「営業の成約達人」を生み出す仕組みの作り方

代表 乾切抜き 仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第486話 なぜ目標を上げるほど営業が弱くなるのか。中小企業が陥る「数字だけ経営」の罠

「今年も目標を10%上げた。でも、何をどう伸ばせばいいか、正直よく分からない」

「社員の顔が、どこか険しくなってきた気がする」

「これ以上やれと言っても、もう限界だという空気が漂っている」

あなたの会社では、このような状況になっていませんか。

目標数値だけが年々増え、社員の疲弊感が晴れずに終わっているとしたら、その原因は「数字」にあるのではなく、別のところにあるかもしれません。

この記事では、その違和感の正体を明らかにします。

セクション1:経営者が陥る「数字先行」という罠

先日、セミナー終了後の質問会で、以下の質問を受けました。

「市場が成熟する中で、営業の個人目標売上を対前年比10%アップで設定すると、社員が露骨に嫌な顔をするようになりました。今で目一杯なのに、これ以上もっと働けというのかという雰囲気です」

これに対し、私はこう尋ねました。

「目標数値を上げる前に、社員の能力・スキルはその目標に見合ったレベルにありますか?」

質問をした経営者の回答は以下でした。

「能力・スキル…とは、どういうことでしょうか」

この回答を受けて、私は次のような回答をしました。

「それが分からないのであれば、数字だけを上げても、社員にはその負担をかけているだけのことになります。数字だけが先行する経営は、そこに落とし穴があります」

この落とし穴に気づいていない経営者は、実は少なくありません。

「対前年比10%アップ」という数字は目標のように見えて、実際には単なる前年比乗せでしかないからです。

大事なのは、その数字の裏側に、社員の能力・スキルを育てる視点があるかどうかです。

昭和の高度成長期であれば、市場は右肩上がりでしたから「対前年比〇〇%アップ」という目標設定は機能しました。

しかし、市場が成熟した今の時代には、数字の積み上げだけでは社員の疲弊を招くだけです。

セクション2:組織を静かに蝕む「3つのゾーンの罠」

目標数値と能力・スキルの向上のバランスには、以下の3つのゾーンが存在します。

あなたの会社の営業組織はどのゾーンにあるでしょうか。

①「成長ゾーン」|目標数値と能力・スキルがバランス良く連動している状態

社員が自然にチャレンジを求め、目標数値が上がってもそれに臨もうとする。

組織として最も健全な状態です。

②「退屈ゾーン」|能力・スキルが高いのに、目標数値が低い状態

こなす仕事がメインになり、安住を求めてチャレンジを拒否するようになります。

中堅にあったエース社員が「どうせやっても同じだ」という表情を見せ始めたら、このゾーンに差し掛かっているサインです。

③「ストレスゾーン」|能力・スキルが低いのに、目標数値だけが上がり続ける状態

新しいチャレンジが恐怖になり、気がつけば離職が増え、社員の定着率が悪化します。

会議では数字の責任追及だけが繰り返され、現場は「やる気はあるけど、できる気がしない」という殺伐とした雰囲気に包まれます。

多くの中小企業の営業現場で起きているのは、まさにこのストレスゾーンの状態です。

「やる気はあるけど、どうすれば良いか分からない」という状態の社員に、さらに高い数字を押し付けることは、組織の士気を静かに、そして確実に削り取っていきます。

セクション3:【実録事例】ある営業部長が経験した「霧中の日々と視界が開く瞬間」

■霧中の日々(停滞期)

印刷関連製造業の営業部長・島田さん(仮名)は、毎年の指針出しに頭を悩ませていました

営業会議では「先月の未達成の原因は何か」という責任追及が繰り返され、現場の営業スタッフは「がんばるしかない」という状態に陥っていました。

島田さんはこう振り返ります。

「能力・スキルの向上が大事だとは分かっている。でも、何の能力・スキルを上げればいいのかと訊かれたら、正直すぐには答えられない。

とりあえず営業トーク研修をやらせるか、提案書の作り方を教えるか、それくらいしか思い浮かばなかった」

目標数値だけが年々増えていく一方で、社員が何に向かって能力・スキルを高めるべきかが、組織内で言語化されないまま続いていたのです。

■視界が開く瞬間(気づき期)

転機は、コンサルタントからの一つの質問がきっかけでした。

「島田さん、営業目標を達成するために必要な能力・スキルとは何か、ただちに答えられますか?」

島田さんは言葉が止まりました。

「営業トークと『提案書の作り方』…くらいですか」。

その候補を聞いたコンサルタントはこう伝えました。

「その2つは、目標達成の重要度で言えばたったの2割の効果です。残りの8割は、戦略構築スキルとマネジメント能力が占めています」

その言葉が、島田さんの中で何かを崩しました。そして、以下の3つのステップを実行しました。

【ステップ1】能力・スキルを言語化する

営業リーダー全員を集め、「目標達成に必要な能力・スキルとは何か」を一人ひとりに書き出させました。

答えがバラバラなのを目の当たりにすることで、「共通認識がなかった」という事実を全員で直視する場をつくりました。

【ステップ2】戦略構築スキルとマネジメント能力を強化の中心に決める

営業トーク・提案書作成は「2割の効果」と割り切り、年間の営業戦略の立案と顧客の裏付け計画(目標達成の裏付けを具体的な顧客ベースで言語化すること)を全員が語れる状態を目指すことを「決める」ことができました。

【ステップ3】「決めたこと」を見える化し、場づくりで定着させる

月次の営業会議体を「数字の確認」から「戦略とスキルの切磋琢磨」に切り替えました。

上司と部下が同じ情報を共有できる「見える化」したシートを作り、みんなが「自分の言葉」で営業戦略を語れる場を毎月のこととしました。

半年後、島田さんはこう話してくれました。

「正直、能力・スキルの向上と言いながら、何を伸ばせばいいか誰も答えられなかった。目標を上げる前に、まずそこを全員で言語化することが先決だったんですね


セクション4:逆説的な真実:「営業トーク」はたった2割の効果でしかない

「能力・スキルの向上」と声の高い会社で、その内容をリーダーに確認すると、最も多い回答は「営業トーク」と「提案書作成」です。

確かに、これらは真っ先に最短で効果が出るでしょう。

しかし、長期的に見ればその効果は全体の2割にすぎません。

よく営業組織を「車」に例えますが、この関係をひと言で表すとこうなります。

「数字目標」はアクセル、「能力・スキル」はエンジン。エンジンのない車に、いくら燃料を注いでも走らない。

残りの8割を占めるのは、「戦略構築スキル」と「マネジメント能力」です。

さらに、その戦略とマネジメントの質を決定するのが「決める」という覚悟です。

「決める」とは、取りあえず選択するのではなく、「こだわり」と「やり切る」覚悟を持って自社の取り組みを定めることです。

この「決める」だけで、成果の5割以上が確定すると言っても過言ではありません。

多くの会社では「何をするか」に焦点が当たり、他社の成功事例の情報収集に一生懸命になっています。

しかし戦略とマネジメントは、取り組んでからというよりも、取り組む前の「決める」に勝負の大半が決まっています。

「何をするか」より、「決めたことをやり切る」かどうかが、営業組織の強さの本質です。


セクション5:処方箋――今日からできるたった1つの行動

難しい話をしているのではなく、今日からすぐにできることがあります。

「自社において、目標達成に必要な能力・スキルとは何か」を、文字に落としてみてください。

この問いに、あなたの会社の営業リーダー全員がただちに答えられるかどうかが、その会社の営業力の現在地を診断する試金石になります。

営業トークや提案書の作り方だけであれば、詳しいリーダーならただちに答えられるでしょう。

でも、「年間の営業戦略を自分の言葉で語れるか」「顧客の裏付け計画を具体的に示せるか」を問えば、答えられないリーダーが少なくないのが現実です。

選択した内容が何であれ、まずは「自社の能力・スキルの定義」を言語化することから始めてください。そこから、最初の一歩が始まります。

まとめ

目標数値を上げることそのものに問題はありません。

問題は、数字だけが先行し、社員の能力・スキルがちぐはぐになっていることです。

能力・スキルの向上と目標数値が連動して初めて、社員は成長ゾーンに入り、自然にチャレンジを求めるようになります。

そしてその能力・スキルを組織内で共通認識化し、「決める」覚悟を持って実行に移すことが、ここで述べたすべての出発点になります。

その目標に、育てる覚悟はありますか。

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