仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第498話 売上が伸び悩む会社の共通点:二代目経営者が知っておくべき「野放し経営」からの脱却法
「先代のやり方を変えたいのに、誰もついてこない。」
「右腕だと思っていた幹部が、自分の数字だけ追っている。」
「仕組みを作ったのに、気づけば元の木阿弥に戻っている。」
これは、二代目経営者が共通してこぼす壁の、リアルな声です。
先代から会社を引き継いだとき、駆け出しこそすれ、組織は思ったように動かない。
その直感は正しいのですが、「何がずれているのか」が見えず、手を打てずにいる経営者は少なくありません。
このコラムでは、二代目経営者が組織運営で陥りやすい「3つの罠」を整理し、そこから脱却するための実践的な処方箋をお伝えします。
セクション1 経営者が陥る「継承という名の呪縛」という罠
ある製造業の二代目社長との対話です。
「社長、先代から引き継いで数年がたちますが、正直、まだ会社が自分の根っこになっていない郷愁のようなものがあります。」
そうおっしゃる社長に、わたしはこう尋ねました。
「今、社内で一番大切にしていることは何ですか。」
「先代が積み上げた実績や慣例を大切にすることです。社内には「それがうちのやり方だ」という文化があるので、それを大切にしたいと思っています。」
この言葉に、二代目経営者が陥りやすい第一の罠が隠れています。
「先代のやり方を守ること」が、いつのまにか目的化しているのです。
先代のやり方を守ることは悪いことではありません。
しかし、「守ること」自体が目的になると、組織は「今の形を維持する」方向にエネルギーを使い始めます。
未来に向かって何を仕掛けるか、ではなく、現在の問題を処理することだけに組織が忙殺されていく。
これが「野放し経営」の出発点です。
先代の形を守るのか、未来を仕掛けるのか。その差が、組織の活気を分ける。
セクション2 組織が止まる「3つの落とし穴の連鎖」
二代目経営者が直面する壁には、実は共通した構造があります。
次の3つの落とし穴が連鎖することで、組織は膠着状態に陥っていきます。
①「野放し」と「自由奔放」を混同する罠
「ウチは風通しのよい会社なので、やり方は社員に任せています」とおっしゃる経営者に、必ず確認することがあります。
「将来のやるべき姿が明確で、そのやり方は社員に任せる」のが自由奔放です。
一方、将来の姿が不明確なまま、目前の現象対処だけに組織が忙殺されるのが「野放し」です。
見た目は似ていますが、組織の内実はまったく違います。
②「右腕」を成績だけで選ぶ罠
「年下で一番売れている彼をリーダーに抜擢したのですが、自分の数字だけを追っていて、組織全体を引っ張る感じがありません」
これは製造業の経営者から最も多く聞くことのひとつです。
右腕人材には「3か年戦略構築力」「マネジメント推進力」「営業現場問題解決力」の3つの能力が必要です。
成績がよい社員はこのうち3の「営業現場問題解決力」に長けていますが、経営者が本当に求めるのはマネジメント推進力です。
このミスマッチが、組織の中で不満を生み、結果として「右腕が機能しない」状態が続きます。
③「仕組み」だけ作って満足する罠
方針も仕組みも整った。
なのに、数か月後には元の木阿弥に戻っている。
この悪循環の原因は「仕組みの定着」が不十分なことにあります。
仕組みは作っただけでは機能せず、訓練と振り返りの「場づくり」があって初めて組織に根付きます。
この3つ目の落とし穴に完全に流れてしまうと、二代目経営者の車輪は空回りを続けます。 
セクション3 【実録事例】製造業が経験した「漂流の時期」と「軸が立つ瞬間」
「漂流の時期」:仕組みだけ作って空回りした2年間
地方都市の製造業で、先代から会社を引き継いだA社長のケースです。
先代社長は「人たらし」と言われるほど経験豊富な方で、熱心な指導力で組織を大きくしてきた方でした。
A社長は就任後、まず「仕組み化」に着手しました。
営業管理シート、営業プロセスの再整備、マニュアルの全面改訂。
就任一年目はツールが整い、気分も上向きでした。
ところが、二年目に入った頃から、A社長は混乱を覚えました。
ツールは整ったのに、現場の行動は何も変わっていない。
営業会議で使うシートは埋まっており、数字の報告だけが繰り返される日々が続きました。
社内において「新社長は道具作りが好き」という陰口さえ、耳に入るようになりました。
「漂流の時期」が始まっていたのです。
「軸が立つ瞬間」——逆説的な気づきと3つの転換
転機は、当社コンサルタントとの対話の中で生まれました。
「社長、仕組みと右腕に注力していますが、それより前に、社内に「方針」は共有されていますか。」
A社長は言葉を失いました。
「方針」と言われると、社内に向けて発信したことが一度もなかったことに気づいたのです。
彼がやってきたのは、仕組みの「形」を作ることだけでした。
そこから、A社長は次の3つのステップに取り組みました。
1「方針」の言語化:
「3年後に自社がどうあるべきか」を社内全員に言葉で伝え、ホワイトボードに書き出すことから始めた。
2右腕の再定義:
営業成績ではなく、「マネジメント推進力」を軸に右腕を再選定。
現場の能力より、組織を年間視点で引っ張れる人材かどうかを基準にした。
3定着の「場づくり」:
毎週1回、小さな成功体験を全員で共有する30分の機会を設けた。
反省ではなく、「今週、何がきっかけでうまくいったか」を言語化する場にした。
6か月後、A社長はこう語っていました。
「仕組みを作る前に、まず自分が期待する組織の姿を言葉にすることが先だったんですね。それがないと、仕組みは只の形になる。今はそれがよく分かります。」
セクション4 逆説的な真実:「継ぎ手」と「器」の話
陶芸の世界に、「継ぎ手」と「器」という言葉があります。
名工が作った器は、その形を完全に引き継いだだけでは完成品になりません。
新しい継ぎ手の手わざ、意志、そして独自の感性が注ぎ込まれたとき、器は初めて「今の時代の作品」となります。
組織も同じです。
先代が作った組織という「器」は、二代目がその形だけを守れば良いわけではありません
「3年後に何を実現するか」という方針を注ぎ込み、右腕をマネジメント推進力で選び、定着の場を設ける。
その3つが揃ったとき、器は初めて「二代目の作品」になります。
組織を変えようとする前に、ぜひ問いかけてみてください。「自分は、今の組織に何を注ぎ込んでいるか」と。
逆説的ですが、組織は「変えようとする」ことで変わるのではありません。
経営者自身が「方針」「右腕」「定着の場」の3つに本気で向き合ったとき、社内に「軸」が生まれ、組織は自走で動き始めます。
セクション5 処方箋:今日からできる「1つのこと」
たくさんの幹部を動かす前に、まずこの1つを試してみてください。
「3年後の自社の姿」を、言葉にして社内で共有する場を一度だけ設ける。
方針を文書化する、社内告知を出す、全体ミーティングを持つ。
そこまですぐに必要はありません。
まずは、午前中の30分、安心して話すことができる少人数の場で「これからどこに向かいたいか」を語ることから始めてください。
そこで生まれた言葉が、「方針」の原型になります。
社内に「現場から生まれた言葉」が流通し始めたとき、二代目の組織改革は本当の意味で動き出します。
「場づくり」とは、魔法のようなノウハウではありません。
経営者が自分の言葉で未来を語り、社内の話を聞く、その繰り返しの中から育まれるものなのです。
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二代目経営者が陥りやすい落とし穴を整理します。
1、「野放し」と「自由奔放」を混同する罠:方針なき組織は「形」だけになる
2、成績だけで右腕を選ぶ罠:マネジメント推進力こそが組織拡大の鍵
3、仕組みだけ作って満足する罠:定着の「場づくり」がないと膠着状態に戻る
そして、この3つを乗り越える鍵は、大きな改革ではなく、「方針を言葉にする小さな一歩」にあります。
先代から引き継いだのは、売上でも資産でもなく、一人ひとりの「人」でした。
その「人」が単なる指示待ちではなく、自分の言葉で動き始めたとき、二代目の組織は本当の意味で起動します。
引き継いだのは売上ではなく、人だった。
郷愁を感じながらも、それを超えて新しい組織を作りたいと思っている二代目経営者の方へ
その逆風の中にこそ、本物の組織改革の耐久力が宿っています。
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