仕組みで売れる体制づくり「営業の成約達人」の仕組みの作り方-第525話 営業の見える化をしたのに、数字を見るだけで誰の行動も変わらない
全員に数字が見えるようにしたのに、先月と同じ得意先ばかり回っている
部長は毎朝画面を開き、「足りないな」とつぶやいて、そのまま閉じている
見える化はできたはずなのに、誰の行動も変わらない
こうした声が経営者の口から出ているなら、足りないのは見える化の量ではありません。
数字を見るだけで終わる会社には、見た事実から考え、それを今週の予定に落とし込む場所が、社内のどこにも用意されていないのです。
営業の見える化をしたのに、なぜ数字を見るだけで行動が変わらないのか?
営業の見える化とは、上司と部下が同じ事実を共通認識として持ち、その事実から考えて計画に落とし込むための仕組みのことです。
数字を見るだけで行動が変わらない会社では、この定義の前半だけが実現していて、後半がすっぽり抜け落ちています。
ある社長と私の会話です。
社長「案件の一覧も訪問件数も見積の状況も、全部画面で見られるようにしました。見える化はもう済んでいるんです」
私「その画面を見て、先月、誰かの予定が変わった場面はありましたか」
社長「予定、ですか……。数字が足りないことは、みんな分かっているはずなんですが」
私「足りないと分かることと、今週どこへ行くかを決めることは、別の仕事です。画面ができた時点で、見える化が済んだことになっていませんか」
社長「たしかに、画面が完成した日に、ひと仕事終えた気がしていました」
ここに、多くの会社がはまる罠があります。
手段が、目的にすり替わっています。
本来は事実から考えて動くための見える化が、いつの間にか、画面を開いて数字を確かめるだけで満足する道具になっているということです。
当社では、ただ見ているだけのものは、見える化にもなっていないと考えています。
「いいツールができたね」「いい情報が見えるね」という言葉が出たところで満足してしまうのが、見える化でいちばん見落とされやすい盲点だからです。
見えることと動くことのあいだには、誰かが決めなければ埋まらない溝があります。
数字を共有している会社で、誰の行動も変わらないまま何が起きているのか?
数字を共有しているのに誰の行動も変わらない会社では、次の4つが順番に起き、最後にまた最初へ戻る流れができています。
① 号令のもとで、見えるものが一気に増える
「営業の見える化を進めよう」という号令が出ると、担当者は取りこぼしを恐れて、案件、訪問件数、見積の金額(受注率や前年比まで)と、集められる数字を片端から画面に載せていきます。
何を見るためのものかを決めないまま項目だけが増え、資料が増えただけで終わる状態が、静かに始まっています。
② 上司と部下が、別々の場所を見始める
上司は全体の合計が目標に届くかを眺め、部下は自分の欄に赤い数字がないかだけを確かめています。
同じ画面を開いていても見ている事実が違うので、共通認識は生まれず、そこから出てくる考えも計画も、両者の間でずれていきます。
③ 「足りない」という感想だけが残る
画面から持ち帰られるのは、感想です。
事実を見たあとに考える段取りがないため、「今月は厳しい」「もっと回らないと」という言葉で終わってしまいます。
感想は予定に書き込めないので、翌朝もまた同じ画面を開き、同じ感想を抱いて閉じることになります。
④ 予定はいつもの順番で組まれ、画面に項目が足される
部下が今週の訪問予定を組むとき、頭にあるのは画面の数字ではなく、行き慣れた得意先の顔と道順です。
結果が変わらないと経営者は「まだ見えていないものがある」と考えて新しい項目を足し、話は①へ戻っています。
見える化に熱心な会社ほど、この輪を速く回してしまうのです。
数字を見るだけだった会社は、どうやって部下の動き方を変えたのか?
数字を見るだけだった会社が部下の動き方を変えた【実録事例】として、あるビルメンテナンス業の会社のお話をします。
停滞期「開いて閉じる画面」
この会社では社長の号令で、定期清掃や設備点検の契約更新の時期、追加提案の案件一覧、訪問件数、見積の状況を、一つの共有画面にまとめていました。
部長は毎朝その画面を開いて「今月は足りないな」とつぶやき、そのまま閉じます。
部下も出社すると自分の欄を確かめ、数字に大きな変化がないことを見届けて閉じています。
ところが月曜の朝、部下が営業車の中で今週の訪問予定を組むとき、その画面は一度も開かれていませんでした。
予定は、いつもの順番のままです。
契約更新が近いビルも、追加提案の余地がある物件も、予定表のどこにも出てきません。
当社が最初に伺ったとき、社長は「見える化はしっかりやっているので、あとは営業の頑張りの問題です」と話されていました。
数字は全員に見えているのに、予定を決める場面には届いていなかったのです。
転換期「理由つきの予定表」
当社が部長と部下の一週間を追って分かったのは、見える化が足りなかったのではなく、見る場所と決める場所が離れていたということです。
画面は事務所の机の上にあり、予定は月曜の営業車の中で決まっていました。
しかも数字を増やすほど画面は重くなり、予定表から遠ざかっていたのです。
そこで当社は、画面を作り直すのではなく、数字の置き場所を予定のそばへ移すことを提案しました。
ステップ1:載せる事実を決め直す
まず社長と部長が、予定を組むのにどんな事実が要るのかを話し合いました。
会社名とビルの名前だけで足りるのか、契約の満了時期や設備の状態といった顧客の必要情報まで要るのか、行動履歴(前回いつ誰が訪ねて何を話したか)まで要るのかを、一つずつ確かめました。
予定を決めるのに使わない数字は、画面から外しています。
ステップ2:予定表の横に事実を置き、理由の欄をつくる
次に、絞り込んだ事実を部下の週間予定表の横に並べ、予定の各行に「この事実を見たから、今週ここへ行く」という理由を書き込む欄を設けました。
「空調設備の点検から3年が経っている」「契約更新の3か月前に入った」という事実が、そのまま訪問の理由として予定表に書かれるようになったということです。
訪問のあとに記録するのではなく、予定を組む前に事実を見て理由を書くので、月曜の営業車の中でも、部下はまずこの表を開くようになりました。
ステップ3:予定表をはさんで、二人で理由と行動を突き合わせる
最後に、週の終わりに部長と部下が一対一で向き合い、机に部下の週間予定表を置いて短く振り返る時間をとりました。
部長が問うのは売上の数字ではなく、予定表に書かれた理由と、実際に取った行動のずれです。
「更新前だから訪ねたのに、話したのは清掃の日程だけだった」というずれが見つかれば、来週の予定の理由がその場で書き換わっていきます。
半年ほど経つと、契約更新の取りこぼしが減り、追加提案の見積も部下の予定表から生まれるようになりました。
社長は、こう振り返っています。
画面を磨いていたつもりが、誰の予定表にも届いていなかったんですね。
数字を見るだけで誰の行動も変わらない状態は、画面の出来の問題ではなく、事実を予定に落とし込む順番が決まっていないことから生まれています。
数字を見るだけの画面を、今週の予定を変える道具に組み替える手順は、無料レポートで順を追ってお伝えしています。
見た数字が行動につながる会社は、その数字をどこに置いているのか?
見た数字が行動につながる会社は、その数字を、予定を決める場所のすぐ横に置いています。
天気予報を思い浮かべてみてください。
朝、「午後から雨」という予報を見ても、傘を持って出るか、洗濯物を干すのをやめるかを決めなければ、予報を見た意味はありません。
予報の価値は、見た人の今日の段取りが変わるかどうかで決まります。
営業の数字も、まったく同じです。
「今月は足りない」と見えても、今週の訪問先が決まらなければ、予報を眺めて終わる朝と同じです。
当社では、「見る」と「計画する」のあいだに、もう一つの段階があると考えています。
事実を見る → 事実から考える → 事実から計画する → 計画を実行する → 実行から振り返る、という5つの段階です。
多くの会社は計画・実行・確認・改善の輪を回すことには熱心でも、計画の前にある「事実を見る」「事実から考える」の2つが抜け落ちたまま走っています。
そう、数字を見るだけで行動が変わらない会社に欠けているのは、見ることでも計画を立てることでもなく、そのあいだにある「考える」なのです。
「えっ、考えることくらい、言わなくても各自がやっているのでは」という声が聞こえてきそうですね。
ところが、人が傘を持つかどうかを考えるのは、玄関で出かける支度をしているその瞬間です。
事務所の机で数字を眺め、営業車の中で予定を組むという離れた場所では、考える段階が入り込む隙間がありません。
数字は、考える瞬間が来る場所に置いてはじめて、行動の材料になります。
増販増客の仕掛けでは、計画の前段階こそが勝負を分けます。
今日から、見るだけの資料を行動につなげるために何をすればいいのか?
見るだけの資料を行動につなげるために今日からできることは、営業で見ている資料とツールを、紙に全部書き出すことです。
案件一覧、訪問件数の集計、見積の管理表、営業日報、顧客台帳、売上の月報と、思いつく限り縦に並べてください(上司が見ているものも、部下が見ているものも含めます)。
そして、それぞれの横に「先月、これを見て誰の予定が変わったか」を、名前と行き先まで具体的に書き込みます。
「部長が見て、主任の木曜の訪問先が変わった」と書けるものがあれば、それは事実を見て、考え、計画に落とし込めている資料です。
書けないものは、どれほど手間をかけて作っていても、見ているだけの資料だということです。
右の欄は、ほとんど空白になるはずです。
見える化したものをチェックした後に、どのような対策をしているか——右の欄が問うているのは、この一点です。
空白の行ごとに、どの事実を載せ、誰の予定表のどこに置くのかを決め直すことになります。
この書き出しは、経営者一人ではなく、部長と一緒に進められることをお勧めします。
同じ資料について上司は「毎週見ている」と書き、部下は「一度も開いていない」と書くずれが並べば、その気づきの共有が、見える化を作り直す最初の場づくりになるからです。
そう、見える化の出来は、作った資料の数ではなく、右の欄に書ける名前の数で決まるのです。
営業の見える化が行動につながっているか、社長はどこで確かめればいいのか?
営業の見える化が行動につながっているかを社長が確かめる場所は、画面の数字ではなく、今日書き出した一覧の右側です。
右の欄こそ、設計の出来を映すからです。
右の欄の空白は、失敗の印ではありません。
事実を見て、考え、計画に落とし込むまでのどこが途切れているのかを示す、あなたの会社の見える化が次に答えるべき問いです。
来月もう一度同じ一覧を書き出したとき、右の欄には、何人の名前と、どの得意先の名前が並んでいるでしょうか。
その問いに答えようとすると、決めることが次々に出てきます。
どの事実を載せ、誰の予定表のどこに置き、どんな振り返りで理由と行動のずれを確かめるのか、という設計の中身です。
数字を見るだけで誰の行動も変わらない会社が抜け出すには、その設計を一つずつ決めていく順番が要ります。
見る場所と決める場所をつなぎ直すための考え方と組み立ての実例は、無料レポートの中で具体的に取り上げています。
