仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第523話 マーケティングで成果が出ない原因は、施策ではなく反響の後にある
「展示会で集まる名刺は、毎回300枚を超えている」
「Webの資料請求も、毎月それなりに届いている」
「それなのに、受注先の顔ぶれが去年とほとんど変わらない」
「次は出展先を替えるか、広告を増やすか……」
もし、あなたの会社でこのどれかの言葉が口から出ているなら、次の施策を選ぶ前に、少しだけ立ち止まってください。
反響はあるのに受注にならない状態は、施策を替えても、ほとんどの場合そのまま次の展示会に持ち越されるからです。
原因は施策の出来ではなく、反響を受け取った後の段取りにあります。
マーケティングで成果が出ないのは、施策が悪いからなのか?
マーケティングで成果が出ないとは、施策で反響は取れているのに、その反響が成約まで運ばれていない状態のことです。
先日、法人向けの製品を扱う会社の社長から、こんな相談をいただきました。
社長「展示会の名刺は毎回200枚以上集まるのに受注が増えないので、次は出展先を替えるか、Web広告に予算を回すかで迷っています」
私「その200枚の名刺は、今どこにありますか」
社長「えっ、どこって……担当地域ごとに分けて、営業に渡しましたよ」
私「渡した後に何枚へ連絡がいき、何枚で次の話に進んだかは、分かりますか」
社長「そこまでは、正直追いかけていません」
私「それなら、施策の良し悪しを決める材料が、まだ手元にない状態です」
社長の手元で見えていたのは、名刺の枚数と受注の件数という、両端の2つの数字でした。
その間で反響に何が起きたのかは、誰も見ていなかったということです。
多くの経営者が陥るのは、反響が取れれば「施策は効いた」と判断し、受注が出なければ「施策が悪かった」と判断する、反響を取ることそのものが目的になってしまう罠です。
施策には、大きく分けて2つあります。
1つは、見込み客を獲得する施策です。
もう1つは、見込み客を獲得してから成約まで結びつける施策です。
展示会もWebの資料請求も、前者に当たります。
本来、マーケティングは成約までの一連の流れのはずですが、多くの会社では前者だけが回り、後者を受け持つ人がいません。
後者が抜けたまま前者だけを替え続けても、受注は変わらないということです。
展示会や資料請求の反響は取れているのに、なぜ受注につながらないのか?
展示会や資料請求の反響が取れているのに受注につながらない会社では、次の4つが順番に起き、また最初に戻っています。
① 反響が取れた時点で、施策が「終わった」ことになる
展示会の翌週、社内の報告は「名刺312枚、資料請求は前月の1.5倍」という数字で締めくくられ、社内の空気も「今回はよく集まった」で落ち着きます。
反響の数が施策の成果として扱われ、その先は誰の仕事でもなくなります。
② 反響が、確度の振り分けなしに束のまま営業へ渡る
名刺は担当地域ごとに輪ゴムで留められ、「フォローしておいて」の一言とともに営業の机に置かれます。
その束の中には、来月にも機器の入れ替えを決めたい会社と、隣のブースのついでに立ち寄っただけの人が、同じ厚さで混ざっています。
どれが今すぐ客で、どれがそのうち客なのかを見分ける材料は、名刺の裏の走り書きくらいしかありません。
③ 営業は今すぐ買わない相手を後回しにし、いつもの顧客へ戻る
営業は束の上から何件か電話をかけ、「今は検討していません」と続けて言われたところで手が止まり、月末が近づけば、目の前の受注を持っている既存の顧客のほうへ戻っていきます。
今すぐ買わない相手を大量に渡されても、営業は動きようがないということです。
これは営業の怠慢ではありません。
④ 受注が出ないので、社長が次の施策を探し始める
3ヶ月後、展示会から生まれた受注が数件にとどまっているのを見て、経営者は「もう展示会は効かないのか」と考え始めます。
そして出展先の見直しや広告の追加が検討され、次の施策でまた反響が集まり、①に戻ります。
4つの連鎖のどこにも施策の失敗はなく、抜けているのは反響を渡した後の段取りです。
【実録事例】反響を受注に変えた会社は、営業に渡す前に何を変えたのか?
春と秋の年2回、展示会に出展している産業用機器のメーカー(法人向け)の事例です。
Webからの資料請求も毎月あり、反響の量で悩んだことは一度もない会社でした。
当社がご相談を受けたのは、春の展示会が終わって3ヶ月ほど経った時期です。
名刺の束をそのまま渡した春の展示会
春の展示会で集まった名刺は、320枚でした。
社長は翌日、名刺を担当地域ごとに分け、営業に束のまま渡しました。
3ヶ月後に数えてみると、展示会から生まれた受注は2件で、どちらも以前から取引のあった会社の追加の発注でした。
残りの名刺の多くは、一度電話がかかったきり、営業の机の引き出しに入っていました。
資料請求の一覧も、資料を送った後の段取りは決まっていませんでした。
社長「秋の出展は取りやめて、その予算で別の業界の展示会に出てみようと思っています」
そう、ここで施策を替えていれば、秋もまた同じ3ヶ月が繰り返されていたはずです。
一本の電話を挟んで渡した秋の展示会
当社が最初に提案したのは、秋の展示会にはそのまま出展し、営業に渡す名刺を減らすことでした。
社長「減らすんですか、せっかく集めたのに」
秋の展示会の名刺は約300枚でしたが、営業に渡したのは、そのうち41件です。
結果として、年明けまでに受注が7件、見積もりの途中にある案件が11件になりました。
営業に渡す反響を減らしたら、受注が増えたということです。
変えたことは、次の3つです。
ステップ1:「成約まで結びつける施策」に、獲得の施策とは別の担当者を決める
まず、見込み客を獲得してから成約まで結びつける施策に、担当者を1人決めました。
新しい部署はつくらず、受発注の事務を受け持っていた内勤の方にお願いし、展示会の準備をする人と、反響の後を受け持つ人を分けました。
ステップ2:営業に渡す前に事前ヒアリングを入れ、確度で振り分ける
内勤の担当者は、展示会の翌週から2週間かけて、名刺の1枚ずつに電話を一本入れました。
聞いたのは、ブースに立ち寄ったきっかけになった悩みと、それが解決したらどうなっていたいかという願望、そして導入を決めるのは誰で、いつ決めるのかの3つです。
当社では、お客様の悩み・願望と見込みの度合いを確かめてから営業へ渡すことを、反響の後の施策の中心に置いています。
この事前ヒアリングの答えで、今すぐ客(導入の時期が決まっている会社)は営業へ、そのうち客は決める時期に合わせて内勤の担当者がもう一度連絡する形に、確度を振り分けました。
資料請求があったお客様にも、資料を送った翌週に同じ電話を入れています。
ただし、この電話を単独の施策として足しても効きません。
何を聞くのかが決まっていない電話は、展示会へのお礼の電話で終わってしまうからです。
ステップ3:バトンタッチが届いたかを、お客様の側から確かめる
営業に渡して1週間ほど経つと、内勤の担当者は事前ヒアリングをしたお客様に、「担当の営業からご連絡はありましたか」と短い電話を入れました。
最初の月は、渡した案件の2割ほどに、まだ連絡が届いていないことが分かりました。
届いていなければ、その場で営業に戻し、ヒアリングの答えを添え直します。
営業を叱るための電話ではなく、バトンタッチが途中で落ちていないかを、お客様の側から確かめるための電話です。
年明けの受注一覧を見ながら、社長はこう話してくれました。
社長「替えるべきだったのは展示会じゃなくて、名刺を受け取った翌日からの段取りだったんですね」
展示会の名刺は数えていても、その後の行方までは数えていない会社が少なくありません。
反響はあるのに受注にならない原因が、反響の後のどこで止まっているのかを確かめる手順は、無料レポートにまとめています。
反響の数を増やせば、受注も増えるのか?
反響の数を増やしても、成約まで結びつける施策がなければ、受注は同じ割合では増えません。
郵便にたとえると、分かりやすいかも知れません。
郵便には、ポストから手紙を集める集荷と、宛先ごとに分ける仕分けと、家々に届ける配達があります。
集荷と配達は、別の仕事です。
ポストを増やせば、集荷される手紙は確かに増えます。
でも、仕分けを通さずに、集めた手紙を袋のまま配達員に渡したらどうなるでしょうか。
配達員は袋の口に近い手紙や見慣れた住所の手紙から配り始め、読みにくい宛名の手紙は袋の底に残っていきます。
営業も、同じ動き方をします。
展示会やWebの施策が集荷、営業が配達員だとすれば、事前ヒアリングと確度の振り分けが仕分けに当たります。
手紙が届くのは、ポストが多いからではなく、仕分けがあるからです。
名刺や資料請求の一覧にある会社名・部署・電話番号は、郵便でいえば宛名の文字にすぎません。
当社では、これを「顧客データ」と呼び、営業が動ける「顧客情報」とは分けて考えています。
営業が動けるのは、最終購入意思決定者が誰で、購入を決めるタイミングがいつで(決算の3ヶ月前など)、優先順位の高い悩み・願望が何かが分かったときです。
顧客データのまま渡された反響は、営業にとって、読めない宛名の手紙と同じということです。
反響の数を増やすほど袋は重くなり、配達員は、ますます見慣れた住所から配るようになります。
マーケティング施策と営業現場の行動が「連結」するのは、顧客データが顧客情報に変わった後です。
反響を受注につなげるために、明日から何をすればいいのか?
反響を受注につなげるために明日からできることを、1つに絞ってお渡しします。
直近の展示会か資料請求の反響から、営業がまだ連絡していない1件を選んでください。
1件で構いません。
経営者ご自身か内勤の方が、その1件に電話を一本入れます。
聞くのは、「どんなことがきっかけで、資料を請求されたのですか」という一問です(展示会なら、ブースに立ち寄られたきっかけ)。
返ってきた答えが、お客様の悩みです。
話が続けば、「それが片づいたら、どうなっていたいですか」と願望まで聞いてみてください。
その答えを一言添えて、営業に渡します。
たった1件でも、営業の受け取り方は、束で渡したときとは明らかに違うはずです。
悩みの一言が添えられた反響は、営業にとって、読める宛名の手紙に変わるからです。
マーケティングで成果が出ない会社は、どこから見直せばいいのか?
マーケティングで成果が出ない会社が最初に見直すべきなのは、施策の一覧ではなく、反響を受け取った翌日から先の段取りのほうです。
明日の1件を試してみると、すぐに次の問いが出てきます。
聞いた答えを、どこに残しておくのか。
残りの反響を、どの基準で今すぐ客とそのうち客に振り分けるのか。
営業に渡した後、バトンタッチが届いたかを誰が確かめるのか。
1件の電話はかけられても、それを毎回の反響に広げる形は、まだどこにもないはずです。
そこから先が、見込み客を獲得してから成約まで結びつける施策の本体です。
あなたの会社の反響は、今、誰の机で、どの状態のまま止まっているでしょうか。
それとも、止まっていることに気づかないまま、次の出展先を選び始めていないでしょうか。
反響はあるのに受注にならない状態を、1件の電話から全部の反響へ広げていく段取りは、無料レポートで順を追って解説しています。
追伸)次の展示会の申込書に判を押す前に、前回の名刺の束が今、何枚、誰の机にあるのかを、もう一度数えてみてください。
