「営業の成約達人」を生み出す仕組みの作り方

代表 乾切抜き 仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第524話 経営幹部が「頑張れ」しか言えない会社で、足りていないもの

「うちの幹部は、会議で『頑張れ』しか言わないんです」

「経営幹部に上げて手当も付けたのに、やっていることは前と同じです」

「部下は毎日回っているのに、目標にはいつも届きません」

もし一つでも思い当たるなら、そのまま放っておくと、経営幹部という肩書きは社内に残っても、目標を動かす人が誰もいない状態が続いていきます。

原因は、幹部本人の熱意や能力ではないかも知れません。

経営幹部の役割は、部下に数字を伝えて「頑張れ」と励ますことなのか?

経営幹部とは、社長と決めた年間の目標を部下一人ひとりの行動に落とし込み、やりきらせる役割を担う人のことです。

経営幹部の役割をこう定義すると、多くの経営者は「うちの幹部もやっているはずだ」と答えます。

ある社長と私の会話を紹介します。

社長「営業で一番の実績があった者を経営幹部に上げたんですが、どうも手応えがないんです」

私「経営幹部になってから、部下に何を渡していますか」

社長「今月の目標と、先週の実績です。足りなければ『頑張れ』と声をかけています」

私「目標と実績の間にある、今週どこへ行き何をするかは、誰が部下に渡しているのでしょうか」

社長「……それは、部下が自分で考えることだと思っていました」

そう、ここに経営者が陥りやすい落とし穴があります。

本来、目標を伝えることは、部下を動かすための手段にすぎません。

ところが、伝えることそのものが経営幹部の仕事だと受け止められると、手段の目的化が起こります。

目標を伝えて励ました時点で、経営幹部の仕事が済んだことになってしまうということです。

世間では、役職手当は過去の功績へのご褒美ではなく、これから果たす役割に対する前払いだと言われます(これは世間の言い方であり、幹部本人を責めるための話ではありません)。

前払いを受け取っていても、果たす役割の中身が言葉になっていなければ、経営幹部は肩書きだけの存在になってしまいます。

肩書きだけの状態を生んでいるのは、本人のやる気ではありません。

任命したときに、役割の中身を言葉にして渡していないことです。

経営幹部の役割は、目標を「部下が今週どこへ行き、何を確かめるか」に置き換えることにあります。

経営幹部が数字だけを追わせると、部下の訪問はなぜ空回りするのか?

経営幹部が数字だけを追わせる職場では、次のような連鎖が静かに進んでいきます。

① 目標が割り算のまま部下に届く

年間の目標は担当の人数で割られ、月ごとの金額として部下に渡されます。

どの得意先で増販を狙い、どの先で増客を狙うのかは、どこにも書かれていません。

部下の手元にあるのは、金額と訪問件数の欄だけです。

② 部下は件数を稼げる先へ向かう

金額と件数しか渡されない部下は、確実に件数を稼げる、行きやすい得意先を回るようになります。

見積の枚数を求められれば、成約の見込みが薄い仮の見積も、一枚として数えられていきます。

訪問はしていても、その訪問が目標のどこに効くのかは、本人にも説明できません。

③ 経営幹部は「頑張れ」を重ねる

月末に金額が足りないと、経営幹部は件数を確かめ、「もっと頑張れ」と声をかけます。

部下にしてみれば、何を変えればよいのかが分からないまま、量だけを増やすことになります。

「頑張れ」は、段取りが渡されていない穴を埋める言葉になっているのです。

④ 結果を外のせいにし始める

やがて部下の報告には、「景気が悪い」「お客様が話を聞いてくれない」という言葉が並び始めます。

経営幹部もそれに答える材料を持っていないため、翌月の会議も同じ確認と同じ励ましで閉じられます。

訪問の量は減っていないのに、目標だけが遠のいていくという状態です。

【実録事例】目標を「攻める得意先の名前」に置き換えた会社では、経営幹部と部下の週明けのやり取りがどう変わったのか?

産業用資材の販売業(法人向け)を営む会社で、経営幹部と部下の週明けのやり取りが変わっていった過程を紹介します。

停滞期「件数を読み上げる週明け」

この会社の社長は、営業で長く実績を上げてきた社員を経営幹部に任命し、役職手当も付けました。

年間の目標そのものは、社長と経営幹部の間で決まっていました。

週明けの会議では、部下が先週の訪問件数と見積の枚数を順に読み上げます。

経営幹部はそれを聞き終えると、決まって「今週も頑張れ」と言いました。

件数が多い部下にも、少ない部下にも、かける言葉は同じです。

「どこに行けばいいですか」と尋ねた若手に返ってきたのも、「自分で考えて、とにかく回れ」という一言でした。

当社が同席した会議でも、経営幹部の口から得意先の名前は一度も出てきませんでした。

本人は手を抜いていたわけではありません。

社長から渡されたのが目標の金額だけだったので、自分も部下に金額と「頑張れ」だけを渡していたのです。

社長は私に、「幹部にしたのに、肩書きだけになっている気がする」と打ち明けました。

転換期「得意先の名前を渡す十五分」

当社が経営幹部に投げかけたのは、「部下を励ます言葉を一つ減らすとしたら、代わりに何を渡しますか」という問いでした。

しばらく考えた経営幹部の答えは、「行く先の名前でしょうか」というものでした。

足りなかったのは熱意でも管理する力でもなく、目標を部下の行き先に置き換える段取りだったのです。

そこで、当社と経営幹部で次の3つを始めました。

ステップ1 目標を攻める得意先の名前に置き換える

増販の目標は取引中の得意先から、増客の目標はまだ取引のない先から、担当ごとに数社ずつ名前を選びました。

金額の欄の横に、得意先の社名が並ぶ形です。

ステップ2 次の訪問で確かめることを1行で決める

選んだ得意先ごとに、次の訪問で何を確かめるかを、経営幹部と部下で1行ずつ決めました。

「顔を出す」「ご挨拶」を訪問の目的にしないためです。

たとえば「来期の設備更新に合わせて、資材の見直しを考えているか」といった1行です。

ステップ3 週の初めに1対1で15分すり合わせる

週の初めに、経営幹部と部下が1対1で15分だけ向き合う時間をつくりました。

先週動かなかった得意先があれば、経営幹部がその場で次の一手を差し替えます。

叱るための15分ではなく、行き先を組み替えるための15分にしたということです。

3か月ほどたつと、部下の報告から「景気が悪い」という言葉が減り、代わりに得意先の名前と、そこで分かったことが並ぶようになりました。

社長は最後に、こう話してくれました。

社長「肩書きを渡したときに、中身の段取りも一緒に渡すべきでした。『頑張れ』を聞かなくなってから、目標が動き始めました」

経営幹部が「頑張れ」しか言えない状態は、本人の資質から生まれるものではありません。

目標を得意先の名前に置き換える段取りが、社内のどこにも用意されていないことから生まれます。

「頑張れ」の代わりに部下へ渡す段取りを社内でどう組み立てるかは、無料レポートで手順とともに解説しています。

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年間の目標を渡しただけで、部下が動き出さないのはなぜか?

年間の目標を渡しただけで部下が動き出さないのは、目標と今週の行き先の間を埋める仕事が、誰の担当にもなっていないからです。

役職が上がるほど、現場で汗をかく仕事に加えて、頭に汗をかく仕事の比重が増えていきます。

ところが実際によく見かけるのは、ゴールだけを部下に渡し、そこへ至る道筋は部下に考えさせる形です。

当社では、この形こそが、経営幹部の役割がすっぽり抜け落ちている場所だと考えています。

団体旅行の添乗員を思い浮かべてみてください。

ツアーの旅程は、パンフレットに最初から載っています。

それでも旅行客は、パンフレットを手にしただけでは動けません。

添乗員が毎朝「今日の行程表」を手渡し、集合時刻と行き先を一人ひとりに伝えるから、旅行客は迷わずに観光地を回ることができます。

予定が崩れれば、添乗員はその場で順路を組み替えます。

年間の目標は、このパンフレットの旅程にあたります(旅程そのものは、社長と経営幹部で描いておけば足ります)。

旅程を渡したまま「あとは自分で回ってください」と言う添乗員は、どこにもいません。

営業の現場では、目標という旅程だけを渡して「頑張れ」と送り出す光景が、珍しくありません。

部下が考えないのではなく、考えるための行程表がまだ渡されていないということです。

目標を今週の行き先に置き換える作業こそが、経営幹部が頭に汗をかく仕事です。

経営幹部は明日、部下の行動への段取りをどこから始めればよいのか?

経営幹部が明日から始められる段取りは、目標表に得意先の名前を書き出すことです。

今月の目標表の横に、担当ごとに、今週攻める得意先の名前を書き出してみてください。

増販の欄には取引中の得意先を、増客の欄にはまだ取引のない先を書きます(件数や金額ではなく、社名で書くことが条件です)。

書き出してみると、すらすらと名前が埋まる担当と、手が止まる担当が分かれてきます。

名前が書けない欄が、段取りの抜けている場所です。

その欄の担当者は、今週の行き先を自分一人で探しているかも知れません。

ただ、一度書き出しただけでは、翌週には名前が古くなります。

先週動かなかった得意先を組み替え、新しい名前を書き足して部下に渡す作業は、毎週続いていきます。

実際にやってみると、毎週の月曜に経営幹部が名前を書き換え、動かなかった先を部下と1人ずつ組み替えていく段取りが、社内で決まっていないことに気づかれるはずです。

その形こそが、仕掛ける仕事を毎週回し続けるための、行動管理の仕組みになります。

「頑張れ」の代わりに、経営幹部は部下に何を渡せばよいのか?

経営幹部が「頑張れ」の代わりに部下へ渡すものは、今週攻める得意先の名前と、そこで確かめることの1行です。

目標表の横に名前が並び始めると、週明けの会話は「頑張ります」から「この先で、これを確かめてきます」へと変わっていきます。

そして次に見えてくるのは、名前を書き換え、部下とすり合わせ、動かなかった先を組み替える流れを、毎週どう回し続けるかという課題です。

あなたの会社の経営幹部は、部下に得意先の名前を渡しているでしょうか。

それとも、目標の金額と「頑張れ」を渡したところで、あとは部下任せになっていないでしょうか。

「頑張れ」しか出てこない週明けを、得意先の名前で始まる時間に変えるための仕組みの全体像は、無料レポートにまとめています。

経営幹部の役割を、毎週回る段取りとして社内に根付かせたい経営者の方に、読んでいただければ幸いです。

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追伸)目標表の横に書き出した名前は、消さずに残しておかれることをお勧めします。

数週間分を並べてみると、どの得意先で段取りが止まりやすいかが見えてきます。