仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第537話 施策が多すぎる会社で、「終わりの形」がないまま積み上がる施策
「うちは施策が多すぎると、自分でも分かっている」
「今月もまた、営業会議で新しいことを始めてしまった」
「どの施策が効いているのか、営業課長に聞いても答えが返ってこない」
「それなのに、帰りの車の中で、次に何をやるかを考えている」
一つでも思い当たるなら、次の施策を探すのは、少しだけ待ってください。
施策が多すぎる状態は、施策の良し悪しよりも、施策の始め方の側から生まれていることがある、という見方ができるからです。
施策が多すぎると感じている社長が、それでも次の施策を探してしまうのはなぜですか?
施策が多すぎるとは、社内で動いている施策が、営業担当者の手に余るほど重なっている状態を指します。
この記事では、どこまで来たら一旦終えるかを決めないまま始めた施策が、今の仕事に上乗せされて残っている場合を扱います。
経営者は、施策が多すぎると感じていても、手元の施策が成果に届かないと、「次こそ効く施策」を探しにいきがちです。
社長と私のあいだで交わされそうなやり取りを、一つ描いてみます(実在の会話ではなく、想定の場面です)。
社長「正直に言うと、うちは施策が多すぎるんです」
社長「だから今度は、提案書を一からつくり直そうと考えています」
私「そのあいだ、今の施策はどうなりますか」
社長「今のものは今のもので、続けてもらうつもりです」
私「営業の皆さんの一週間のどこに、その作業が入りますか」
社長「……そこは、みんながうまくやってくれると思います」
これが「次こそ効く施策」の罠です。
今の施策が届かない理由を中身の弱さに求めるほど、次の施策は「もっと効きそうなもの」に見えてきます。
けれども新しい施策は、今の施策を一つも終えないまま、その上に乗る形で始まりがちです。
施策が増えるたびに、営業担当者の一週間には、前の施策と新しい施策が重なって残りやすくなります。
当社では、やるべきことが5つで混乱し、7つで中途半端になると考えています。
終わりの形がない施策は、営業の現場でどのように積み上がっていくのですか?
当社では、施策や手法を新しく入れるときには、必ずゴールを決めて、そこまでやり切ることを勧めています。
ゴールの高低は問いません。
この記事では、施策を始めるときに決めておく「どこまで来たら一旦終えるか」というゴールを、「終わりの形」と呼びます。
たとえば、新しく扱う商品の提案を始めるときに、「取引の多いお得意先に一通り提案して回ったら、一旦終えて結果を見る」と決めておく形です。
この形を決めないまま始まった施策は、営業の現場で、次のような段階をたどって積み上がることがあります。
施策が施策の上に重なる「上乗せの連鎖」です。
始める日だけが会議で決まる
経営者が月の初めの営業会議で「今月から、休眠先への電話を週に一度入れよう」と話し、営業課長がうなずいて、その場で始まります。
終わりは、誰も口にしません。
報告の項目だけが増えていく
翌月から、日報には電話の件数を書く項目が一つ足されます。
その次は展示会の準備、さらに問い合わせへの即日対応と、施策の数だけ日報に書く項目が増えていきます。
消える項目はありません。
営業担当者が全部に少しずつ手を付ける
営業担当者は、どの施策も止めてよいとは言われていないので、全部に少しずつ手を付けます。
月曜は電話、火曜は展示会の資料、水曜は紹介状の宛名書き(その合間に、本来のお得意先回り)という一週間です。
繁忙期には、全部が止まります。
どれが効いたのか誰にも分からない
期末になって経営者が「どの施策が効いたのか」と尋ねても、営業課長は答えられません。
どれも途中で止まったままだと、何が良かったのか悪かったのかを見分けにくいからです。
終わりの無い施策は、結果を確かめる時期を別に決めていない限り、成果が出たかどうかが見えにくくなります。
そう、効いた施策が見えないと、経営者はまた次の施策を探しにいきがちです。
施策が7つに増えた法人向けの卸売業では、何が起き、何を変えたのですか?
施策が7つに増えた会社で何が起きるのかを、法人向けの卸売業の場面で見ていきます。
ここからは、当社が想定した会社の場面です(実在の会社の事例ではありません)。
停滞期「いつまでも続いている電話がけ」
この会社の社長は、2年のあいだ、営業会議のたびに「今月から」と言って施策を始めてきました。
新しく扱う商品の提案、お得意先の定期訪問、展示会、問い合わせの即日対応、見積もりの即日回答、休眠先への電話がけ、事例の紹介状と、数えれば7つあります。
狙いは、どれも間違っていませんでした。
ただ、どの施策にも、どこまで来たら一旦終えるかが決まっていませんでした。
社長は「うちは施策が多すぎる」とこぼしながら、8つ目として、お得意先向けの勉強会を開く準備を始めていました。
転換期「区切りを添えて始める勉強会」
きっかけは、ある朝の事務所での出来事でした。
ベテランの営業担当者が、若手に「休眠先への電話がけ、今週の分は済んだか」と声をかけました。
若手は「あれは、展示会の準備が始まったときに終わったものと思っていました」と答えました。
ベテランは、その後の半年も、毎週金曜に電話がけを続けていました。
隣の席でこのやり取りを聞いていた社長は、電話がけが今も続いている施策なのかを、自分でも言えないことに気づきました。
社長が行き着いたのは、施策が7つに増えたのは選んだ施策が悪かったからではなく、どの施策にも終わりを付けないまま始めてきたからではないか、という考えでした。
施策を減らすなら、良い施策を選び直す前に、今ある施策に終わりを付けてみよう、と社長は決めました。
社長は営業課長と二人で、次の3つを進めました。
今ある7つに「どこまで来たら一旦終えるか」を言葉にする
一つ目は、7つの施策それぞれについて、どこまで来たら一旦終えるかを言葉にすることでした。
新しく扱う商品の提案なら「取引の多いお得意先に一通り提案し終えたら、一旦終えて結果を見る」、休眠先への電話がけなら「休眠先の一覧を一巡したら、一旦終える」という形です。
「お得意先のどこまで届いたら」「営業担当者がどうなったら」と問い方を変えながら、日付ではなく、たどり着いた状態で決めていきました。
繁忙期にかかるものは止め、届かないものは終えると決める
二つ目は、繁忙期にかかる施策を閑散期まで止め、終わりの形に届く見込みのない施策は、社長が「ここで終える」と決めることでした。
当社では、取り組みをやめるか続けるかを決めることも、経営者の大事な仕事だと考えています。
黙って手を離した施策は、あの電話がけのように、続いているかどうかが人によって食い違ってしまうことがあります。
勉強会は区切りが言えるまで始めない
三つ目は、8つ目の勉強会を、どこまで来たら一区切りかが言えるようになるまで始めないことでした。
その後、朝の事務所では「電話がけは、一覧を一巡したら一旦終える、でしたよね」と、営業担当者どうしで確かめ合う声が聞こえるようになりました。
社長は、営業課長にこう話しています。
「次の勉強会は、どうなったら一区切りかが言えるまで、お得意先への案内を出さないことにします」
施策が多すぎると感じているなら、取り組む項目の数が増えるほど、実際に行われる割合がどう下がっていくのかを、一度、図で確かめてみてください。
施策が多すぎるときに見ておきたい、取り組む項目の数と実際に行われる割合の関係を示した図と、経営資源に照らして優先順位を考える見方を、無料レポートに載せています。
施策を減らすのに、良い施策を選び直さなくてもよいのはなぜですか?
施策を減らそうとする経営者は、今ある施策の中から効きそうなものを選び直そうとしがちです。
けれども、選び直した3つにも終わりがなければ、半年後にはまた新しい施策が足され、同じ数に戻ってしまうことがあります。
図書館で小説を借りるときは、貸し出しの手続きの中で返却日が決まります。
返却日は、読み終えていなくても、続けて借りるか、一度返すかを判断する日です。
だから、借りた小説が机の上に増え続けることはありません。
営業の施策も、始めるときにどこまで来たら一旦終えるかが決まっていれば、その地点で、続けるか一度区切るかを判断しやすくなります。
施策の絞り込みとは、選び直すことではなく、今ある施策に終わりを付けて数を減らすことだ、という見方ができます。
当社では、成果が出ない根源は中途半端にあると考えています。
一つの施策を区切りまで進めれば次の課題が見えてきますが、区切りのないまま新しい施策を重ねると、同じ状態をくり返します。
営業の仕組みも、使い方を変えられます。
たとえば行動管理は、施策をどれだけやったかを数えるだけでなく、どこまで来たかを確かめ、一旦終えてよいかを判断するためにも使えます。
どこまで来たら一区切りかを決めることは、その施策にとっての「目標達成とは何か」を問うことでもある、と捉えることもできます。
仕組みを、施策を数えるためではなく、区切りを判断するために使ってみる価値があります。
施策が多すぎる会社の社長は、新しい施策を始めると決める前に、何を確かめればよいですか?
施策が多すぎる会社の経営者に、今日から試していただきたいことが一つあります。
当社では、新しい取り組みを始める前に、自分に問いかけることを勧めています。
次に新しい施策を始めたくなったとき、「やろう」と口にする前に、その施策をどこまで来たら一旦終えるかを、経営者自身が一言で言えるかを試すことです。
言い方の型は、「〇〇まで来たら、一旦終えて結果を見る」です。
〇〇に入れる言葉に迷ったときは、「お得意先のどこまで届いたら」「営業担当者がどうなったら」と、問い方を変えてみてください。
言えたら、その言葉を添えて始めます。
言えなかったときは、言えるようになるまで、その施策を始めるのを待ちます。
待つのは、あきらめではありません。
営業担当者の一週間に、終わりのないもう一つを乗せないための間です。
確かめるのは、施策の良し悪しではなく、終わりを言えるかどうかだけです。
新しい施策の終わりの形を言おうとしたとき、社長は何に気づくのですか?
新しい施策の終わりの形を言おうとすると、経営者は、思っていたより手前の所で言葉が止まることがあります。
たとえば、セミナーから戻った経営者が、お得意先向けの勉強会を開こうと思い立ったとします。
まず出てくるのは、「3回開いたら、一旦終えて結果を見る」という言葉です。
回数で区切るのも、立派な決め方です。
3回開いたところで一旦終えれば、それが結果を見る区切りになります。
けれども、その区切りで結果を見て、続けるか一度閉じるかを決めようとすると、回数のほかに見る手がかりが要ることに気づきます。
勉強会の後、営業担当者がお得意先との話の中で何を言えるようになっていれば、続ける値打ちがあると言えるのか。
そこで言葉が止まります。
終わりの形を言おうとすると、区切りの先で何を見て判断するのかが、まだ決まっていないことが見えてきます。
あなたの会社では、今動いている施策の一つひとつに、一区切りにしてよいかを判断する手がかりが添えられていますか。
それとも、始めた日のことだけが記憶に残り、どこまで来たのかが分からないまま、次の施策の話が始まっていないでしょうか。
言葉が止まる場所を一つ見つけられたなら、施策の絞り込みの入口には、もう立っています。
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