「営業の成約達人」を生み出す仕組みの作り方

代表 乾切抜き 仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第513話 営業推進部を置いて1年、増えたのは会議と資料だけだった

「営業推進の担当を決めたのに、売り方は去年と何ひとつ変わっていない」

「会議は毎月やっているし、資料も揃っている。それでも数字は動かない」

「推進部が作った進捗表が、現場では埋めるだけのものになっている」

この1年で増えたものを、正直に数えてみてください。

月次の営業推進会議、行動計画の様式、案件の進捗一覧、提案資料。

形式は、たしかに揃いました。

ところが商談で交わされている言葉だけが、1年前とほとんど同じままだったりします。

今回お伝えするのは営業推進の定義ではなく、定義どおりに部署を置き、会議を回した会社で、その1年後に何が起きるのかという話です。

一つでも心当たりのある経営者は、最後まで読んでみてください。

経営者が陥る「配れば伝わる」という罠

先日、ある経営者から相談を受けました。

「営業推進の課を作って1年、専任の課長も置いたのに、営業所の動きが変わらないんです」

私はこう聞き返しました。

「その課は、この1年で現場に何を配りましたか」

「様式と資料ですね——行動計画の様式、案件の進捗表、それに月一度の推進会議です」

「では逆に、その課はこの1年で、現場から何を受け取りましたか」

経営者は黙り、数秒おいて「……数字は上がってきています」とだけ答えました。

そう、ここに落とし穴があります。

営業推進を「現場に何かを届ける仕事」だと定義した瞬間、その部署の成果は配った量で測られるようになります

様式を作れば仕事をしたことになり、会議を開けば推進したことになる、ということです。

ところが手段は数えやすく目的は数えにくいので、半年もすれば、数えやすいほうが仕事の中身になっていきます。

「乾先生、また当たり前のことを言っていますね」という声が聞こえてきそうですね。

ただ、当たり前だと分かっていることほど、社内では止められません。

作った様式を減らそうと言い出せる人が、その会議の中にいないからです。

会議が増えるほど動かなくなる「四つの連鎖」

営業推進の部署を置いた会社が停滞するときには、決まった順番があります。

①推進の部署が「配る部署」になる

新設された部署が最初に取りかかるのは、たいてい様式づくりです。

何をすべきかが自分にも見えていないので、まず形から入ります。

悪意はまったくなく、真面目な人ほど着任から3ヶ月で立派な一式を作り上げます(完成度が高いほど、後で誰も手をつけられなくなります)。

②会議の議題が「先月比」で埋まる

配った様式は当然その数字を確認する場を必要とし、生まれた月次の推進会議は、議題が前月比と未達理由の説明で埋まっていきます。

営業所の拠点長は、会議の前日に数字の辻褄を合わせるのが仕事になります。

③現場が様式を「埋めるもの」として扱う

月末の夕方、営業担当が進捗表を開き、思い出しながら訪問件数を入れ、確度の欄を「B」にして送信します。

そこに書かれているのは、実際に起きたことではなく、会議で説明しやすい形に整えられた記録です。

④経営者だけが、商談の中身に気づく

そして経営者が商談へ同行した日、価格と納期の話だけで終わり、会議で決めた新しい切り口が一度も出ていないという事実に出会います。

この四つは、どこかで断ち切らない限り毎年繰り返されるということです。

【実録事例】法人向けの機器販売・保守業で起きたこと

配っていた一年

法人向けの機器販売・保守業を営むA社は、複数の営業所を持ち、販売と保守契約の両輪で売上をつくっています。

社長は1年前、営業所でバラバラだった売り方を揃えようと、本社に営業推進の担当を置きました。

1年で整ったものは、たしかにありました——月次の推進会議、行動計画の様式、案件の進捗一覧、提案資料一式(どれも見栄えのする出来でした)。

しかし当社が最初にその推進会議へ同席したとき、90分のほとんどが前月比と未達理由の説明で終わり、お客様の名前は一度も出ませんでした。

推進担当の課長が、会議のあとに漏らした言葉が印象に残っています。

「資料は全部そろっているんですが、誰も使っていないんですよね」

決定打は社長自身が同行した日で、若手が保守契約の更新を提案する場面で話していたのは、価格と作業日程のことばかりでした。

3ヶ月かけて練り上げた「保守の履歴から次の設備投資を提案する」という切り口は、一言も出ませんでした。

増えたのは会議と資料で、変わらなかったのは商談の中身でした。

聞きに行った三ヶ月

転換は、社長が問いの向きを変えたところから始まりました。

それまで毎月聞いていた「今月は現場に何を配ったか」を、「今月は現場から何を受け取ったか」に変えたのです。

推進課長は答えられませんでした。

当社がA社に提案したのは、三つのことです。

一つ目は、配布物を増やすのを止めることです。

新しい様式も資料も3ヶ月はつくらないと決め、空いた時間は営業所で話を聞くことに充てます。

二つ目は、推進会議の冒頭を差し替えることです。

決まった案件を1件だけ取り上げ、担当者本人になぜ決まったのかを語らせます(当社では「一件話」と呼んでいます)。

三つ目は、営業方針を数字ではなくお客様の状態で言い直すことです。

「更新率を上げる」という書き方をやめ、「更新の時期に、次の設備の相談ができている状態にする」と書き換えました。

最初の月は、担当者が「たまたま予算が残っていたので」と答えて終わりました。

二ヶ月目、別の営業所の担当者が「それ、うちのB社の件と同じ流れですよ」と割り込みます。

そこから会議の空気が変わりました。

三ヶ月目には、誰も見ていない欄が特定でき、進捗表の項目が二つ減りました。

資料が増えるのが止まり、代わりに会議で名前の出るお客様が増えていきました。

半年後、社長がこう言いました。

「数字が動く前に、会議の中身が先に変わっていましたね」

増えたのは会議と資料だけで、商談の中身が去年と同じままなら、足りないのは推進の熱量ではなく、営業方針を現場の言葉へ置き換える手順です。

当社が支援先と実際に進めているその手順は、無料レポートにまとめてあります。

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逆説的な真実——ダイヤを組み直しても、電車は同じ時刻に出ていく

営業推進の部署がやっていたことは、鉄道でいえばダイヤ改正で、時刻表を組み直し、接続を良くし、きれいに印刷して各駅へ配ることでした。

たしかに、それは重要な仕事です。

ただ、運転士に「なぜこの時刻に変えたのか」が伝わっていなければ、電車はこれまでどおりの感覚で発車します。

時刻表の完成度と、実際の運行は、まったく別の話です。

時刻表は完成し、配布も済み、説明会も開いた——そこまでやれば、あとは現場の実行力の問題だと考えてしまいます。

一方、運転士が知りたいのは新しい時刻ではなくその理由で、それが分からないまま時刻だけを渡されれば、人は納得できる従来のやり方に戻ります。

ここに逆説があります。

営業推進を強めようとして会議と資料を増やすほど、現場は推進される対象として扱われていると感じ、考えることをやめてしまいます。

逆に、配るのを止めて聞きに行くと、現場のほうから時刻表の中身を語り始めるのです。

営業推進の成果を分けるのは、何をするかではなく、どんな考え方を持っているかということです。

処方箋——今週の会議で、決まった一件だけを聞く

今日からできることを、一つだけお伝えします。

今週の営業推進会議の冒頭で、先月決まった案件を1件だけ取り上げてください。

そして、その案件を担当した本人に、こう聞きます。

「この一件で、お客様の反応がどこで変わりましたか」

一つ目の条件は、聞く対象を自社の行動ではなく、お客様側の変化に限定することです。

「何回訪問したか」では報告になりますが、「相手の反応がどこで変わったか」なら再現できる話になります。

二つ目は、数字の報告をその後ろに回すことです。

先に数字を扱うと、場の空気が説明と弁明で固まってしまうからです。

三つ目は、経営者がその場で評価しないことです。

「それは良かった」も「もっと早く動けたはずだ」も飲み込んで、全員でただ聞くことに徹します。

所要時間は10分で構いません。

用意するものもなく、資料を1枚もつくらずにできるというところが大事です。

「えっ、たったそれだけですか」という反応を、実際によくいただきます。

やってみると2回目か3回目で気づかれるはずです——良い話は出たけれども、それを来月に残す形が社内にない、ということに。

そう、そこから先が本番です。

聞いた話を誰がどこに残し、それをどうやって次の営業方針に反映するのか。

そこまで組み立てて、営業推進はようやく仕組みになるということです。

増えたのは会議と資料だけ、で終わらせないために

営業推進の部署を置いたこと自体は間違っておらず、問題は、置いたあとに測る対象が「配った量」にすり替わることです。

様式の数でも、会議の回数でも、資料の厚さでもありません。

測るべきは、商談で交わされる言葉が去年と変わったかどうかだけです。

あなたの会社の営業推進は、現場に何かを配る仕事になっていますか。

それとも、現場から受け取ったものを、次の営業方針に変える仕事になっているでしょうか。

まずは明日の会議で、一件だけ聞いてみてください。

その10分で出てきた話をどこにも残せないと気づいたとき、次に何をつくるべきかが見えてきます。

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考え方の軸と、営業の戦略・戦術をどうつなぐかまで書いてありますので、参考になるかも知れません。

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追伸)配るのを止めるのは、増やすよりも勇気が要ります。ただ、中途半端に両方をやると、現場はそのどちらも本気ではないと受け取ります。