「営業の成約達人」を生み出す仕組みの作り方

代表 乾切抜き 仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第502話 なぜ、頑張る営業ほど間違った方向に突き進むのか。中小企業の視座の盲点

「うちの営業は、本当によく動いてくれている」

「訪問件数も増えた。トークも磨いた。ツールも新しくした」

「なのに、なぜか、数字だけがついてこない」

もし、あなたがそう感じているなら、その違和感を軽く見てはいけません。

なぜなら、その状態こそが、多くの中小企業が気づかないうちに陥っている、いちばん危険な状態だからです。

頑張っていないのなら、話は簡単です。

頑張ればいい。

ところが、みんなが確かに前へ進んでいるのに、なぜか目的地に近づいていない。

この「一生懸命なのに、報われない」状態は、放置するほど、現場から静かに気力を奪っていきます。

このコラムでは、その正体を明らかにしていきます。


セクション1:経営者が陥る「手前の努力で安心してしまう」という罠

先日、ある製造業の社長さんから、こんな相談をいただきました。

「営業の強化には、ずっと取り組んできたんです。トーク研修もやりました。パンフレットも刷新しました。営業支援システムも導入しました。でも、思ったほど売上が伸びないんです

私は、こうお尋ねしました。

「社長、その取り組みは、どこへ向かうために始めたものですか」

社長は、少し戸惑ったように答えられました。

「どこへ、というと……営業力を上げるため、ですよね」

「では、営業力が上がった先に、御社はどんな会社になっていたいのでしょうか。どの顧客層を、どれだけ増やしたいのか。その方向は、決まっていますか」

社長は、しばらく黙り込まれました。

ここに、多くの経営者が陥る落とし穴があります。

私はこれを「手前の努力で安心してしまう罠」と呼んでいます。

営業トークの改善、ツールの刷新、システムの導入。これらは、すべて「取り組みやすい」という共通点があります。

目に見えるし、すぐに着手できる。

だからこそ、多くの会社がここに力を注ぎます。

けれど、それらは本来、「ある目的地にたどり着くため」の手段だったはずです。

ところが、手段そのものに取り組むことが目的になってしまう。

手前の、取り組みやすいことをやり遂げただけで、「うちは営業改革をやっている」と安心してしまうのです。

あなたの会社では、営業の武器を磨くことが、いつのまにか目的になってはいませんか。

セクション2:努力が空回りする「4つの段差」

なぜ、頑張っているのに前に進まないのか。その裏には、順番に積み上がっていく4つの段差があります。

① 「取り組みやすいこと」から手をつけてしまう

新しい期が始まる。「今年こそ営業を強化するぞ」と意気込む。

多くの会社が、営業トークの見直しや、新しいツールの準備から始めます。

着手しやすく、成果も見えやすいからです。

② 個人の頑張りに依存し始める

武器を整えたら、次は「使いこなせる人」を増やそうとします。

できる営業マンのやり方を若手に教え、一人ひとりの腕を上げようとする。

個人の力は、確かに少しずつ上がっていきます。

③ チームでバラバラに動き出す

個人の力が上がると、それぞれが自分の判断で動き始めます。

ある営業マンは慣れた既存客を回り、別の営業マンは飛び込みに精を出す。

みな一生懸命ですが、誰がどの顧客に、何のために向かっているのか、全体像は誰も把握していません。

④ 気づけば、目的地とずれた場所にいる

期末が近づいたある日、ふと気づくのです。

あれだけ動いたのに、狙っていた顧客層はほとんど増えていない。

利益率の低い受注ばかりが積み上がっている。

一人ひとりは前進していたのに、組織全体としては、目指していた場所とは違う方向へ進んでいた。

この4つの段差に共通しているのは、「方向を確認する視座を持った人が、誰もいなかった」という一点です。

セクション3:【実録事例】ある製造業が経験した「地を這う時期」と「空を仰いだ日」

金属製品を手がける、ある製造業の会社での話です。

地を這う時期

この会社の営業部は、とにかくよく動く組織でした。
営業マンたちは朝早くから車を出し、一日に何件も客先を回る。

訪問件数は業界でも上位。

社長は、この「動く営業部」を誇りに思っていました。

ところが、売上は横ばいなのに、利益率が年々下がっていく。

営業マンたちは疲弊し、「これ以上、何を頑張ればいいのか」という空気が漂い始めていました。

私が営業会議を見学すると、交わされていたのは「A社に3回訪問しました」という報告ばかり。

 誰も、「なぜその顧客に行くのか」を語りません。

みな地面ばかりを見て、目の前の一本の木を必死に切り倒し続けている。

そんな光景でした。

営業部長に「今年、どの顧客層を伸ばす計画ですか」と尋ねると、こう返ってきました。

「計画、というか……全体の底上げを、と思っています」

方向が、決まっていなかったのです。

空を仰いだ日

私は営業部長に、こうお願いしました。

「一度、いちばん高いところから、自分たちの営業を眺めてみませんか」

直近3年の全取引先を、一枚の紙に書き出してもらいました。営業マン個人の頭の中にあった情報を、机の上に並べたのです。

すると、訪問件数の多い顧客ほど利益率が低いことが分かりました。

「会いやすい」既存の小口顧客ばかりを回り、本当に伸ばすべき高付加価値の顧客層には接点を持てていなかったのです。

一本一本の木は確かに切っていた。

けれど、道は目的地とは違う方向に伸びていました。

営業部長は、紙を見つめて、こう漏らしました。

「私たちは……動いてはいたけれど、どこに向かっているか、誰も見ていなかったんですね」

そこから、この会社が取り組んだのは、次の3つでした。

第一に、高い視座から「行き先」を決めました。

全営業マンを集め、「来年、どの顧客層を、どれだけ増やすのか」を一枚の絵にしたのです。

第二に、その方向を確認し続ける役割を置きました。

営業部長が、月に一度、高い木に登る役。

個々の行動が全体の方向とずれていないかを俯瞰する役割を担うことにしました。

第三に、営業会議を「報告の場」から「方向を確かめ合う場」に変えました。

「何件行ったか」ではなく、「決めた方向に沿っているか」を全員で話し合う場にしたのです。
半年後、社長がこう言ってくださいました。

「営業マンの数も、動く量も、前と変わっていないんです。変わったのは、みんなが同じ方向を見て、木を切るようになったことだけ。それだけで、こんなに景色が変わるとは思いませんでした」

利益率は着実に回復し始めていました。

セクション4:一本の木を切る前に、高い木に登れ

ここで、ひとつの例え話をさせてください。

山岳地帯に、目的地まで道路を通すプロジェクトを想像してみてください。

木を切り倒しながら、道を拓いていく仕事です。

多くの人は、まず「道具」を考えます。

斧よりチェーンソーの方が速い、と。

これは営業でいえば武器:独自の営業ツールやトークにあたります。

次に、「使い手」を育てます。

チェーンソーを持たせても、使いこなせなければ意味がない。

上手い人が初心者に教え、熟練者に仕立てていく。これは、個人の戦闘力を高めることです。

さらに、「現場の統率」を整えます。

個人が上手くなっても、バラバラに切っていては道になりません。

進捗をまとめる現場監督を置く。

これは、チームの戦闘力の営業マネジメントにあたります。

多くの会社は、ここまでで満足してしまいます。

道具もそろえた、使い手も育てた、チームもまとめた。もう十分だ、と。

けれど、本当に大切なのは、その先にあります。

現場監督が、一度、いちばん高い木によじ登り、目的地と拓いてきた道の方向を見比べる

すると、「あれ、少しずつ目的地とずれた方向に道を拓いていた」と分かったりします。

もし現場監督が高い木に登らず、地面ばかり見て「もっと速く切れ」と鼓舞していたら、道は伸びても、まったく違う場所へ続いていく。

苦労が、水の泡になるのです。

この「高い木に登る力」こそが、視座です。

視座が高まると、見えるものが変わります。

面から見るのと、木の上から見るのとでは、視点:どこに注目するかが変わり、視野:どこまで見渡せるかが広がります。

地面にいる作業員には、目の前の一本の木しか見えません。

しかし木の上に登った人には、道全体と目的地の方向が見えるのです。

営業も同じです。

武器を磨き、個人を育て、チームをまとめる。
それは大切です。

けれど、その前に。

あるいは同時に「どこへ向かうのか」という方向を見定める、高い視座を持った人が必要なのです。

そして、この現場監督の役は、一人で背負う必要はありません。

方向を描く人と、現場で木を切り進める推進力のある人。

この二つの役割が連携して初めて、道は目的地へまっすぐ伸びていきます。

大切なのは、どちらが偉いかではなく、同じ絵を見て連携できているかどうかです。

セクション5:処方箋——まず、木の上に登る人を一人つくる

では、明日から何をすればいいのか。たった一つに絞ります。

「木の上に登る人を、一人つくる」こと。

営業会議を、報告の場から、方向を確かめ合う「気づきの共有」の場に変えてください

「何件行ったか」を報告していた時間を、月に一度でいいので、「私たちは、どの顧客層に、何のために向かっているのか」を話し合う時間に変える。

この場づくりが、木の上に登る人を育てます。

いきなり全員の視座が高まる必要はありません。

営業リーダーが10人いれば、まず3人。

その3人が「方向」を語り始めれば、会議の空気は変わります。

一人が見えている景色を仲間に伝え、それを聞いた別の一人が自分も登ってみようと思う

この連鎖が組織を変えていきます。

視座を高めよう、という掛け声だけでは、誰も動きません。

「木の上に登って、方向を確かめる場」を、具体的に一つつくること。

それが、経営者にできる最も価値ある仕事です


まとめ

頑張っているのに報われない。動いているのに、前に進んでいる気がしない。

もし、あなたがそう感じているなら、それはあなたの会社の営業が怠けているからではありません。

むしろ逆です。

真面目に、必死に、目の前の木を切り続けているからこそ、方向のずれに気づけなくなっているのです。

足りなかったのは、努力ではなく、高さでした。

一度、木の上に登ってみてください。

地面にいたときとはまったく違う景色が見えるはずです。

どの顧客に向かうべきか、どこがずれていたのか、次にどこへ道を拓くべきか。

それが、見えてきます。

私たちは、その「木の上からの景色」を、多くの中小企業の経営者の方と共有してきました。

方向を見定め、視座の高い人材を育て、営業を「動く組織」から「進む組織」へと変えていく。その具体的な方法を、一冊の無料レポートにまとめています。

もし、あなたの会社の営業に、あの「一生懸命なのに、報われない」空気を感じているなら、ぜひ一度、手に取ってみてください。

無料レポートのお申し込みはこちら:https://www.inui-consulting.com/free-report
木を切る手を、少しだけ止めて。高いところから、自分たちの道を見つめ直す。その一歩を、今すぐ踏み出してください。