みを一件ずつ足し合わせてみて、初めて今月の数字が足りないと分かります。

営業の責任者が「今月はこのままだと届きません」と報告に来るのは、たいていこの時期です。

月末の追い込みで、不足を埋めにいく

残りの日数で、担当者たちは付き合いの長い得意先に連絡を入れ、今月中に決めてもらえる話がないかを探して回ります。

数字は、少しずつ埋まっていきます。

「数字が足りなかった」で月を締める

締めの日には、どうにか帳尻が合うか、わずかに届かないかのどちらかで、その月が終わります。

経営者が「今月も足りなかったが、何とか合った」と言い、何が足りなかったのかという話はそこで終わります。

四つの場面のどこにも、「何が足りなかったのか」を言葉にする時間が入っていないのです。

機器の販売と保守を手がける会社は、帳尻が合った月の締め方をどう変えたのか?

機器の販売と保守を手がける会社を例に、帳尻が合った月の締め方を変えていく流れを見てみます。

ここからは、当社が想定した会社の場面です(実在の会社の事例ではありません)。

停滞期「『足りない』の一言」

この会社では毎月下旬になると、営業の責任者が社長のところへ、今月の不足額を報告に来ます。

担当者たちは付き合いの長い得意先に、来月分の消耗品や交換部品を、まとめて今月中に発注してもらえないかと頼んで回ります。

締めの日、社長は責任者の報告に「今月も足りなかったが、何とか合ったな」と返して、その月を締めます。

転換期「三つに分ける不足」

きっかけは、帳尻が合ったある月に、得意先の担当者から何気なく言われた一言でした。

「毎月この時期になると、まとめ発注のお願いが来ますね」

咎める調子ではなく、打ち合わせの合間の世間話のような言い方でした。

それでも社長は気になり、担当者3人に「先月は、何が足りなかったのか」と一人ずつ尋ねてみました。

3人の答えは、ばらばらでした。

1人目は、機器の入れ替えを提案する先を、その月はそもそも決めていなかったと答えました。

2人目は、入れ替えの見積もりを出す予定はあったのに、ほかの仕事に追われて後回しになったと答えました。

3人目は、故障の修理や点検の呼び出しが続き、提案に回る時間がなかったと答えました。

足りなかったのは数字ではなく、不足を三つに分けて言う言葉だったのです。

当社がこれまでのコラムで取り上げてきたのは、計画が数字だけで終わる場面、計画が行動につながらない場面、目の前の緊急の仕事に振り回される場面でした。

これらを並べると、届かなかった月の不足は、「計画がそもそも無かった」「計画はあったが動けなかった」「急に増えた目の前の対応に押されて仕込めなかった」の三つに分けて捉えられる、という見方ができます。

社長が変えたことは、三つです。

一つ目は、締めの日に責任者へ返す一言です。

締めの数字を受け取ったとき、社長は「今月の不足は、修理の呼び出しに押されて、入れ替えの提案を仕込めなかった分だな」のように、三つのどれかを名指しする一文で返すようにしました。

社内で「三つに分ける不足」と呼ばれるようになったのは、締めの日のこの返事がきっかけです。

二つ目は、「急な対応に押された」月を、責めずに数で残すことです。

その月は、修理や点検の呼び出しが何件あったのかを、責任者が締めの数字の横に書き残すようにしました。

当社では、計測できるものは改善でき、計測できないものは改善できないと考えています。

三つ目は、三か月分の一文を並べて見ることです。

社長は担当者と一緒に月ごとの一文を並べ、同じ不足が続いていないかを確かめるようにしました。

社長は今、こう話しています。

「月末の追い込みは今もあります。ただ、何を埋めるための追い込みかを、締めの日に言えるようになりました」

追い込みをやめたのではなく、追い込みのあとに言う言葉が変わったということです。

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一言で月を締めると、なぜ翌月も月末の追い込みが続くのか?

一言で月を締めると、翌月に打てる手が「もっと動こう」という言葉くらいしか残らないからです。

「数字が足りない」は起きたことの結果であって、なぜ足りなかったのかという理由ではありません。

理由が分からないまま翌月を迎えると、「もっと頑張ろう」「訪問件数を増やそう」「見積もりを増やそう」という、その場しのぎの言葉で月が動き出します。

理由を言おうとしても、自分の力不足だったと自分を責めたり、担当者が動かなかったと他人を責めたり、景気が悪かったと環境を責めたりして、話が終わってしまうこともよくあります。

責めた先に残るのは反省の気分だけで、翌月の打ち手は一つも残りません。

当社では、届かなかった要因を、具体的に、測れる形で言葉にすることが欠かせないと考えています。

要因があいまいなままでは打ち手が打てず、翌月も同じことを繰り返すからです。

そう、帳尻が合うことと、不足の理由が分かることは、まったく別の話なのです。

ここが見落としやすい点です。

帳尻が合った月は、何が足りなかったのかを言葉にしないまま月を締めやすい、という見方ができます。

通勤の電車に、毎日のように駆け込み乗車で間に合う人がいます。

間に合った日は、なぜ走ることになったのかを考えないまま始業を迎え、翌日もまた駅まで走ります。

遅れた理由は、家を出る時刻をそもそも決めていなかったのか、決めていたのに支度が遅れたのか、出がけに急な用事を頼まれたのか——三つのどれかです。

月末の追い込みも、得意先にお願いして不足を埋めたこと自体は、その月の数字を守った大切な動きです。

ただ、その追い込みが翌月の動き方につながらなければ、やってよかったのかどうかも分からないまま、次の月末を迎えることになります。

足りなかった理由が言葉になっていけば、追い込みは翌月の材料に変わっていく、という見方ができます。

今月を締めるとき、経営者はいつもの一言の代わりに何と言えばよいのか?

今月を締めるときに経営者がすることは、締めの数字に返すいつもの一言を、不足を三つのうちのどれかで名指しする一文に替えて、社内に伝えることです。

やることは、これだけです。

締めの数字の報告を受けたとき、「今月も足りなかったな」と返す代わりに、次のどれかの形を、仮の見立てとして返してみてください。

「今月の不足は、提案に行く先をそもそも決めていなかった分だ」

「今月の不足は、予定していた見積もりの提出が後回しになった分だ」

「今月の不足は、急な対応に押されて、提案を仕込めなかった分だ」

一文には、「違っていたら教えてほしい」と添えて伝えます。

名指しするのは不足であって、人ではありません。

誰が動かなかったのかではなく、今月の不足が三つのどれに近かったのかを、一文で言ってみるということです。

三つが重なった月は、いちばん大きかったと思うものを一つ選びます。

どれにもはっきり当てはまらない月は、そう感じたことを一文にしても構いません。

帳尻が合った月にも、同じように一文を添えてみてください。

返事の言葉を替えるだけなので、今月の締めの日から試してみる価値があります。

実際に試してみると、こんな場面が起きるかも知れません。

経営者が「今月の不足は、急な対応に押されて提案を仕込めなかった分だ」と仮の見立てを伝えた翌日、担当者の一人が答えに来ます。

「急な対応に押されたというより、今月は提案に行く先を、そもそも決めていませんでした」

経営者の見立てと現場の見立てが、違っていたわけです。

経営者の一文だけでは、毎月の不足を正しく分けきれないということです。

足りなかった理由が言葉になると、次に何が必要になるのか?

足りなかった理由が言葉になると、次に必要になるのは、その言葉を経営者と現場が毎月そろえて使い続けるための形です。

締めの日に、責任者と担当者が同じ三つの言葉で不足を言い、三か月分を並べて見る流れを、毎月くり返せるようにしておくということです。

月末の追い込みを、無理に止める必要はありません。

追い込みのあとに何と言って月を締めるかは、今月の締めの日から変えられます。

あなたの会社では、今月の不足を三つのどれかで言えていますか。

それとも、「数字が足りない」の一言で、今月もまた月を締めようとしていないでしょうか。

一文を替えてみると、経営者と現場の見立てのずれが見えてきます。

そのずれを毎月そろえていく段階で、数字と行動をどう結び付けて見るかが、次の課題になります。

この記事が、今月の締めの日に返す一文を考えるきっかけになれば幸いです。

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