「営業の成約達人」を生み出す仕組みの作り方

代表 乾切抜き 仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第534話 「うちの社員は自分で考えない」と嘆く会社の、失敗の終わらせ方

「うちの社員は、自分で考えない」

「客先の様子が変わっているのに、前例どおりにしか動かない」

「あれだけ注意したのに、また同じ失敗を繰り返す」

経営者や上司から、こうした嘆きを聞くことが少なくありません。

その原因を社員の能力ややる気に置いて手を打っているなら、注意するほど前例どおりが固まっていくかも知れません。

問題は、社員の頭の中より先に、失敗が起きた後の「終わらせ方」にある場合があるからです。

社員が自分で考えないとは、どういう状態のことか?

社員が自分で考えないとは、目の前の状況が前回と違っていても、社員が自分の判断を加えず、前例どおりのやり方を選び続けている状態のことです。

次の社長と私の会話は、説明のために想定した場面です。

社長「同じミスをした営業に顛末をきちんと説明させ、原因も本人に言わせています」

私「その話は、何が決まったところで終わりましたか」

社長「本人が『今後は気をつけます』と言ったので、そこで終わりです」

私「次に同じ場面が来たとき、その営業は何を前回と変えるのでしょうか」

社長「えっ、それは本人が考えることでしょう」

この会話には、落とし穴があります。

反省は、本来、次の行動を決めるための手段です。

ところが、顛末を説明させ、原因を言わせ、謝らせることが、いつのまにか失敗の話の目的になっています。

そう、手段の目的化です。

反省が済んだ時点で話が終わり、次に変える行動は何ひとつ決まっていないということです。

なぜ社員は、状況が変わっても前例どおりに動くのか?

社員が状況の変化に前例どおりで応じるのは、考える力が無いからではない、という見方ができます。

失敗が反省と責任の確認で片づく職場では、前例どおりが、社員にとっていちばん責められにくいやり方になるからです。

(失敗をそうやって片づけている職場に限った見方です。)

次の4つが、静かにつながっていきます。

失敗が、経緯と謝罪と責任の確認で片づく

夕方、得意先から差し戻しの連絡が入ります。

営業は上司の机の前に立ち、経緯を順に説明します。

上司は「確認はしたのか」「なぜ気づかなかったのか」と重ね、最後に営業が頭を下げます。

「今後は気をつけます」の一言で、その日の話は終わります。

前例どおりが、いちばん責められにくいやり方になる

前回と同じやり方で失敗したときは、「前回はこれで通りました」と説明できます。

前回と違うやり方で失敗したときは、「なぜ勝手に変えたのか」と問われます。

同じ失敗でも、前例どおりのほうが責められにくいのです。

当社では、「何をしなければ失敗しないか」「どうすれば怒られずに済むか」という保身の視点に立つと、次の一手は浮かばなくなると考えています。

次に同じ場面が来たときの手が、何も決まっていない

「今後は気をつけます」は、気持ちの表明であって、行動ではありません。

いつ、どの得意先で、何を前回と変えるのかは、どこにも残っていません。

当社では、振り返りを反省で終わらせず、期限を決めて次の行動を決めることを大事にしています。

反省で終わった失敗には、この「次の行動」がありません。

状況の変化に前例で応じ、同じ失敗を繰り返す

数か月後、別の得意先で、また前回と違う兆しが出ます。

営業の手元にあるのは、前例どおりのやり方と、「気をつける」という気持ちです。

営業は前例どおりに動き、同じ失敗を繰り返します。

経営者の目には「また考えていない」と映りますが、社員は責められにくい手を、きちんと考えて選んでいるという見方もできます。

法人向けの卸売業で、同じ失敗はどう繰り返されていたのか?

法人向けの卸売業で起きそうな場面として、たとえば、こんな会社を想定してみてください。

顛末で片づくしくじり

ある得意先で、購買の担当者が替わりました。

新しい担当者は、打ち合わせの中で「納める時間帯や荷姿も、少し見直したい」とこぼしていました。

営業はその一言を聞き流していつもの品をいつもの段取りで手配し、受け取りの段階で差し戻されます。

社長は営業を呼んで顛末を説明させ、確認の手順のどこが抜けたのかを問いただしました。

話は「今後は気をつけます」で片づきます。

三か月後、新しい現場が始まった別の得意先で、同じ形のことが起きました。

現場の条件が変わっていたのに、前回と同じ品を前回と同じ段取りで提案し、今度は他社に取られたのです。

社長はまた顛末を説明させ、話はまた同じ一言で片づきました。

失敗のたびに反省は重ねているのに、次に何を変えるかは一度も決まっていなかったのです。

試し方が残るしくじり

きっかけは、出荷場の片隅で先輩と荷を積んでいた若手の一言が、社長の耳に入ったことでした。

「前回と同じにしておけば、少なくとも怒られないので」

社員は考えていなかったのではありません。

怒られないために、前例どおりを選ぶことを考えていたのです。

前例どおりを選ばせていたのは、失敗の後の話の終わらせ方のほうだったと、社長は受け止めました。

社長は、失敗の話の終わらせ方に絞って、次の3つを変えました。

ステップ1:謝罪と顛末の説明では終えないと決めた

謝罪や顛末の説明が出ても、そこを話の終わりにしないと決めました。

ステップ2:試す手1つと、それを試す期限が決まったら終える

前回と変えて試す手を、営業本人が1つ選びます。

次に同じ場面が来る日が分かれば、その日を期限にしました。

分からないときは、その手を試せたかどうかを確かめる日を、先に予定表へ入れました。

手と期限の2つが揃ったところで、話を終えるようにしました。

ステップ3:前例と違う手を選んだことを、結果より先に認める

選ばれた手が前例と違うものなら、社長はうまくいくかどうかより先に、違う手を選んだことを認めました。

うまくいかなかったときも、話はまた、次に試す手が1つ決まったところで終えます。

数か月がたつころ、営業の口から「次はこうしてみます」という言葉が、ぽつぽつと混ざるようになりました。

失敗がすぐに減ったわけではありません。

それでも、失敗の後に残るものが、反省の言葉から次の試し方に変わり始めました。

社長の言葉にすると、こうなるでしょう。

社長「考えない社員だと思っていましたが、考えないほうが安全な終わらせ方をしていたのは、私のほうでした」

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考える力を鍛えても、前例どおりが変わらないのはなぜか?

考える力を鍛える研修を受けさせても、社員の前例どおりが変わらない会社は少なくありません。

当社では、状態(組織風土)が能力をつくると考えています。

個人の能力開発から入らない、ということです。

失敗が責められる状態のままでは、学んだ考え方を試す場面が、職場の中に生まれにくいからです。

ピアノ教室で、たとえてみます。

1つめの教室では、発表会の練習で生徒が音を外すたびに、先生が「どうしてそこで間違えたの」と理由を言わせます。

生徒はしだいに、間違えない曲、つまり去年と同じ曲や弾き慣れた曲しか選ばなくなります。

2つめの教室では、音を外しても、先生は理由を聞きません。

その小節で次に試す弾き方を生徒が1つ選び、それが決まったところでレッスンが終わります。

この教室の生徒は、まだ弾けない曲にも手を伸ばします。

腕前の差より先に、音を外した小節の受け止め方が、生徒の選ぶ曲を決めているのです。

私自身、かつてクライアントを「やらせ切る」ことを主眼にコンサルティングをしていた時期があります。

成果は出ましたが、クライアントは次に何をするかを私の指示を待つようになり、仕事に創意工夫が生まれなくなりました。

当社では、一番の前向きさとはチャレンジすることだと考えています。

うまくいかなくても構いません。

前例と違う手を試したことを前向きさとして受け止める職場では、次の一手が浮かびやすくなるという見方ができます。

失敗が1件起きた日、経営者と上司は何を変えればよいのか?

失敗が1件起きた日に経営者と上司が変えるのは、その話の終わらせ方です。

明日、社員から失敗の話が1件上がったら、謝罪と原因の説明が出ても、そこで話を終えないでください。

終えてよいのは、次の2つが決まったときです。

1つは、前回と変えて試す手1つです。

もう1つは、その手を試す期限です(予定表の上の、具体的な日付です)。

次に同じ場面が来る日が分かっていれば、その日を期限にします。

得意先の担当者の交代のように、次がいつ来るか決められない失敗なら、試せたかどうかを確かめる日を先に予定表へ入れます。

手は、得意先の都合や景気ではなく、本人が自分で変えられることの中から、本人が選びます。

選ばれた手が前例と違うものなら、上司はうまくいくかどうかより先に、違う手を選んだことを認めます。

話の終わりの合図を、謝罪から「次に試す手」に替えるということです。

まずは1件から、試してみる価値があります。

試してみると、決めた日が来たときに、こんな場面に出くわすかも知れません。

営業が新しい手を試した結果を伝えに来た日、受け止めたのは、事情を知らない別の上司でした。

その上司は、「なんで前回と違うやり方をしたんだ」と口にします。

営業の口から、「次はこうしてみます」の言葉が消えていきます。

1人の上司が終わらせ方を変えても、職場の全員が同じ受け止め方をしているとは限らないのです。

社員が自分で考えない会社は、次に何を整えればよいのか?

社員が自分で考えない会社が次に整えるのは、失敗の受け止め方を、1人の上司の心がけではなく、会社の考え方として揃えることです。

(ここで言う考え方は、理念ではなく「目標達成とは何か」のような、仕事に直結した軸です。)

当社では、考え方は標語で終わらせず、評価や日々の仕組みに落とし込み、体験を通じて軸として定着させるものだと考えています。

あなたの会社では、失敗の話が、次に試す手が決まったところで終わっていますか。

それとも、「今後は気をつけます」の一言で片づいているでしょうか。

明日の1件で終わらせ方を変えると、社員の言葉に「次は」が混ざり始めるかも知れません。

そのとき、その言葉を職場の誰が受け止めても同じように扱われるかどうかが、次の分かれ目になります。

失敗が起きた日は、前例どおりから一歩出る手を決められる日でもあります。

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追伸)若手の本音は、社長の机の前より、出荷場の片隅でこぼれるものです。