仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第175話 属人的営業の脱却と組織営業力の強化を混同して成果が出ない会社の末路
「乾先生、属人的営業から脱却して、営業スタッフ全員が同じ営業スタイルになることは無理ですよね」
自分の営業スタイルを確立して、人に教わることもなく叩き上げで営業責任者になられた方からよくいただく質問です。
この質問をいただくと、当社では、次の回答をしています。
「営業組織において、属人的営業の脱却は無理ですよ」
この回答を聞くと、叩き上げの営業責任者の方は、目を白黒させておられます。恐らく、違う回答を予想されていたのでしょう。
そして、「乾先生のコンサルティングでは、属人的営業の脱却を掲げているのに、無理とはどういうことですか、意味がわかりません」と続けて質問をされます。
ただ、この後、資料を用いてその理由を説明すると、納得をしていただくと同時に反省もしていただいています。
今回のコラムでは、属人的営業の脱却について当社がどのように考えているのか、その着眼点について話をさせていただきます。
着眼点なので、正解・不正解を言っているものでは、ありません。このような視点もあるという感じで聞いていただければ幸いです。
まずは、当社での属人的営業の概念図を以下に記します。
この図の言わんとすることは、理解できるでしょうか。
トップセールスのレベルを100点にすると、凡人レベルの60点は、営業戦略と営業戦術を「見える化」して、その見える化したものをトレーニング(訓練)すれば、誰でも60点レベルに到達することが出来ます。
ポイントは、営業戦略と営業戦術を「見える化」してトレーニング(訓練)をして振り返りのフィードバックの仕組みを持っているかだけです。
この仕組みが無い会社は、凡人レベルが60点ではなく40点になっています。凡人レベル40点の会社の特徴は、お客様の言われたことだけをこなす受動型の営業組織です。
凡人のレベルが40点から60点になるだけで、対前年比150%を達成することができます。
次に凡人の60点レベルから成約達人の80点レベルに到達するためには、3つのことが必要であると当社は考えています。
一つ目は、営業リーダーの考え方の軸づくりです。二つ目は、考えて行動する人材育成の場づくりです。この2つについては、コラムでも再三述べてきています。
そして、もうひとつ大事なことがあります。
コラム読者のあなたは、なんだと思われているでしょうか。
当社で考えているもうひとつは、営業スタッフが持っている個人のキャラを追加させるということです。
そう、「個人のキャラを追加させる」です。
話すことが苦手な方は、聞くというスタイルを構築します。
人間関係の構築が得意な方は、雑談力や接点の強化等のスタイルを構築します。
押しのセールスが得意な方は、クロージング力を全面に出したスタイルを構築します。
このように、成約達人のレベルになると、個人ごとに営業スタイルは異なってくるのが普通です。
故に、営業が属人的になると言われています。
ただ、ここで大事になってくるのが、凡人レベルに短期間で到達するために、「営業の仕組みの型」を会社として持っているかということです。
そう、「営業の仕組みの型」です。
57歳という若さで亡くなった歌舞伎役者の中村勘三郎さんが次の名言を残されています。
「若い人はすぐに型破りをやりたがるけれど、型を会得した人間がそれを破ることを『型破り』というのであって、型のない人間がそれをやろうとするのは、ただの『形無し』です。
天性のトップセールスの素質を持っている人は、型の習得は必要ないですが、凡人が何かを極めるには、型が必要であると当社は考えています。
そして、トップセールスの資質を持っている人は、50人に1人ぐらいです。
多くの方が凡人です。
それなのに、中小・中堅企業の営業リーダーは、凡人営業スタッフに基本の型を教えるのではなく、自分が習得している達人レベルの内容を教えています。
あのお客様は、ゴルフが趣味だから、ゴルフの接待を通じて、人間関係を構築しなければいけないというリーダーがいれば、ゴルフの接待の前に顧客の悩みを聞き出して価値提案の見込み探りが必要だというリーダーもいます。
当社では、上記の指導はどちらでも良いと考えています。それよりも、凡人の方が、営業の基本の型を習得しているかを重要視しています。
なぜなら、営業の基本の型を習得していないと、達人レベルの指導では、成果が生まれないからです。(ただ、指導内容が難しいと思われ、上司の権威性だけが維持されています)
これらのことから、属人的営業の脱却はできないが、成約達人レベルになるための、営業組織づくりのノウハウは必要であると考えています。
このような話をすると、凡人が60点レベルを構築できる仕組みは、営業管理システム(SFA)を導入しているので出来ていると答えられる会社様がおられます。
知っているだけではなく、営業管理システム(SFA)を導入しているので、出来ているということです。
では、本当にできているかを簡単に見抜く2つの着画点を紹介します。(当社がコンサル前にクライアントにヒアリングしている着眼点です)
この2つの着眼点とは、ゼロベースか積み上げ式になっているかという視点です。
ゼロベースとは、組織にノウハウが蓄積されず個人に蓄積されています。積み上げ式とは、組織にノウハウが蓄積されています。
組織として、積み上げ式になっているかを見抜くためには、「情報の使い方」と「時間の使い方」をどのようにしているかで分かってしまいます。
難しい言葉を使うと、「顧客情報管理」と「行動管理」です。
この2つが積み上げ形式でノウハウが蓄積されていれば、凡人営業スタッフを育成する仕組みができているといってもよいでしょう。
そして、「顧客情報管理」と「行動管理」には、量と質があります。
この量と質が常に蓄積されていれば、組織営業力を発揮することができます。
逆に営業管理システム(SFA)を単なる入力だけで活用ができていなければ、分かっているだけで出来ているにはなりません。
少しだけ、簡単な例を挙げて説明します。
以下の質問に数値で回答ができていれば、ノウハウが積み上げになっています。一度、試してみてください。
●顧客情報管理の量は、攻めると決めたランクの顧客数が何社増えたのか。
●顧客情報管理の質は、社内で決めた重点顧客情報の取得率が何パーセントアップしたのか。(重点顧客情報を訪問タイミングと決めたのなら、訪問タイミングがわかる情報をどれだけ取得できているか等)
●行動管理の量は、各月の訪問量(件数と軒数)は、基準値と比較して多いのか、少ないのか、また、その原因を語ることができるようになっているか
●行動管理の質は、種まき・育成・刈り取りのバランスは適正になっているか。見積もり獲得金額と訪問量のバランスが適正になっているか
上記は、あくまでも一例ですが、組織ノウハウが蓄積型であれば、上記の質問に営業リーダーは簡単に答えることが出来ることでしょう。
何故なら、凡人営業スタッフの営業成績をアップさせるためには、情報の使い方と時間の使い方を変えることが一番の早道だからです。
逆に上記の質問に答えられないということは、営業戦略と営業戦術を「見える化」しても、営業ノウハウは蓄積型ではなく、フロー型なので、凡人営業スタッフの成長レベルは遅いと言ってもよいでしょう。
少し長文になりましたので、多くは語りませんが、営業管理システム(SFA)の行動管理で、月間のカレンダーを社内で共有化して見える化を行い、行動の量と質を管理している会社をよく見かけます。
しかし、この時点で行動管理のノウハウは蓄積型ではなく、ゼロベースになっていることが確定になります。
行動管理は、月間ベースではなく、年間ベースで「見える化」したものになっていない限り、ノウハウは蓄積型にならないからです。
あなたの会社では、営業スタッフが凡人レベルに短期間で到達できる営業の仕組みの型はあるでしょうか。
そして、その営業の仕組みの型を実践することで、顧客情報管理と行動管理のノウハウはフローではなく、蓄積型になっているでしょうか。
今回のコラムが、自社の仕組みの振り返りの機会になれば幸いです。
追伸)属人的営業の脱却の概念図を見ていただくと、成約達人レベルの80点からトップセールスレベルの100点には、「人間力の器の形成」と書いています。
簡単に言うと人間力です。当社では、京セラの稲盛さんのように人としての達観はできていないので、人間力の器の支援はしておりません。
これが、成約達人レベルの支援はしているが、トップセールスマンの育成はしていない理由です。よく、トップセールスの育成はしていないのですかという質問に対して、「やっていません」と答えていましたので・・・。
