仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第510話 営業の結果が出ない会社ほど、営業が育たない。原因は一つです
「打ち手は全部やっているのに、営業の結果が出ない」
「研修も同行も入れた。それでも営業が育たない」
「みんな動いてはいる。動いているのに、数字にならない」
「これ以上、何を足せばいいのか分からない」
もし、この4つのうち1つでも心当たりがあるなら、この記事は最後まで読む価値があります。
数字が出ないことと、人が育たないこと。
多くの経営者は、この2つを別々の問題として扱います。
数字には数字の打ち手を、育成には育成の打ち手を当てます。
その分け方こそが、両方を悪化させている原因です。
打ち手を増やせば増やすほど、この2つの症状は重くなっていきます。
経営者が陥る「別々の薬」という罠
ある食品加工機械のメーカーで、A社長からこう相談を受けたことがあります。
「数字が落ちているので、営業会議で訪問件数を週次で追うようにしました」
「若手が伸びないので、外部の商品知識研修も入れました。ベテランの同行も増やしました」
「打てる手は打っています。それでも変わらないんです」
私はこう尋ねました。
「その訪問件数は、何のための件数ですか」
A社長は少し黙ってから、こう答えました。
「……数字を上げるためです」
「では、若手が研修で覚えた商品知識は、何のために使うものですか」
「それは、お客様に説明するためで……」
そこで言葉が止まりました。
2つの打ち手には、それぞれ別の理由がついています。
しかし、どちらにも「何のために」という肝心の一文がありません。
目的が抜けた打ち手は、実行すること自体が目的に変わります。
これが手段の目的化です。
社員が怠けているわけではありません。
むしろ真面目な社員ほど、与えられた手段を完璧にこなそうとします。
件数を求められれば件数を作り、知識を求められれば知識を暗記します。
そして、その先にあったはずの目的だけが、誰の頭からも消えていきます。
あなたの会社の営業会議では、「何件回ったか」の確認に一番時間を使っていませんか。
打ち手が増えるほど弱っていく「4つの症状」
目的と手段が入れ替わると、現場では次の順番で症状が進みます。
① 測りやすいものだけが目標になる
訪問件数、提案書の枚数、研修の受講回数。
数えられるものは、そのまま目標に置き換えられます。
顧客が何に困っているかは数えられないので、目標から外れます。
測りやすさが、大切さを追い越した瞬間です。
② 会議の言葉が「やったこと」だけになる
営業会議で報告されるのは、行った、出した、受けた、の3語です。
なぜ売れたのか、なぜ断られたのかは、誰も口にしません。
聞かれないことは、考える必要のないことになります。
③ 若手が判断のしかたを覚えられない
ベテランに同行しても、若手が見ているのは会話の順番と言い回しだけです。
その場でベテランが何を根拠に提案を切り替えたのかは、目に見えません。
手順は真似できても、判断は真似できません。
④ 社長が打ち手をもう一つ足す
数字も出ない、人も育たない。
そこで新しいツール、新しい研修、新しい管理表が追加されます。
現場は「こなす対象」を一つ抱え、考える余白をまた一つ失います。
熱には解熱剤、痛みには鎮痛剤。
症状ごとに薬を出し続けているのに、両方の症状を出している病巣には誰も触れていません。
薬を増やすほど、体は弱っていきます。
【実録事例】食品加工機械メーカーで起きた逆転
対症の時期
冒頭のA社長の会社です。
主力は、食品工場の生産ラインに組み込む加工機械でした。
営業は週次で訪問件数を報告し、月に一度は商品知識の研修が入っていました。
営業課長のBさんは、若手の同行日程を組むことに多くの時間を使っていました。
私が営業会議に同席させてもらうと、報告はこうです。
「今週は12件回りました。うち新規は3件です」
「先方の担当者が不在で、資料だけ置いてきました」
45分の会議で、顧客の生産ラインの話は一度も出ませんでした。
若手の商談に同行させてもらうと、機械の処理能力と省人化の数値を、カタログの順番どおりに説明していました。
顧客がラインのどこで手を焼いているのかを聞く場面は、ありませんでした。
会議後、A社長はこう言いました。
「みんな、ちゃんとやっているんですよ。それなのに結果が出ない」
その通りでした。
全員が真面目に、目的の抜けた手段を実行していたのです。
病巣が見えた日
私がA社長にお伝えしたのは、一つだけでした。
「打ち手を足すのをやめて、一度減らしてみませんか」
A社長は驚いていました。
数字が出ていないのに手を減らすなど、考えたこともなかったからです。
しかし、話を進めるうちにA社長の表情が変わりました。
数字が出ないことと、若手が育たないこと。
この2つは別々の病気ではなく、「何のために動くのか」を渡していないという一つの原因が、2つの症状として現れていただけでした。
別々の薬を出していたから、どちらにも効かなかったのです。
取り組んだのは、次の3つです。
打ち手を一度1つに戻す
訪問件数の週次目標を止め、月次の商品知識研修も一旦休止しました。
営業会議の議題も1つに絞りました。
現場から反発が出るかと思いましたが、実際に出たのは「ようやく考える時間ができた」という声でした。
手段の前に目的を渡す
訪問の定義を作り直しました。
「顧客の生産ラインで困っていることを1つ持ち帰る場」
これだけです。
行くこと自体が目的だった訪問が、持ち帰るものがある訪問に変わりました。
会議で「分かったこと」を話す
営業会議では、案件を1件だけ取り上げるようにしました。
そして担当者本人に「なぜそうなったと思うか」を語ってもらいます。
半年で、会議の言葉が変わりました。
「あの工場は、洗浄の手間を減らしたがっていました」
「能力の話より、段取り替えの時間の話をしたら反応が変わりました」
若手が、顧客の言葉で話すようになったのです。
A社長は、こう言いました。
「打ち手を減らしたら、若手のほうから質問してくるようになりました。増やしていた頃は、私の指示を待っていただけだったんですね」
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逆説的な真実——症状ではなく病巣に触れる
営業の仕組みは、症状を抑える薬ではありません。
病巣そのものに触れるためのものです。
数字が落ちたとき、私たちはつい症状に効く手を探します。
件数を増やす、新規リストを配る、成功事例を共有する。
どれも間違いではありませんが、それらは熱を下げているだけです。
熱が出ている原因に触れていなければ、薬が切れた翌月にまた同じ数字が並びます。
では、病巣とは何か。
「何のためにその行動をとるのか」が、社員に渡っていない状態です。
ここに触れると、2つの症状が同時に引きます。
目的を持って訪問すれば、顧客の困りごとが持ち帰られ、提案が変わり、数字が動きます。
目的を持って訪問すれば、うまくいった理由といかなかった理由を、社員自身が考えるようになります。
同じ一つの手当てが、結果と育成の両方に効きます。
これは偶然ではありません。
もともと同じ病巣から出ていた症状だからです。
そして、この手当ては足し算ではありません。
打ち手を増やすことではなく、目的を1つに絞り込むことです。
あなたの会社では、いま現場に降りている打ち手を、社員は何のためのものだと理解しているでしょうか。
処方箋——明日の営業会議で、質問を1つだけ変える
今日お渡しするのは、たった1つです。
明日の営業会議で、報告を聞いた後にこの質問をしてください。
「その訪問で、お客様が困っていることを何か1つ持ち帰れましたか」
これだけです。
新しい管理表も、新しいツールも要りません。
大事なのは、この質問を、件数の報告よりも先に置くことです。
先に件数を聞くと、社員は件数の話で頭が埋まり、困りごとの話が出てこなくなります。
おそらく、最初はほとんど答えが返ってきません。
「特には……」で終わる社員が大半でしょう。
それでいいのです。
その沈黙こそが、いま自社の営業が何を目的に動いているかを、正確に映し出しています。
そして2人か3人に聞いたところで、あなたはあることに気づくはずです。
答えが返ってきたとして、それをどこに残し、誰にどう渡せばいいのかが決まっていません。
質問はできても、続ける形がないのです。
その気づきが、この1歩目の本当の価値です。
まとめ
営業の結果が出ないことと、営業が育たないこと。
この2つを別々の課題として扱い、それぞれに別の打ち手を当ててきたなら、症状が重くなったのは自然な結果です。
目的と手段が入れ替わったまま手段だけを増やせば、現場はこなす作業を抱え、考える余白を失っていきます。
明日の会議で質問を1つ変えるだけで、その日のうちに現場の反応が変わります。
そして同時に、返ってきた答えを残す場所も、次の商談に活かす道筋も、まだ自社にないことが見えてきます。
そこから先が、仕組みの出番です。
「打ち手は全部やっているのに営業の結果が出ない」と感じている経営者の方へ。その原因の外し方と、目的を社員に渡し続ける仕組みの作り方を、無料レポート「成約達人を生み出す組織をつくる」にまとめました。
