「営業の成約達人」を生み出す仕組みの作り方

代表 乾切抜き 仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第522話 営業計画を立てるとき、目標の次に「行動」を書いてはいけない

「来期の目標は、もう決めました」

「営業には、月40件の訪問を割り振っています」

「計画書は、毎年きちんと作っているんです」

「件数は達成しているのに、売上が届かないんです」

下期や来期の計画づくりが始まるこの時期、毎年のように聞く声です。

計画書を見せていただくと、目標の数字の次に、いきなり訪問件数や見積もり件数が並んでいます。

目標の次に行動を書いた営業計画は、どれだけ件数を守っても、売上が足りなくなった場所を教えてくれません。

今回は、目標と行動のあいだに何を書くべきかをお話しします。

営業計画を立てるとき、経営者はどんな「割り算の計画」の罠に陥るのでしょうか?

営業計画とは、数値目標・営業シナリオ・行動計画(アクションプラン)の3つを、この順番でつないだもののことです。

この3つが連動していなければ、行動計画は絵に描いた餅になります。

来期の計画書を見せてくださった、ある社長と私の会話です。

社長「1枚目が前年比110%の売上目標、2枚目が営業ごとの件数で、訪問は月40件です」

私「1枚目の数字と2枚目の件数は、どうつながっているのですか」

社長「全員がこの件数をこなせば、数字はついてくるはずです」

私「その40件をすべてこなせたら、どのお客様から、いくら売上が増える計算ですか」

社長「……決めていませんでした」

目標を人数と12カ月で割り、訪問件数に置き換えた計画を、私は「割り算の計画」と呼んでいます。

結果(HAVE)を決めたあと、どうあるべきか(BE)を飛ばして、行動(DO)を書いている状態ともいえます。

本来、目標と行動のあいだには、誰が、何を、どこで、どのようにやって売上を作っていくのかという、営業シナリオが入るはずです。

件数という手段が、いつのまにか目的の席に座っている——これが、割り算の計画の罠です。

営業シナリオのないアクションプランは、計画書と会議で何をすり替えてしまうのでしょうか?

営業シナリオのないアクションプランで走り出すと、1年のあいだに、4つのすり替えが起きていきます。

①目標が、人数と月数で割られて訪問件数になる

期初の計画会議は、目標を決めたあと、電卓で割り算をして半日で終わります。

どのお客様から、何で売上を増やすのかという話は、一度も出ないまま終わります。

②月末の会議が、件数の達成率の読み上げになる

月末の営業会議では、営業課長が一人ずつ、訪問件数と見積もり件数の達成率を読み上げます。

会議で確かめられているのは、件数の達成率だけです。

③訪問件数の枠が、こなす仕事で先に埋まる

月40件の枠は、定期訪問や納品の立ち会い、届いた図面の打ち合わせといったこなす仕事で、月の半ばにはほぼ埋まってしまいます。

件数は達成できますが、その中に、こちらから仕掛ける仕事はほとんど入っていません。

売上が大して伸びていないのに忙しいのだとすれば、それは単に混乱している状態です。

④未達の理由を、誰も指させない

上期の売上が目標に届かなくても、会議で出てくる理由は「件数はやっています」と「取引先の生産が落ちたので」の二つくらいです。

本当の理由が出てこないのは、件数と売上を突き合わせる筋書きが、どこにも書かれていないからです。

4つのすり替えが一巡すると、計画書は夏を越えるころには誰にも開かれなくなります。

【実録事例】訪問件数は毎月達成していたのに売上が届かなかった会社は、計画書の何を変えたのでしょうか?

金属部品の加工を法人向けに請け負い、売上の大半を既存の取引先が占める会社で、訪問件数は毎月達成していたのに売上が届かなかった1年のことです。

二枚綴りの計画書

期初に社長が前年比110%の目標を発表し、営業課長がそれを営業一人ひとりの月の訪問40件、見積もり15件に割り振りました。

計画書は、目標の1枚と行動の1枚を綴じた、二枚綴りです。

会議では毎月、訪問も見積もりも、件数は計画を上回っていました。

ところが見積もりの大半は届いた図面に値段を付けて返す仕事で、訪問の多くは定期訪問でした。

上期を終えた時点で、売上は目標の9割にも届かない状態でした。

夏を過ぎると、二枚綴りの計画書は、会議の机に出てこなくなりました。

三枚綴りの計画書

上期の振り返りの会議に、当社が同席したときのことです。

私「来期の目標のうち、今の取引先から、今のままで入ってくるのはいくらですか」

私「残りは、誰が、どこから持ってくる計画ですか」

社長は計画書の1枚目と2枚目を見比べて、「このあいだに、何も書いていないですね」と答えました。

件数を細かく決めるほど、売上がどこで足りなくなったのかが、かえって見えなくなっていたということです。

ステップ1:目標との差額を、一つの数字にする

まず、既存の取引先を1社ずつ、今の取引が続いた場合に来期いくら入るかを見込みました。

見込みを合計して目標から差し引くと、埋めるべき差額は前年売上のおよそ15%でした。

ステップ2:差額を増販と増客に振り分け、営業シナリオを書く

差額は、増販と増客に振り分けました。

増販は、どの取引先に、どの商品を提案していくかです。

切削だけを受けている3社に、表面処理や組立まで一貫で提案する、という仮説を置きました。

増客は、どういう営業施策を仕掛けて、何社から、どの加工をどれだけ受けるかです。

試作の短納期対応を入口に、同じ業界の2社から量産の図面をいただく、という仮説を立てました。

当社がお願いしたのは、この仮説を営業シナリオの1枚として、目標と行動のあいだに差し込むことでした。

計画書は、ここで三枚綴りになりました。

ステップ3:行動計画を最後に、月初計画として書き直す

行動計画は、目標の割り算ではなく、営業シナリオから逆算して書き直しました。

毎月の初めに、営業ごとの稼働日数からこなす仕事の日数を先に差し引き、残った余白に仕掛ける仕事を週ごとに置いていく月初計画です。

第1週は一貫提案の3社を回る、第2週は試作の問い合わせ先に連絡する、というざっくりした段取りで構いません。

余白の目安として当社がお伝えしたのは、4割を目指さず、まず1割を2割にすることでした。

下期の結果は、計画の半分ほどでした。

一貫提案は3社のうち1社しか動かず、原因は表面処理の外注先との納期調整が見積もりに間に合わないことでした。

それでも会議でその場所を指させたので、翌月の月初計画に外注先への事前の相談を加えられました。

社長はこう話してくれました。

「去年までの計画書は、外れることさえできない計画だったんですね」

件数は達成しているのに、売上が届かない計画書には、真ん中の1枚を埋めていく順番があります。

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計画どおりに進まないと分かっていて、なぜ営業シナリオを書くのでしょうか?

営業シナリオを書いても、計画どおりに進む月はほとんどありません。

5割くらい進めば御の字です。

それなら最初から書かなくても同じではないか、という声が聞こえてきそうですね。

サッカーの試合では、チームの走行距離が発表されますが、一番長く走ったチームが負けることも珍しくありません。

走行距離は、負けた理由を教えてくれません。

ハーフタイムに監督が口にするのは「もっと走れ」ではなく、「右が通らないから後半は左から」という、外れた場所を指した修正です。

監督がそう直せるのは、どこから誰がどう崩して点を取るかという攻め筋を、試合前に決めていたからです。

勝ち点を数値目標とするなら、攻め筋は営業シナリオ、走行距離は行動計画の訪問件数にあたります。

当社では、営業目標の成果を出すときに意識する順序を、BE、DO、HAVEの3つで考えています。

BEは、年間シナリオや月間シナリオを、何にこだわり、どのように推進していくのかを決めることです。

DOはシナリオに対する行動の進捗を把握すること、HAVEはBEとDOで得た結果を数値で振り返ることです。

DOの進捗は、BEというシナリオがあって初めて測ることができます。

結果のHAVEだけを明確にして、あとは目の前の仕事をこなすだけの個々任せ——割り算の計画は、まさにこの状態です。

ここ、大事なので、もう一度書きます。

営業シナリオの値打ちは、当たることではなく、外れた場所を指させることにあります。

計画があるから、何ができていなかったのかが分かり、翌月に直せるということです。

下期の営業計画を立てる前に、まず何を数えればよいのでしょうか?

下期の営業計画を立てる前に、まず数えていただきたいのは、営業1人の10月の余白の日数です。

一番忙しそうな営業を1人選び、隣に座って、本人と一緒に10月の予定表を開いてください。

まず、10月の稼働日数を数えます(20日前後のはずです)。

次に、定期訪問や納品の立ち会い、届いた図面の見積もりといった、こなす仕事の日数を先に埋めます。

当社が必ず確認するのは、残った余白が稼働日数の2割、20日の月なら4日あるかどうかです。

よく言われる、こなす仕事6割・仕掛ける仕事4割という配分は、現実的ではありません。

参考までに、1年を通した仕掛ける施策があり、その目的もはっきりしている会社でも、こなす仕事8割・仕掛ける仕事2割ほどです。

受動的営業になっている会社では、これが9割と1割になり、仕掛ける施策をやること自体が目的になっています。

目指すのは4割ではなく、2割です。

20日なら2日と4日の違いですが、この1割の微差が、1年ではものすごく大きな差になります。

最後に、数えた余白を指して、本人に「この余白で、何を仕掛けますか」と聞いてください。

多くの場合、余白が1日か2日しか残らないか、残っても「新規を回ります」という答えしか返ってきません。

それは本人の怠慢ではなく、余白に何を置くかを決める営業シナリオが、どこにも書かれていないという印です。

余白を数えたとたんに、計画書の真ん中の1枚が無いことが見えてきます。

目標と行動のあいだに営業シナリオを置くと、営業会議はどう変わるのでしょうか?

目標と行動のあいだに営業シナリオを置いた会社の営業会議では、件数の読み上げが減り、「どこが外れたか」の話が増えていきます。

会議が、報告を聞く場から、翌月の段取りを一緒に直す場に変わるということです。

その変化の入口が、営業1人と並んで余白を数える、小さな場づくりです。

ただ、余白は一度数えただけだと、翌月には元の忙しさに埋もれていきます。

余白を埋める営業シナリオも、それを月初計画として毎月回し、会議で直していく形も、まだ手元にないからです。

あなたの会社の営業計画には、目標の数字と行動の件数のあいだに、差額を誰がどこで埋めるのかという営業シナリオがありますか。

それとも、目標を人数と月数で割った件数だけで、下期を走り出そうとしていないでしょうか。

10月の余白を数えた日から、計画書の真ん中の1枚を書く作業が始まります。

件数は達成しているのに、売上が届かない状態は、訪問件数をさらに積み増しても抜け出せません。

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