仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第488話 来期の営業計画、また“数字だけ”になっていませんか。戦略を機能させる顧客情報管理の本質
「来期の営業計画、できました」
「数字は決まっています」
「戦略も立てました」
「あとはやるだけです」
そんな言葉を耳にするたびに、私は必ず同じ質問を尊ねています。
「その計画を動かす土台は、整っていますか?」
営業計画が「数字」で終わっている会社と、「戦略」が本当に機能している会社の間には、どこに差があるのでしょうか。
その源泉は、多くの場合、「顧客情報管理」の深さにあります。
セクション1:経営者が降りる「計画完成の錯覚」という罠
ある製造業メーカーの社長との面談でのことです。
「社長、来期の営業計画、もうできていますか?」
「はい。幹部と一緒に数字を固めました。前年比プラス15%で設定しています」」
「それはよかったですね。では、その計画を実行するために、顧客情報はどう整理されていますか?」
「顧客情報?、CRMは入れているので大丈夫なはずですが」
「分かっている」という言葉ほど、現場の実態を隠してしまうものはありません。
顧客情報管理も同じです。
経営者が「分かっている」と答えたとき、私は必ずその中身を確認します。
CRMやSFAを導入しているから大丈夫、と思っている会社に、実際の中身を見ると「入力はされているが活用ができていない」状態が、現場の実態だったりします。
顧客情報管理の目的は、「管理」ではなく「戦略の実行」にあります。
そこの認識なくして、CRMはただの「データの入れ物」になってしまいます。
それが「計画完成の錯覚」の根っこです。

セクション2:営業戦略が空回りする「4つの連鎖」
営業戦略が機能しない会社には、共通した流れがあります。
1. 数値計画だけで年度がスタートする
「山田課長、来期の目標を全員に共有してくれ」と言ったまま、年度が始まります。
数字は共有されているのに、それを実現する具体的なシナリオがないままです。
2. 顧客情報が「収集」で止まり「活用」に至らない
CRMに顧客の基本情報は登録されています。
しかし、その情報が「戦略の実行」に結びついていません。
収集で満足してしまい、活用の発想が及んでいないのです。
3. キーマンが特定できず、提案が空回りする
先方の窓口担当者に提案を笑顔で聴いてもらったけれど、最終決裁者に届いていなかった
“鶴の一声”にコロりと提案がリセットされる経験は、多くの営業現場で起きています。
4. タイミングを外し、施策が機能しない
「いい提案を持っていくのに、なぜか決まらない」
その背景に多いのが、顧客の「決裁時期」を捉えたアプローチができていないことです。
タイミングは、顧客情報の最重要項目の一つにもかかわらず、もっとも盲点になりやすい箇所です。
この4つの連鎖は、完全にお互いを強化し合います。
それぞれが単独の問題で終わらず、連鎖するからこそ、営業戦略は「絵に描いた餅」になりやすいのです。

セクション3:「実録事例」あるメーカーが経験した「漂流期と転換期」
「漂流期」:CRMはあるのに、戦略は機能していなかった
ある製造業メーカーでの話です。自社製品を他社に供給する事業を営んでおり、営業展開のためにCRMを導入してから数年が経過していました。
年度初、社長から営業チームに「来期の営業戦略」が共有されました。
内容は年間の受注目標と新規引顧客数、この2つだけ。
数字は幹部全員に共有されていましたが、それを実現するための具体的なシナリオは一切ありませんでした。
CRMの中を見ると、顧客の社名や担当者名は入っています。
ただし、「決裁者」欄に「部長」としか記入されていない先が全体の3割近く存在しました。
名前すら分かっていないケース、実際に確認したら別の方が決裁していたケース。
さらに、顧客ごとの提案タイミングや検討時期に関する情報はほぼ皆無。
営業担当者がそれぞれの感覚で動いている状態でした。
営業戦略の数字目標はある。
しかしそれを実現するプロセスがない。
CRMはあるのに、車のエンジンだけがかかってハンドルがない車のような状態です。
それが「漂流期」の実態でした。
このような実態は、決して珍しいことではありません。
CRMやSFAを導入している会社の多くが、同じ「漂流期」を経験しています。
問題は、その状態に気づいていないことです。

「転換期」:顧客情報を「基本情報」と「深掘り情報」に分けた日
転機となったのは、社長からの一言でした。
「なぜそんなに顧客情報を入れているのに、アプローチがバラバラなんだ」
この会社が取り組んだのが、顧客情報を「基本情報」と「深掘り情報」の2つに分類し直す作業でした。ステップは3つです。
「ステップ1」基本情報と深掘り情報の定義を全員で共有する
基本情報は、社名・所在地・業種・従業員規模など、年間計画のベースとなる客観的なデータです。
深掘り情報は、決裁者情報・アプローチの最適時期・先方の課題感・比較検討している競合他社といった、営業現場で初めて活きる情報です。
「ステップ2」全顧客の決裁者を実態調査する
全顧客の「決裁者の氏名」を実態調査したところ、当初の想定よりはっきりしないケースが多数判明しました。
後日そのノウハウをCRMに追記するルールを整備し、営業展開の順序を全員共通にしました。
「ステップ3」深掘り情報に「顧客ごとの提案タイミング」を追加する
各顧客の検討時期をCRMに入力し、その時期に合わせて「種まきアプローチ」を行うルールを整えました。
感覚で動いていたタイミングが、全員共通の基準に変わりました。
その結果、社長からはこんな言葉をいただきました。
「やっと顧客の情報が『使える』ものになってきた。数字目標が初めて地に着いた気がする」
セクション4:逆説的な真実:「種と土壌」のメタファー
営業戦略を「種」にたとえるならば、顧客情報は「土壌」です。
どんなに良い種を用意しても、土壌が整っていなければ芽は出ません。
CRMやSFAを導入することは、「畑を耕す道具を買う」ことに過ぎません。
道具があっても、土を耕さなければ種は根付かないのです。
顧客情報管理の本当の目的は、「情報を集めること」ではなく「戦略を地面に根付かせること」です。
基本情報から年間計画のベースを作り、深掘り情報から営業アプローチのタイミングと議題設定を行う。
この2層構造が機能して初めて、戦略は実行可能な形になります。
逆に言えば、この土壌を整えずに種だけ撒いている会社は、毎年「年度初の決心」を繰り返すことになります。
それが「また数字だけの計画」の実態です。

セクション5:処方箋―今日から1つだけやること
難しいことを一度に始める必要はありません。
まず、今日これだけやってみてください。
自社のCRMまたは顧客リストを開き、「決裁者の氏名」が全件入力されているかを確認する
たったこれだけです。
しかし、この1アクションが、どれだけの会社の実態を照らし出すか。
「分かっている」と「できている」の間には、実は大きな溝があるからです。
決裁者の氏名が全件入力されていれば、次は「顧客ごとの提案タイミング」を全顧客分に入力するステップに進むことです。
この2つが深掘り情報の基礎となり、戦略を実行可能に変える第一歩になります。
この確認作業を、ぜひ会議の場でチーム全員と共有してみてください。
「うちの顧客情報、本当に使えているか」という気づきを全員で共有することが、改善の起点になります。
まとめ
来期の営業計画を立てる時期、最も大切なのは数字の大きさではありません。
その数字を実現するための「種まきの土壌」、つまり顧客情報管理が機能しているかどうかです。
あなたの会社の営業部門には、「頑張っているのに結果が出ない」担当者はいませんか。
その原因の多くは、本人の努力不足ではなく、戦略を動かす情報の土壌が整っていないことにあります。
基本情報だけでは戦略は動きません。
深掘り情報が伴って初めて、キーマンに届き、タイミングを捉え、提案が地に着くのです。
その営業計画、誰が動かしますか。
顧客情報管理と営業戦略の連動について、さらに詳しく知りたい方には、下記の無料レポートをご活用ください。
営業の仕組み化に関する具体的なノウハウをまとめております。
▶無料レポートはこちらから:https://www.inui-consulting.com/free-report




