「営業の成約達人」を生み出す仕組みの作り方

代表 乾切抜き 仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第521話 同じ商品を売っているのに、営業によって成約率が倍も違う理由

「同じ商品を売っているのに、なぜあいつだけ決まるんだ」

「一番決める営業のやり方を、全員に真似させている」

「それなのに、ほかの営業の成約率は上がらない」

もし、あなたの会社の営業会議でこんな言葉が出ているなら、少しだけ立ち止まってください。

成約率の差を「腕の差」と読んだ瞬間から、経営者の打つ手は、手本の選び方も、全員に広げるものも、すべて逆向きに回り始めます。

一番決める人を手本にするほど、ほかの営業が売れなくなっていく会社は、実は珍しくありません。

成約率の高い営業のやり方を、全員に真似させてもよいのでしょうか?

成約率とは、見積りや商談に進んだ案件のうち、受注に至った案件の割合(受注件数÷商談件数)のことです。

同じ商品なのに、この数字が営業によって倍も違うと、経営者はまず一番高い人のやり方を全員に広げようとします。

ある社長と私との会話です。

社長「うちで一番成約率が高い営業の商談を型にして、全員に配りました」

私「配ってから、ほかの方の成約率はどうなりましたか」

社長「それが上がらないので、型どおりにやれているかを、同行して確かめています」

私「営業会議で確かめているのは、決まったかどうかですか、それとも型どおりにやったかどうかですか」

社長「……言われてみると、この半年は、型どおりかどうかばかり見ていました」

ここに、成約率の高い人に全員を揃えようとする会社がはまる、「一番に揃える」という罠があります。

型は本来、手段だったはずです。

それがいつの間にか「型どおりにやったか」の確認自体が目的になり、なぜ決まらなかったのかを誰も問わなくなります。

手段の目的化は、手本の選び方を一度も疑わないところから始まります。

問題は型の出来ではなく、どの成約率を見て手本を選んだのかという、その一点にあるということです。

成約率トップの商談を型にして配ると、現場で何が起きるのでしょうか?

成約率トップの営業の商談を型にして全員に配ると、現場では、型が売上を削る4つの連鎖が順番に起こります。

① 一番高い数字が、そのまま手本になる

月末の営業会議で担当者別の成約率が配られると、経営者の目は、自然と一番上の数字に吸い寄せられます。

その数字がどんな案件から生まれたのかは、一覧のどこにも書かれていません。

数字の中身を問わないまま、手本が決まってしまうのです。

② 手本の商談が、全員の型として配られる

一番決める営業の進め方が書き出され、「初回で見積りまで出す」「2回目で決める」といった手順が、全員の決まりごとになります。

配った日、経営者は「これで全員が決められる」と安心します。

③ 型が合わない商談から、先に崩れる

こちらから声をかけた商談で、まだ買うつもりのないお客様に初回から見積りを出すと、「今は考えていないので」と話が終わってしまいます。

決まらなかった理由を問われた営業は、「型どおりにやりました」と答えるしかありません。

④ こちらから声をかける先が、減っていく

型どおりにやっても決まらない経験が重なると、営業はこちらから声をかける先を減らし、お客様から来る案件を待つようになります。

成約率を上げるために配った型が、会社の新しい案件を減らしていくのです。

【実録事例】成約率が倍違った二人の営業、差の正体は何だったのでしょうか?

成約率が倍違った二人の営業の話を、当社がご支援した法人向けの卸売業の事例でご紹介します。

この会社では、全員が同じ商品を同じ価格表で売っています。

6割の型を配った半年

Aさんは、得意先から電話やFAX、Webで入ってくる注文や引き合いを受ける窓口役を、長く務めてきた営業です。

Bさんは、担当エリアの取引先を回り、新しい使い方や他社品からの切り替えをこちらから持ちかけて、案件を起こしています。

月次の一覧では、Aさんの成約率が6割、Bさんが3割でした。

社長はAさんの商談を型にまとめ、「引き合いには即日で見積りを出し、2回目の訪問で決める」という進め方を全員に配りました。

型どおりに初回で見積りを出したBさんの商談は、「今はまだ考えていない」で止まるようになり、成約率は3割から2割台に落ちました。

社長は「型どおりにやれていない」と、Bさんへの同行を増やしていきます。

半年が過ぎても、数字は戻りませんでした。

成約率を二本に分けた営業会議

転機は、当社が営業会議で投げかけた「その6割は、どこから始まった案件ですか」という問いでした。

型を配る前の半年分の案件を、「お客様からの問い合わせで始まったもの」と「こちらから声をかけて始まったもの」に分けて数え直しました。

並べてみると、景色が一変しました。

問い合わせで始まった案件の成約率は、AさんもBさんも7割前後でした。

差は、ほとんどありません。

こちらから起こした案件では、Aさんが1割台、Bさんが3割でした。

Aさんの案件は大半が問い合わせ、Bさんの案件は大半がこちらから起こしたもので、足し合わせた一本の成約率に倍の差が出ていたということです。

社長「えっ、差は腕ではなくて、案件の生まれ方だったんですか」

一番成約率が高い人のやり方は、一番そのまま広げてはいけないやり方でした。

Aさんの型は顕在の案件を決めるための型であり、潜在の案件に持ち込めば、お客様の気持ちが追いつく前に見積りが届いてしまうのです。

この会社が取り組んだのは、次の3つのステップです。

ステップ1:全員の成約率を、始まり方で一度だけ数え直す

当社からお願いしたのは、営業全員の案件を同じやり方で一度だけ数え直し、一人ひとりに2つの成約率を返すことでした。

新しい管理表は作らず、手元の見積り控えに印を付けていく作業で、半日もかからずに終わっています。

ステップ2:こちらから起こして決まった案件を、本人に語ってもらう

Bさんがこちらから起こして決まった案件を3件選び、初回の訪問で何を聞いたのかを語ってもらい、社長が書き出しました。

出てきたのは商品の説明ではなく、「今の使い方で手間がかかっているのはどこか」といった、お客様がまだ口にしていない悩みや願望を引き出す質問でした。

ステップ3:手本を2本立てにし、学ぶ相手を若手に選ばせる

手本をAさんとBさんの2本立てにし、若手には「どちらの案件で、誰から、何を学ぶか」を自分で決めてもらいました。

欲求がはっきりしている今すぐ客の案件では、Aさんから真の悩みを聞き出す聞く技術を学び、そこに提案力を重ねていきます。

欲求にまだ気づいていないそのうち客の案件では、Bさんから質問技術と、購入までの道筋を組み立てる仮説構築力を学びます。

お客様の状態によって、使う技術そのものが違うのです。

半年後、若手の一人がこちらから起こした案件で、初めての受注を取りました。

社長はいま、こう振り返っています。

「6割の営業を手本にしていたつもりが、手本にしていたのは6割の問い合わせでした」

「一番決める営業を真似させているのに、ほかの営業の成約率が上がらない」という状態は、手本の選び方と学ぶ順番を変えれば抜け出せます。

その選び直し方と、誰でも売れる営業の仕組みへ組み込むまでの手順を、無料レポートにまとめています。

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同じ商品なのに、営業によって成約率がばらつくのはなぜでしょうか?

同じ商品なのに営業によって成約率がばらつく理由は、多くの場合、腕の差ではなく、その営業が抱えている案件の生まれ方の差にあります。

成約率には、お客様から来た案件を決める「こなす側の成約率」(顕在)と、こちらから需要を起こしていく「仕掛けの成約率」(潜在)の2つが混ざっているからです。

釣りにたとえると、分かりやすいかも知れません。

釣り堀には放流された魚が餌を待っていて、竿を垂らせば、高い確率で釣れます。

沖釣りでは、潮を読み、魚のいる場所を探すところから始めなければ、一匹も釣れません。

釣り堀の釣果と沖釣りの釣果を足して一つの数字にすれば、名人に選ばれるのは、たいてい釣り堀にいる時間が長い人です。

その名人のやり方を沖に持ち込んでも、魚はかかりません。

釣り場が違うからです。

そう、一本の成約率で手本を選ぶのは、釣り堀と沖の釣果を足して名人を決めるのと同じです。

当社では、本当の営業の力が表れるのは、沖釣りにあたる仕掛けの成約率のほうだと考えています。

お客様が自ら具体的に話してくださる顕在の案件は、ルート営業の延長でも決まりますが、新しい気づきがなければ、最後は価格の比べ合いになります。

潜在の案件では、質問を通じてお客様がまだ気づいていない悩みや願望に気づいていただくので、価格で比べられにくくなります。

種まき営業で潜在化の提案ができる営業が増えるほど、その会社は価格に頼らずに売れる、強い営業組織に近づいていきます。

成約率は人を並べる数字ではなく、どの案件で誰の技術が効いているかを見つける道具として使って、はじめて仕組みになります。

ここ、大事なので、もう一度言います。

成約率のばらつきを「腕の差」と読むか「案件の生まれ方の差」と読むかで、手本も、全員に広げるものも、まるで変わります。

成約率の差を正しく読むために、明日の営業会議で何をすればよいのでしょうか?

成約率の差を正しく読むために、明日の営業会議で経営者にやっていただきたいことを、1つに絞ってお渡しします。

社内で一番成約率が高い営業の、直近で決まった案件を1件選び、会議の場で本人に2つのことを聞いてください。

1つ目は、「この案件は、お客様から声がかかったものですか、こちらから声をかけたものですか」という問いです。

2つ目は、「最初に会ったとき、お客様に何を聞きましたか」という問いです。

答えは本人の言葉のまま、ホワイトボードに書き出されることをお勧めします。

問い合わせの案件なら納期や数量の確認が中心になり、こちらから起こした案件なら、お客様の困りごとを引き出す質問が出てくるはずです。

同じ「決まった1件」でも、どちらの成約率に入るかで学べる中身が違うことが、その場の全員に見えます。

この1件の問いかけが、成約率の数字を気づきの共有に変える、いちばん小さな場づくりです。

やってみると、おそらく1件では足りないことに気づくはずです。

案件の始まり方がどこにも残っておらず、この問いを毎回の会議に置く場所もないことが、はっきりするからです。

営業の再現性を高めるには、誰の成約率を手本にすればよいのでしょうか?

営業の再現性を高める手本は、成約率が一番高い人ではなく、どの案件の成約率が高い人かを見分けて選ぶものです。

手本は、一人ではありません。

こなす仕事の成約率と仕掛ける仕事の成約率を分けて見れば、若手は誰の背中を追えばよいのかを、自分で選べるようになります。

あなたの会社では、成約率を見て「誰が、どちらの案件で強いのか」まで確かめていますか。

それとも、一番上の数字の人を手本にして終わっていないでしょうか。

明日の会議で1件を聞いてみれば、その違いが、自分の会社の案件の中に見えてくるはずです。

その気づきを一度きりにせず、毎回の商談と営業会議に組み込む形が、次に必要になります。

「同じ商品を売っているのに、なぜあいつだけ決まるのか」という疑問は、手本を選び直すための入口です。

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