仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第396話 「営業の考え方」を組織の軸に据え、社員が考え行動する風土を創り出す!中小企業のスローガン経営からの卒業
はじめに
「営業の考え方を言語化して浸透させれば、社員は自ら考え行動するようになる」
多くの中小企業の経営者や管理者が、こんな期待を抱いているのではないでしょうか。
もちろん、言語化し広めることは大切です。
しかし、実際にはスローガン止まりで終わってしまい、組織全体に根付かないケースが少なくありません。
では、どうすれば“営業の考え方”を単なる表面的な言葉として留めることなく、組織を変革するほどの“軸”にできるのでしょうか。
本稿では、営業の考え方を深く理解し、それを組織の“軸”として浸透させるための手立てを解説します。
ぜひ読み進めていただき、組織全体の風土を改革するヒントを得てください。
「浸透」ではなく「軸」を意識する
多くの経営者や管理者は「浸透」という響きに好印象を持ち、「さあ、言語化したから浸透しているはずだ」と安心しがち。
しかし、実は「言語化して周知したつもり」で終わり、結果として社員に考え方が根付かない状態に陥るパターンが多いのです。
クレド(企業の理念や信条をまとめたもの)も同様で、掲げること自体が目的化してしまうと、表面的なスローガンのように扱われがちです。
そこで大切なのは、“クレドや営業の考え方が社員一人ひとりの軸となっているか”をチェックする視点です。
軸として使いこなせる状態とは、いつでもその考え方を参照し、自ら判断や行動に移せるレベルのことです。
経営者や管理者がこの「軸」の重要性を認識し、本気で組織全体に根付かせようとする姿勢こそが、真の浸透を生む第一歩といえるでしょう。
営業の考え方の全体像を理解する
営業の考え方を軸に据えるには、まずはその全体像を理解しておくことが不可欠です。
ここでは以下の要素を押さえておきましょう。
1)在り方:最上位概念であり、最終的には信念レベルにまで落とし込むのが理想です。
2)考え方:やり方(戦略・戦術)とセットになって初めて軸として機能します。体験を伴わない考え方は、いくら美辞麗句でも形骸化しがちです。
3)やり方(戦略・戦術):考え方を実務レベルで具体化する手段です。
4)体験:組織として再現性を持たせるには、「意識的な体験」を生み出す仕組みが必要です。
もし在り方が信念レベルまで定着すれば、細かな戦略や指示がなくても社員が自ら試行錯誤するようになります。
とはいえ、すべての社員に在り方や考え方を深く“腹落ち”させるのは至難の業。
まずは3割の社員に徹底的に落とし込み(自分の信念として体得するレベル)を目指すことが、組織風土改革の手始めとして有効です。
考え方を「軸」にするためのステップ
では、具体的に“軸”へと昇華させるにはどんなステップを踏めば良いのでしょうか。以下の流れを参考に、自社の現状を振り返ってみてください。
1) 自社にとって大事な考え方(信条)を決定する
他社の事例に振り回されたり、コンサルタントの意見だけに依存したりせず、自社が本当に大事にしたい理念を言語化しましょう。
特に、経営者や管理者が心から共感し、自ら体現したいと思える内容が鍵を握ります。
2) 言語化したものを文章化し、目に触れる機会を増やす
ポスターや社内報、朝礼など、さまざまな場面で“営業の考え方”を可視化しましょう。
重要なのは、目にするだけで終わりにせず、実践してみる“体験作り”との接点を設けることです。
3) 体験の仕組み(戦略・戦術)を伴って軸にする
言葉だけではなく、それを体験するための仕組みがあるかどうかが決定打になります。
具体的な目標設定や行動チェックリストなどを設け、意識的に自分の考え方を試せる機会を作りましょう。
4) 経験年数に応じた内容にする
全社員が同じ内容を学ぶのではなく、経験年数や役職に応じて学ぶべき考え方を段階的に設定します。
●営業担当:営業活動に直結する基本的な考え方
●営業リーダー以上:メンバーを導くための営業マネジメントの考え方
●営業幹部以上:在り方・理念レベルで組織を動かす考え方
5) 1・3・5・7の法則
一度に多くの考え方を広げるより、まずは重要なものを絞り込み、焦点を定めて軸にすることを徹底すると定着しやすくなります。
6) 営業マネジメント以上の考え方
マネジメント層や幹部層に的確に落とし込むことで、組織の上層部から下への連鎖的な浸透を目指します。
特に該当者への定着率5割以上を目標にすると効果的です。
スローガンで終わらせないための具体策
次に、「言語化はしたが実務に落とし込めない」という“あるある”状態から脱却するために、以下の具体策を活用してみてください。
1)共通認識の醸成
「知っている(言葉として)」を「分かっている(概念を理解)」に進化させるために、自社独自の営業の考え方を図にまとめたり、マニュアルとして整理したりします。
特に組織全体が「どう捉え、どう行動すれば成果に結びつくのか」をひと目で理解できるようにしておくことがポイントです。
2)意識的な体験の創出
「分かっている(頭では理解)」を「できている(実践できる)」へ繋げるには、“意識的な体験”を生み出す仕組みづくりが欠かせません。
営業ロールプレイや振り返りミーティングを定期的に行い、学んだ考え方を実行・検証するプロセスを組織に埋め込みましょう。
3)成功事例の共有
「明確さは力なり」という考え方を軸に育成された営業リーダーの成功体験など、具体的事例を社内で共有してみてください。
実績が伴う生きたエピソードほど、社員は「自分たちもできそうだ」と強く感じます。
4)“腹決め”とトップの率先垂範
経営幹部が「考え方を軸にした社員を本気で育てる」と腹を括ることが大切です。
トップや管理職が率先垂範し、「ウチはこれで行くんだ」という明確なメッセージを発信しましょう。
リーダー育成と組織風土の変革
営業の考え方を軸とした人材を増やすと、やがて組織風土は大きく変わっていきます。たとえば、以下のような変化が期待できます。
1)営業リーダーの育成
「軸を持って計画する」という考え方を冊子にまとめるなど、リーダーがいつでも参照できる形に整備すると効果的です。
考え方がブレないリーダーが増えるほど、各チームが一貫性を持って動きやすくなります。
2)言葉の力で組織が動き出す
考え方が自分の軸になっている人材なら、キーワードをひと言発するだけで周囲がすぐに動き出します。
これはまさに「言葉の持つ力」が最大限に発揮される瞬間といえるでしょう。
3)会議の質の向上
従来なら目先の数値や問題点の対策だけで終わっていた会議が、将来の行動計画や新しい挑戦にフォーカスする場に変化します。
「この会議、前より前向きになったな」と実感できる日は、そう遠くありません。
3)社員の意識変革
社員それぞれが主体的に発言し、将来の仮説を立てる力が高まります。結果としてイノベーションを生み出す下地が整備され、組織全体の団結感をさらに強めることが可能です。
陥りやすい落とし穴
ただし、いくら素晴らしい考え方を掲げても、以下のような落とし穴に引っかかるケースは珍しくありません。
1)目標必達に対する捉え方の不一致
経営者は「目標必達」を社員の成長の起爆剤と捉えていても、営業リーダーが「ノルマ」と感じてしまうと、足並みが揃わずに空回りしてしまいます。
2)表面的な仕組みの導入
営業リーダーが、「これは上からのノルマ達成のための仕組みだ」と思い込むと、やらされ感ばかりが増して定着しません。なぜその仕組みが必要なのか、本質を共有するプロセスが欠かせないのです。
3) 時期尚早という言い訳
「うちの会社はまだ営業の仕組み導入には早い」という言い訳を耳にしたことはありませんか。
それが事実なのか、あるいは“考え方の相違”が原因で話が進まないだけなのか、経営陣と現場リーダーで擦り合わせましょう。
こういった落とし穴を回避するためには、営業リーダー以上のメンバー、さらには経営者も含めて、目標必達に対する考え方を一致させることが欠かせません。
そこを乗り越えれば、営業の考え方を軸に据えた組織文化が根づく土壌が整っていきます。
まとめ
営業の考え方を「言語化して浸透させる」という行為は、多くの経営者や管理者にとって必要不可欠なステップです。
しかし、それが単なるスローガン止まりになってしまってはもったいないです。
真に組織を動かす原動力とするには、体験を伴わせ、根幹となる“在り方”や“信念”まで深く浸透させる必要があります。
本稿でご紹介した、“考え方を軸にするためのステップ”や“具体策”、そして“陥りやすい落とし穴”の回避法を、ぜひ自社の課題と照らし合わせながら実践してみてください。
経営者や管理者がまず率先垂範し、社内に「これが当社らしい営業の在り方だ」という明確な軸を示せば、組織風土は自然と変革の道を歩み始めるはずです。
スローガンで終わらせず、腹決めを持って継続的に取り組むことで、社員一人ひとりが自発的に考え行動する文化へと進化できるでしょう。
持続的な成長を目指す経営者の皆さまには、まずは3割のメンバーに考え方を深く落とし込み、その芽を育むことから始めてみてはいかがでしょうか。
組織の未来は、まさに今の行動と決断にかかっています。
