「営業の成約達人」を生み出す仕組みの作り方

代表 乾切抜き 仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第520話 売上だけで営業を評価した年ほど、翌年の数字が怖くなる

「前期は売上が伸びたのに、今期は見る影もない」

「去年いちばん褒めた営業所が、今年いちばん落ちている」

「賞与まで弾んだのに、翌年の数字を見るのが怖い」

どれか一つでも口にしたことがあるなら、今期の営業が急に弱くなったわけではありません。

前期の評価をつけた時点で、売上の中身を読み違えていた可能性があります。

売上が伸びた年をそのまま営業の実力として評価すると、そのツケは決まって翌年に回ってくるということです。

売上だけで営業を評価すると、経営者はどんな罠に陥るのでしょうか?

営業の評価とは、担当者や営業所が一定の期間に上げた成果を測り、次の処遇や育成の判断に使うことです。

育成に使う以上、評価は本来、来期の営業を強くするための手段です。

ところが実際には、評価制度を整えた会社でも、売上を並べて順位をつけること自体が評価の目的になっているケースが少なくありません。

先日、ある経営者とこんなやり取りがありました。

社長:「うちは分かりやすく、売上の伸び率で営業所と担当者を評価しています」

コンサルタント:「その伸びた売上のうち、営業がこちらから仕掛けて増えた分はいくらでしょうか」

社長:「……そこまでは分けていません」

コンサルタント:「お客様の側に大きな工事があって、黙っていても注文が来た分は入っていますか」

社長:「えっ、それも営業の成果ではないのですか」

売上は、営業の実力を測るための材料の一つにすぎません。

それがいつの間にか、伸びたかどうかを確かめること自体が目的になり、何によって伸びたのかを誰も問わなくなっています。

これが「伸びた売上=営業の実力」という罠です。

特需や景気で伸びた分を見過ごしたまま評価をつけると、実力のついていない営業所に最高の点数をつけることになるからです。

特需で伸びた売上を営業の実力と見なすと、翌年に何が起きるのでしょうか?

特需で伸びた売上を営業の実力と見なした会社では、次の4つが順番に起き、1年遅れで数字に表れます。

① 伸びた営業所と担当者に、最高評価がつく

期末の会議で、前年比の伸び率が大きい順に営業所の名前が読み上げられます。

大口のお客様を担当していた担当者の賞与も、所長の評価も上がります。

伸びた理由を尋ねる人はいません。

② 仕掛ける仕事が止まっても、誰も気づかない

特需の年は、電話が鳴れば注文になります。

担当者は問い合わせへの対応と納期の調整で手一杯になり、既存のお客様に新しい品目を持ちかける時間も、取引のない会社を訪ねる時間も消えていきます。

それでも売上は伸びているので、会議で指摘されることはありません。

③ 特需が抜けた翌年、数字だけが落ちる

大口のお客様の大きな工事が終わると、その分の売上はそっくり消えます。

前の年に仕掛けを何も打っていないので、穴を埋める案件はどこからも出てこないのです。

営業所の数字は、特需の前の水準か、それより下まで落ち込みます。

④ 原因を「気の緩み」に求め、同じ評価を繰り返す

経営者は、去年あれほど伸びた営業所が落ちたのは、気が緩んだせいだと考えます。

「もっと回れ」と指示は出しても、何を仕掛ければよいのかは示さないまま、次の特需が来た年にまた同じ営業所を褒めることになります。

評価が実力を育てるどころか、特需を待つ営業を褒め続けているということです。

【実録事例】前年に売上が伸びた営業所は、なぜ翌年に数字を落としたのでしょうか?

建設会社向けに建設機械のレンタルを行う会社で、当社が関わった事例です。

賞与を弾んだ前期

この会社は、地域ごとに営業所を置いています。

前期、A営業所の売上が前年から大きく伸びました。

社長は所長と、大口のお客様を担当していた担当者を最高評価にし、賞与を弾みました。

売上がほぼ横ばいだったB営業所は「伸びていない営業所」とされ、評価の会議でも話題に上りませんでした。

翌期に入って、A営業所の大口のお客様が請け負っていた再開発工事の現場が、工期を終えました。

A営業所の売上は、伸びる前の前々期の水準まで一気に落ち込みました。

社長は所長を呼び、「去年の勢いはどこへ行ったのか、気が緩んでいるのではないか」と問いただしました。

担当者の答えは、「去年と同じように回っています」でした。

そう、その言葉は嘘ではなかったのです。

内訳を開いた翌期

当社が最初にお願いしたのは、前期の売上増を、営業所ごとに中身で分けてもらうことでした。

中身は、まるで違いました。

A営業所の伸びのほとんどは、大口のお客様が請け負った再開発工事一件の特需でした。

既存のお客様に新しい品目を持ちかけた増販も、取引のなかった会社を開いた増客も、ほとんど出ていなかったのです。

横ばいだったB営業所は、特需が一件もないなかで、地場の工務店や土木会社を数社新しく開き、既存のお客様にも発電機や仮設の事務所などを追加で借りてもらっていました。

B営業所が横ばいに見えたのは、前々期にあった大口の案件が前期に終わり、その穴を増販と増客で埋めていたからです。

伸びた営業所が強く、横ばいの営業所が弱いという見立ては、まるごと逆だったということです。

売上が伸びた年ほど、営業の実力はいちばん見えにくくなっていたのです。

注文が向こうから来る年ほど、担当者はこちらから仕掛ける仕事をしなくなり、それが数字の陰に隠れてしまうからです。

そこで、評価の見方を次の3つのステップで変えました。

ステップ1:前期の売上増を、特需・増販・増客の3つに分ける

営業所ごとに、前期の売上増を「特需・環境要因」「増販」「増客」の3つに分けて書き直しました。

当社では、売上の増え方を、問い合わせを受けて動く受動的営業(今すぐ客)と、こちらから仕掛ける能動的営業(そのうち客)に分けて整理しています。

特需は前者に入り、評価の欄に載せるのは後者、つまり既存のお客様への直接アプローチによる増販と、新しいお客様を開く間接取組の施策による増客です。

ステップ2:個人と営業所の評価に、増販と増客の欄を並べる

評価制度そのものは作り直さず、担当者一人ひとりの評価と営業所の評価の両方に、売上とは別の欄を設けました。

増販の金額と、増客の社数です。

特需で伸びた分は評価から消さず、別の欄に分けて書き、何によって伸びたのかが一目で分かるようにしました。

ステップ3:会議の報告を、増販と増客から始める

月次の営業会議では、各営業所が売上より先に、どのお客様に何を仕掛け、増販と増客がどれだけ動いたかを報告する順番に変えました。

さらに四半期ごとに経営幹部の会議を開き、営業所ごとに「何ができて、何ができていないのか」を確かめて、次に何をするのかを決めることにしました。

半年ほどで、A営業所からも、特需のない月に工務店を開きに行く計画が出てくるようになりました。

社長は、分け直した前期の紙を見ながら、こう話されました。

「去年、私が褒めていたのは営業所の力ではなく、現場の工期だったんですね」

売上が伸びたのに、翌年の数字を見るのが怖い——そう感じているなら、評価の物差しを見直す時期に来ているのかも知れません。

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売上が伸びた年ほど、営業の実力が見えにくくなるのはなぜでしょうか?

売上が伸びた年ほど営業の実力が見えにくくなるのは、売上という数字が、営業の力とお客様の側の事情を区別せずに足し合わせてしまうからです。

空港の動く歩道を思い浮かべてみてください。

動く歩道に乗っていると、誰でも速く歩いているように見えます。

本来の歩く速さが分かるのは、終点を過ぎてからです。

特需は、この動く歩道にあたります。

そして翌年は、その終点です。

動く歩道の上で測った速さを実力として評価すると、終点を過ぎた途端に「急に遅くなった」と慌てることになります。

実際には遅くなったのではなく、もとの速さに戻っただけです。

評価の本当の使い方は、動く歩道に乗っている年でも、自分の力で歩いた分を取り出して見ることにあります。

営業で言えば、それが増販と増客です。

営業所の実力とは営業担当者の営業能力が上がっていることであり、その営業能力の向上にいちばんつながるのが、増販・増客という考え方だからです。

営業の評価では、売上の横に、増販と増客の増え方を必ず並べて見る必要があります。

営業の評価を売上以外で見直すには、明日から何をすればよいのでしょうか?

営業の評価を売上以外で見直す一歩目として、前期いちばん売上が伸びた担当者を1人だけ選んでください。

紙を1枚用意し、左から「特需・環境要因」「増販」「増客」の3つの欄をつくって、その担当者の前期の売上増を振り分けていきます。

振り分けの基準は1つだけです。

こちらから仕掛けて増えたのか、向こうから来て増えたのかです。

既存のお客様に担当者のほうから新しい品目を持ちかけて増えた金額は、増販の欄に書きます。

取引のなかった会社を新しく開いて増えた金額は、増客の欄に書きます。

問い合わせを受けて増えた分や、お客様の大きな工事で自然に増えた分、景気で増えた分は、特需・環境要因の欄に入れます。

3つの欄に分けてみると、伸びた売上のうち営業の力で増えた分がどれだけあったのかが、初めて見えてきます。

ただし、やってみると、すぐに手が止まるはずです。

売上の数字は手元にあっても、どれが仕掛けて増えた分なのかは、紙の上だけでは埋まらないからです。

担当者に「この増えた分は、こちらから持ちかけたものですか」と一件ずつ聞かないと、欄は埋まりません。

そして1人分を書き終えたとき、もう一つのことに気づくと思います。

ほかの担当者にも、ほかの営業所にも、来期にも、同じことを続ける形が社内にないということです。

1枚の紙で終わらせないためには、担当者から聞いた話を営業所どうしで気づきとして共有する場づくりが要ります。

個人の評価と営業所の評価は、売上とは別に何で見ればよいのでしょうか?

個人の評価と営業所の評価は、どちらも売上とは別に、増販と増客がどれだけ増えたかで見ていきます。

個人では、今期その担当者が増販と増客にどれだけ寄与したのかを見ます。

営業所では、営業所として増販と増客がどれだけ上乗せになったのかを見ます。

そのうえで、事実を観て、仕掛けを考え、年間の計画に落とし、実行して振り返り、成功と課題をもとに計画を直すという回し方を、営業所ごとに四半期単位で確かめていきます。

一番の落とし穴は、単純に売上が上がっていることだけで営業の評価をしてしまうことです。

あなたの会社では、前期の売上増のうち、増販と増客がそれぞれいくらだったのかを答えられるでしょうか。

それとも、伸び率の順位だけを見て賞与を決め、特需が抜ける翌年のことは考えないままになっていないでしょうか。

1人分を分けて書き出した3つの欄は、翌年の数字を怖がるための材料ではなく、来期どこに仕掛けるかを営業所で話し合う最初の材料になります。

その話し合いを毎期続けるには、評価と会議と日々の行動をひと続きにする形が要ります。

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