仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第411話 特定多数へのアプローチで、不況でも勝ち残る!中小企業がいま構築すべき営業の仕組みとは
はじめに
多くの企業がコロナ禍で、経営安定を模索するなか、BtoB(法人営業)の領域では、早期に対策を講じた企業とそうでない企業の間で、業績に大きな開きが生じています。
実際に、コロナ禍に入る以前から、すでに営業の仕組みづくりを進めていた会社と、旧来のやり方に固執していた会社とでは、今になって大きな差がついてしまったという声もよく耳にします。
そこで本稿では、そうした差が生まれる背景として「営業の仕組み」に着目しながら、コロナ禍にあっても着実に成果を上げている企業がどのような取り組みを行っているのか、事例を交えながらご紹介します。
特に、中小企業の経営者や管理者の方々が「今の状況をどう打破できるか」「長期的な成長をどう実現できるか」という課題を解決するためのヒントとなるよう、解説していきます。
コロナ禍以前からの準備の重要性
コロナ禍でも堅調な売上を維持している企業の共通点として、「コロナ以前から営業の仕組みを整えていた」ことが挙げられます。
具体的には、「特定少数」から「特定多数」へと対応の幅を広げられる営業体制をあらかじめ構築していたのです。
「特定少数」とは、その名の通り、特定の少数顧客を中心に深くアプローチし、売上を作っていく営業スタイルです。
一方で、「特定多数」は顧客のすそ野を広げ、多様な顧客層にアプローチし、リスク分散と安定的な売上確保を狙うスタイルを指します。
コロナ禍で対面営業が制限されるようになると、従来のように“足で稼ぐ”営業モデルが厳しくなりました。
しかし、もともと特定多数に対応する仕組みをつくっていた会社は、デジタルツールやオンライン商談への移行が比較的スムーズで、ビジネスの継続が可能だったのです。
例えば、ある製造業の中小企業では、これまでは展示会などでの「一対一」の商談が中心でした。
しかしコロナ禍を機に、バーチャル展示会やオンライン営業の環境を整備し、旧来型の顧客だけでなく、新たな市場からの問い合わせにも即座に対応できる仕組みを整えた結果、安定的な受注を継続できています。
特定多数に対応するための3つのポイント
特定多数に対応する営業体制を確立するには、以下の3つのポイントが重要です。
1)顧客情報の管理と活用
2)行動管理の徹底
3)年間計画の策定
顧客情報の管理と活用
特定多数へのアプローチでは、数多くの潜在顧客に接触する必要があります。
そのためには、顧客情報を正確に管理し、それを適切に活用していくことが不可欠です。
しかし、現場を見てみると、顧客リストは揃っているものの、情報活用が進んでいないケースが意外に多いものです。
例えば、訪問の目的がいつも「何かお困りごとはありませんか?」で終わっており、深い課題を拾い切れていない――こうした状況は珍しくありません。
一方で、顧客の課題やニーズを事前に把握し、こちらから「可能性を感じてもらえる提案」を行うことで、商談機会が増すだけでなく、長期的な関係構築が望めます。
実際には、顧客情報の分析を行い、業種・業態・購買傾向などの切り口で分類・整理し、それぞれのニーズに合った情報提供をする、といったステップが欠かせません。
行動管理の徹底
特定多数にアプローチする営業組織を動かしていくには、営業担当者の行動管理もきちんと仕組み化する必要があります。
よくある失敗例として、担当者が訪問しやすい顧客だけを繰り返し訪問し、「ついでの雑談」で終わってしまう、あるいは「とりあえず訪問数を日報に書けば上司も納得するだろう」と考え、実際には訪問していない顧客まで訪問済みとして報告する――といった問題が挙げられます。
こうした属人的なやり方を防ぐためには、顧客管理システム(CRM)や営業支援システム(SFA)を導入し、営業活動のプロセスを見える化していくことが大切です。
訪問数や商談進捗だけでなく、具体的な提案の内容や顧客の反応を蓄積し、担当者同士で共有できれば、誰が見ても「この顧客には次に何を提案すべきか」といったアイデアを生み出せます。
年間計画の策定
特定多数へのアプローチを成功させるには、年間を通じた計画づくりが欠かせません。
多くの中小企業では、月単位で顧客リストをつくって追いかけるところまではできていても、「長期的にどの顧客を攻め、どんな目標を設定するか」が明確でないことが少なくありません。
年間計画を策定することで、どの業界・客層をどの時期に重点的に狙うかが見えやすくなります。
また、3ヶ月ごとの振り返りを行うことで、計画に対する進捗やアプローチ方法の有効性を検証し、必要に応じて修正を加えることができます。
この“定期的な検証・改善サイクル”が回るようになれば、営業成果は着実に積み上がっていきます。
新規顧客開拓における注意点
特定多数に対応しようとする際、新規顧客の開拓は避けては通れません。
しかし、ただ数を追うだけの開拓を進めると、逆に経営に悪影響を及ぼすリスクもあるのです。
戦略なき新規顧客開拓の失敗事例
ソフトウェア関連の販売を手がけるA社は、新製品の発売に合わせて「とにかくたくさんの顧客を獲得してこい」という指示を出し、営業担当者を走らせました。
しかし、進め方に明確な戦略がなかったため、担当者は訪問しやすい小規模顧客に集中し、価格訴求ばかりに終始してしまいます。
結果として売れていったのは、利益率の高い新製品ではなく、在庫処分を狙った既存製品ばかり…。
売上高の数字上は増えたものの、利益率の向上にはつながらず、人件費や残業代ばかりがかさみ、経営的にはマイナスになってしまいました。
新規顧客開拓の成功のポイント
新規顧客を取り込むときには、ターゲットとする業界や客層(顧客の購買可能金額など)をあらかじめ明確にしておくことが肝心です。
中小企業の場合、どうしても人員やコストに限りがありますから、むやみな“絨毯爆撃”のような営業は非効率です。
そこで、狙う顧客層をある程度絞り込み、獲得までのシナリオを丁寧に描くことが重要になります。
例えば、「まずはセミナーへの参加を促す→興味を持った顧客に試作品を体験してもらう→具体的な商談に進む」といったフローを事前に考えて実行することで、担当者間の連携もスムーズになり、受注率の向上が期待できます。
年間売上目標達成のためのシナリオ
年間の売上目標を達成するうえでは、既存顧客からの売上を伸ばす「増販」と、新規顧客を得る「増客」の両軸で物事を考える必要があります。
ところが、多くの企業では売上目標の数字だけが掲げられ、その内訳や具体的な施策が曖昧なままになっていることが少なくありません。
たとえば、経営幹部が「正直、やってみないと分からないから」と発言してしまうと、現場担当者は行動計画を立てづらくなります。
結果的に、各担当者が手探りで営業を進めることになり、組織全体としての生産性が落ちてしまいます。
そこで、以下のような項目を設定し、明文化しておくことをおすすめします。
●増販と増客の金額目標
●増販と増客を実現するための具体的な手段(オンラインセミナー、キャンペーン企画など)
●前年と変えた点(狙う顧客層、商品・サービスの打ち出し方)
●どの業界や客層のシェアをどれだけ伸ばしていくのか
こうした「シナリオ」を明確に共有することで、担当者が行動を起こしやすくなり、組織としても一体感を持って売上目標に向かうことができます。
リーダーシップの重要性
先行きが不透明なコロナ禍では、トップや管理者層のリーダーシップが、現場のモチベーションと成果に大きな影響を及ぼします。
経営者や管理者が明確なビジョンを示し、「こういう未来に向かって、こういう戦略でやっていくんだ」と腹をくくって取り組む姿勢を見せることで、部下や社員は安心して業務に集中できます。
一方で、リーダー自身が「まあ、絵に描いた餅かもしれないが…」というように半信半疑でいると、その雰囲気はすぐに部下に伝わってしまうものです。
結果、現場も「結局うまくいかないかもしれないし…」と本気で動けなくなり、肝心の計画や施策が形骸化してしまいます。
特に、中小企業の場合、経営者や管理者の決断がダイレクトに組織に影響します。
リーダーがどこまで本気で、どんな意志を持って取り組むのか――その覚悟が、コロナ禍における生き残りと成長の鍵を握っていると言えるでしょう。
まとめ
コロナ禍を乗り越え、企業として持続的に成長していくためには、従来の「特定少数」に依存する営業スタイルだけではなく、「特定多数」を視野に入れた営業の仕組みづくりが不可欠です。
具体的には、以下のポイントを総合的に実践することで、厳しい環境下でも新たな成長の道を切り開くことができるでしょう。
●特定少数から特定多数へシフトできる体制
●顧客情報の管理と活用
●行動管理の徹底と見える化
●年間計画の策定(長期的視点の確立)
●戦略的な新規顧客開拓(ターゲットの明確化)
●リーダーシップの発揮(ビジョンと覚悟)
これらを踏まえて、自社の現状を改めて見直し、一つひとつ着実に体制を整えていけば、コロナ禍という厳しい状況下でも、企業としての存在感を高めることは十分に可能です。
ぜひ、今回ご紹介したポイントをヒントに、現場で取り組む施策を検討してみてください。
経営者や管理者のみなさまにとって、新たな気づきや具体的なアクションにつながるきっかけとなれば幸いです。
