「営業の成約達人」を生み出す仕組みの作り方

代表 乾切抜き 仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第531話 代替わりから3年、二代目社長の組織改革が「返事だけ」で終わる

「改革の話をすると、全員が『はい』と言うんです。」

「毎月の報告では、どの部署も『やっています』と答えます。」

「それなのに、お客様からいただく注文の中身は、3年前と同じなんです。」

代替わりしてから、こうした言葉を口にする二代目社長は少なくありません。

反対する人は、一人もいないのです。

それでも気がつくと、社員が組織改革についてこない。

その手応えのなさを放っておくと、経営者は改革の話を重ねるたびに、会社の中で一人になっていきます。

二代目社長の組織改革で、社員が「はい」と答えるのに何も変わらないのはなぜか?

二代目社長の組織改革とは、代替わりした社長が、お客様に価値を届ける仕事の進め方や部署どうしの役割を、自分の代の形に組み替えていくことです。

新しい道具を入れることでも、人を入れ替えることでもありません。

ある社長と私の、こんなやり取りがありました。

社長「改革には、誰も反対していません。毎月聞けば、みんな『はい、やっています』と答えてくれます。」

私「その改革で、お客様の側では何が変わりましたか。」

社長「……そこは、営業から特に何も上がってきていないですね。」

私「では、改革が進んでいるかどうかは、何で確かめていらっしゃいますか。」

社長「毎月の報告です。全部署から、ちゃんと返事が来ますから。」

実は、ここに落とし穴が潜んでいます。

組織改革は本来、お客様に届く価値を変えるための手段です。

ところが、毎月「はい」がそろうことが、いつのまにか改革の進み具合そのものになっているのです。

改革の手応えを、改革が届くはずの場所ではなく、社内でだけ確かめているということです。

当社では、営業とはお客様の側に変化を起こす仕事だと考えています。

だとすれば、改革が届いたかどうかも、お客様の側でしか確かめようがないからです。

代替わりから3年、「はい」がそろう会社では、どんな順で改革の手応えが消えていくのか?

代替わりから3年たっても「はい」がそろう会社では、外から見る限り、改革は順調そのものです。

誰も反対せず、報告も毎月きちんと上がってくるからです。

けれども、改革の手応えは、次の順で少しずつ薄れていきます。

① 報告が「やっています」で締めくくられる

毎月の報告には、「お客様の工場に伺いました」「打ち合わせを開きました」という、実施した事実が並びます。

そこで何を聞き、お客様の何が動いたのかは、報告の外に置かれたままです。

② 経営者が確かめる先が、社内の返事に固まる

経営者は報告の行数や打ち合わせの回数を数えて、手応えを測ろうとします。

経営者自身がお客様の工場に足を運ぶ機会は、代替わりの直後より、かえって減っていきます。

確かめる場所が、少しずつ社内へ寄っていくのです。

③ 三部署の打ち合わせが、予定の読み合わせになる

営業・設計・製造が顔をそろえても、話題は今週の納期と出荷の段取りが中心になります(お客様の困りごとは、議題にのぼる前に時間が来てしまいます)。

打ち合わせは毎週開かれているので、報告の上ではやはり「はい」です。

④ 手応えのなさを、社員の気持ちのせいにし始める

それでも注文の中身が変わらないと、経営者は「本気でやっていないのではないか」と考え始めます。

改革の話はますます上から下への一方通行になり、社員は聞かれたことに、いっそう丁寧に「はい」と答えるようになります。

①で報告の外に置かれたものを、②で誰も見に行かなくなり、③で議題からも外れ、④で社員の気持ちの問題にすり替わる——そういう順番です。

「はい」がそろうほど、改革の本当の進み具合は見えなくなっていくということです。

【実録事例】産業用機械のメーカーで、代替わり3年目の二代目社長は何に気づいたのか?

産業用機械のメーカーを営むH社長の会社で、当社がご一緒した事例です。

満点の返事を受け取る社長

代替わりの直後、H社長は全社員の前で2つのことを宣言しました。

一つは、営業が設計担当と組んで、お客様の工場の困りごとを聞きに行くやり方に変えること。

もう一つは、営業・設計・製造の三部署で、毎週打ち合わせをすることです。

それから3年、毎月の報告では同じやり取りが続きました。

営業は「今月も設計と一緒に取引先へ伺いました」と答え、設計は「打ち合わせには毎週出ています」と答え、製造も「はい、やっています」と答えました。

幹部からは「いい感じで進んでいます」という言葉も、何度となく聞きました。

反対の声は、一度も上がっていません。

社員はみな、聞かれたことに誠実に答えていました。

それでも、取引先からいただく注文は、決まった機種の更新と交換部品がほとんどでした(設計担当に新しい相談が届いたという話は、H社長の耳には入っていませんでした)。

H社長は当社に、「社員が改革についてこない気がするんです」とこぼされました。

報告の上では、改革は3年間ずっと満点でした。

据え付けの最中の工場長

転機は、長年の取引先の工場へ、新しい機械の納入に立ち会いに行ったときに訪れました。

据え付けの作業が続く工場の中で、作業の合間に、工場長がH社長に尋ねました。

「社長が代わって、御社は何か変わりました?」

H社長は、すぐには答えられませんでした。

毎月の報告で「はい」は聞いてきたのに、このお客様の工場で何が変わったのかは、一度も確かめていなかったからです。

工場の中で据え付けの音を聞きながら、H社長が思い当たったのは、3年間、改革の手応えを確かめていた場所が社内の報告の場だけだったということです。

社内でそろう「はい」は、改革が進んでいる印にも、止まっている印にもなりません。

返事に映るのは社内の様子だけで、お客様の工場で何が起きたかは映りません。

H社長が当社と取り組んだのは、次の3つです。

ステップ1 取引先ごとに、いまの状態を書き留める

主な取引先それぞれについて、担当の営業と設計が、いま何を頼まれ、何を相談されているかを書き留めました。

ステップ2 改革の目標を、お客様の側の変化で置き直す

「訪問の件数」「打ち合わせの回数」を目標から外し、困りごとの相談が設計担当に直接来る、試作の依頼が届く、というお客様の側の変化を目標に置きました。

目標を達成したとは、社内で予定をこなしたことではなく、お客様の側に変化が起きたことだと決め直したのです。

ステップ3 四半期に一度、取引先で見比べる

四半期に一度、H社長と担当者が取引先を訪ね、ステップ1で書き留めた状態と見比べて、何が変わったかを確かめるようにしました。

二度目の訪問を終えたころ、二つの取引先から、試作の相談が設計担当に直接届くようになりました。

三部署の打ち合わせでも、納期の話より先に、取引先の名前と困りごとが出てくるようになりました。

1年が過ぎたころ、H社長はこう振り返っていました。

「返事を数えていた3年よりも、工場長に聞かれたあの日のほうが、うちの改革がよく見えました。」

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社員の「はい」は、なぜ組織改革の進み具合を教えてくれないのか?

社員の「はい」が組織改革の進み具合を教えてくれないのは、返事が映し出すのが社内の様子だけだからです。

病院の診察室を思い浮かべてください。

医者が「言われたとおり、食事と運動に気をつけていますか」と問診すると、患者はほぼ必ず「はい」と答えます。

それは嘘でも怠けでもありません。

本人は気をつけているつもりですし、聞かれればそう答えるのが自然だからです。

だから医者は、効いているかどうかを返事ではなく、血液検査の数値で確かめます。

体の側に起きた変化を見るということです。

当社では、「いい感じで進んでいます」という報告は、まだ何も測れていない状態の代表だと考えています。

計測できるものは改善できますが、計測できないものは改善できません。

念のため申し添えると、検査の数値は患者を責めるためのものではなく、どこを直せばよいかを見つけるためのものです。

組織改革でいえば、その数値にあたるのは社内の報告の数ではなく、お客様の工場で起きた変化です(すべてが数字になるわけではないので、相談の中身や頼まれごとの変わり方で補います)。

営業の仕組みやマニュアルも、本来はここで使うものです。

それは、社員が「やっています」と答えるための記録用紙ではありません。

問診の「はい」の代わりに、検査の数値にあたるものを会社の中に置くこと。

それが、仕組みの本当の使い方だということです。

組織改革が「返事だけ」で終わっている二代目社長は、明日どの取引先で何を確かめればよいのか?

組織改革の手応えを確かめたい二代目社長が、明日訪ねる先は、長年の取引先1社です。

経営者ご自身が足を運び、「この1年で、うちの営業に何か変わったことはありましたか」と直接聞いてみてください。

代替わりの前からお付き合いがあり、担当者と気軽に話せる取引先が向いています。

改革の説明はしないでください。

説明から入ると、相手はこちらの期待に沿う答えを探してしまうからです。

返ってきた答えを、その場で良し悪しに分けないことも大切です(「特に変わりません」も、立派な答えです)。

聞いた言葉は、言い換えずにそのまま持ち帰ってください。

たとえば、担当者がこう答えたとします。

「そういえば、設計の方が一度工場を見に来てくれて助かりました。」

その話は、毎月の報告のどこにも載っていませんでした。

改革はお客様の工場で確かに動いていたのに、その手応えは会社の中に持ち帰られていなかったのです。

そして1社に聞いただけでは、次の四半期にまた聞きに行く段取りも、聞いた話を三部署で受け止める場も、まだ会社にはありません。

まとめ

社員の「はい」は、改革に背を向けている印ではありません。

改革の手応えを確かめる場所が、社内に寄っていたということです。

もう一度、大事なところなので繰り返します。

改革が届いたかどうかは、お客様の工場でしか確かめられません。

取引先1社で聞いた言葉は、社内で3年間集めてきた返事とは、まったく違う手触りを持っているはずです。

その手触りを、毎月の報告ではなく、三部署の仕事の中でどう受け止めていくかが、次に向き合うところになります。

あなたの会社の組織改革は、どの取引先の工場で、何を変えたでしょうか。

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改革の次の一歩を考える材料として、お役立ていただければ幸いです。

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