「営業の成約達人」を生み出す仕組みの作り方

代表 乾切抜き 仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第538話 仕組みが形骸化するのは、作り方が悪いからとは限らない

「前のひな形は分かりにくかったから、今度こそ作り直そう」

「手間をかけて作った決まりなのに、気づけば誰も使っていない」

「新しい仕組みに替えれば、今度こそ社員のやり方も変わるはずだ」

もし、このどれかに心当たりがあるなら、新しい版に手を付けるのを少しだけ待ってください。

作り直しても、やり方が元に戻る会社では、作ったものを使う場が毎週の業務に無いまま、次に作る新しい版も同じ道をたどることがあるからです。

仕組みが形骸化するとは、どういうことか?

仕組みが形骸化するとは、手間をかけて作った決まりや帳票、手順が社内に残っていながら、日々の仕事の中で使われなくなり、やり方が作る前の状態に戻っていることを指します。

たとえば、朝礼で全員に説明した手順のことを、翌月に営業担当者へ聞くと「ああ、ありましたね」と返ってくる——そんな場面です。

多くの経営者は、この状態に気づいたとき、まず作ったものの出来を疑います。

たとえば、経営者からこんな相談を受けた場面を想定してみてください。

社長「前に作った提案書のひな形が、どうも使われていないんです」

社長「欄が多くて分かりにくかったので、減らして作り直そうと考えています」

私「前のひな形は、先週、何回使われましたか」

社長「……数えたことはありませんね」

私「作り直した版は、毎週どの仕事の中で使われる予定ですか」

社長「営業が必要だと思ったときに使えばいい、と考えていました」

このように考える経営者が悪いわけではありません。

ただ、この場面では、話の中心がずっと「どう作るか」にあり、「毎週どこで使われるか」は一度も話題に上っていないということです。

当社では、作ったものの到達点は、作り上げることではなく、日々の仕事の中で使われ続けることにあると考えています。

作ることが目的になったところから、形骸化は始まっています。

作り直した仕組みでも、やり方が元に戻るのはなぜか?

作り直した仕組みでも、やり方が元に戻る会社では、次の4つが順番に起き、また①に戻ってきます。

① 作って、配って、説明する

経営者が時間をかけて帳票や手順を作り、朝礼で全員に配って、ねらいと書き方を説明します。

この日、社員は「なるほど」とうなずき、内容もひととおり理解しています。

② 経営者が声をかけるあいだは使われる

最初の数週間は、経営者が「あれは使ったか」と声をかけるので、帳票はきちんと出てきます。

経営者の目には、新しいやり方が根づき始めたように映ります。

③ 声がかからなくなると、書かれなくなる

忙しい時期が来て声かけが途切れると、帳票を開く理由が、毎週の仕事の流れのどこにも見当たらなくなります。

そう、使う場面が業務の中に用意されていないので、社員は慣れた元のやり方に戻っていくのです。

④ 出来が悪いと考え、作り直す

作りっぱなしのまま使われなくなった帳票を見て、経営者は「欄が多すぎた」「言葉が難しかった」と出来のほうに原因を探し、新しい版を作り始めます。

作り直しは、①に戻る入口になっているということです。

直しているのは作り方でも、元に戻る理由が作り方の外にある場合があります。

自社製品を作るメーカーを例にすると、作り直しをやめて何を変えればよいのか?

ここからは、当社が想定した自社製品を作るメーカーの場面です(実在の会社の事例ではありません)。

停滞期:引き出しで眠る2つのひな形

この会社の社長は、営業担当者が商談で自社製品の性能ばかりを話していることが、ずっと気になっていました。

そこで、1枚目にお客様の困りごと・今のやり方・入れた後に変わることを書く提案書のひな形を、何日もかけて作りました。

朝礼で全員に配り、「性能の前に、お客様の困りごとから話してほしい」と、ねらいも丁寧に伝えました。

最初のうちは、社長が声をかけるたびに、1枚目の付いた提案書が届きました。

ところが、繁忙期に入って声かけが途切れると、提案書はいつのまにか、カタログの性能説明を写したものに戻っていました。

社長は「欄が多すぎたのだろう」と考え、欄を減らした二つ目の版を作りましたが、結末は同じでした。

営業担当者の机の引き出しには、新旧2つのひな形が、使われないまま重なっていきました。

転換期:貸し出しの用紙に添える1枚目

二つ目の版も使われていないと知った社長は、ある営業担当者に聞きました。

社長「このひな形は、いつ使うものだと思っていた?」

担当者「社長に言われたときです」

当社では、この返事にこそ、形骸化の正体が表れていると考えています。

ひな形は、言われたときに使うもので、毎週の仕事の中で使うものにはなっていなかったのです。

ステップ1 作り直しの手を止める

社長はまず、三つ目の版を作るのをやめました。

中身の違う2つの版が同じ結末になったのなら、原因は出来ではないと見るのが自然だ、と当社では考えます。

ステップ2 1週間の仕事の流れの中で、使う場面を数える

次に社長は、営業の1週間の仕事を順番に書き出し、ひな形を使う場面がどこにあるかを数えました。

見つかったのは、朝礼で配って説明した日の1回でした。

当社がこの場面で大事だと考えるのは、数えた結果を社員のせいにせず、業務の流れの側の問題として受け止めたことです。

ステップ3 毎週回っている作業に結び付ける

この会社では、お客様に試作機を貸し出す申し込みが、毎週何件も出ていました。

社長は、その貸し出しの申込用紙に、ひな形の1枚目を添えて出す決まりに変えました。

すると営業担当者は、貸し出しを申し込むたびに、お客様の困りごとを書くことになります。

しばらくすると、商談でカタログを開く前に、お客様の困りごとから話し始める担当者が出てきました。

「お客様の困りごとから話す」という考え方が、何度も書くうちに、担当者の軸になり始めたということです。

当社では、考え方は、それを何度も体験できる場があって初めて定着すると考えています。

社長は、こう振り返りました。

「出来のいいひな形を作るより、毎週それに手が伸びる場面を一つ作るほうが先でした」

作り直しても、やり方が元に戻るのは、学んだことを試す場が日常業務の中に設計されていないからかも知れません。

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仕組みが形骸化する本当の原因は、どこにあるのか?

仕組みが形骸化する本当の原因として、作り直す前にまず確かめてほしいのは、作ったものを業務の中で何度も使う場があるかどうかです。

作り方に原因がある場合も、もちろんあります。

ただ、作って配って説明したものの、使う場が毎週の業務に組み込まれていないなら、どれほど良く作り直しても同じ道をたどりやすい、ということです。

当社では、仕事を身につけるには「教育」と「訓練」の両方が要ると考えています。

教育とは、教えて知ってもらうことです。

訓練とは、上司に言われなくても、教わったことを何度でも同じように実践できるようになっているかどうかです。

この区別を、研修ではなく、経営者が作った帳票や手順そのものに当ててみる、という見方ができます。

先ほどの例でいえば、ひな形を朝礼で配って説明した日は、教育にあたる部分です。

そして、毎週の貸し出しの申し込みでひな形の1枚目に手が伸びる場面が、訓練にあたる部分です。

この見方では、使う場が業務に組み込まれていない仕組みには、教育にあたる部分はあっても、訓練にあたる部分が無いと読めます。

その場合、作り直しで直せるのは教育にあたる部分なので、使う場を組み込まないまま何度作り直しても、やり方は元に戻りやすいと考えられます。

スポーツジムにたとえると、会員証を新しく作り直しても、設備の良い別のジムに入会し直しても、週の予定表に通う曜日が入っていなければ、やがて足は遠のきます。

営業の場面に戻すと、ひな形の出来を整えるより、毎週の仕事のどこでそれを使うかを決めるほうが、やり方を変える近道になり得るということです。

当社では、体験は一度きりでは軸にならず、何度も体験できる場があって初めて、「知っている」が「出来ている」に変わると考えています。

そう、仕組みとは、作った帳票そのものではなく、それを何度も使う場のことです。

使われなくなりかけた帳票に、明日できることは何か?

使われなくなりかけた帳票に明日できることは、作り直しではなく、その帳票が毎週の業務のどこに組み込まれているかを、経営者が自分の手で確かめることです。

まず、使われなくなりかけている帳票か決まりを、1つ選びます。

次に、営業が毎週必ず回している作業を、紙に上から順に書き出します。

見積もりの依頼を受ける、試作機の貸し出しを申し込む、納品の段取りを組む、といった具合です(自社の呼び方のままで構いません)。

そして、その帳票を使う作業に印を付け、印が付いた作業の数を数えます。

ここは大事なので書き添えますが、これは誰が使っていないかを調べる作業ではなく、自社の業務の流れを経営者が確かめる作業です。

印の数は、社員の評価ではなく、業務の流れの姿を映しています。

一度、試してみる価値があります。

書き出した作業の中で、いちばん回数の多い「見積もりの依頼を受ける」用紙を手に取ったとします。

その用紙は毎週何十回も営業担当者の手を通り、そのたびに担当者は、お客様に型番と台数を尋ねて書き込んでいます。

作った帳票に付いた印は0なのに、型番と台数で話すやり方には、毎週何十回も印が付いていたことになります。

元のやり方は、毎週何十回も、業務の中で体験され続けていたのです。

当社では、長年の無意識の体験が、今の考え方をつくっていると考えています。

その見方に立てば、やり方が元に戻るのは帳票の出来のせいではなく、毎週の業務の流れが元のやり方を体験させ続けているから、という見方ができます。

毎週の流れに結び付けないまま帳票を足しても、問われるのは枚数ではなく、毎週の流れの中でどの考え方を繰り返し体験させるかです。

業務の流れのどこを、どんな考え方に沿って組み直すのかという、もう一段大きな問いが見えてくるはずです。

あなたの会社の仕組みは、業務の中で何度使われているか?

あなたの会社の仕組みは、業務の中で、毎週何度使われているでしょうか。

あなたの会社では、作った決まりや帳票が、毎週の仕事の流れの中で使われていますか。

それとも、作り直した版を配った日の説明で、手応えを感じて終わっていないでしょうか。

印を付けて数えた先には、帳票1枚ではなく、毎週の仕事の流れそのものと、その流れに込める考え方をどう結び付けるかという問いが待っています。

作り直しても、やり方が元に戻るのはなぜか——その根には、考え方と仕組みのつながりがあります。

無料レポートでは、考え方は仕組みの中で実際に体験されて初めて定着するという全体像と、「知っている」と「できている」のあいだにある段階を取り上げています。

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追伸)ひな形の出来を整えることも、もちろん無駄ではありません。

毎週それに手が伸びる場面があってこそ、整えた出来が生きてきます。